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127/218

127.30層の巨大グモ

 27層は、そこまでと同様に入り組んだ道を進む形になっていた。

 俺は相変わらずスライムを放って、階段がある位置を探っていく。25層のミノタウロスよりも先ということで、フロアを跋扈するモンスターたちもひときわ強くなったのを感じる。


 俺たちはスライムで最短ルートを見つけ、そこから一気に進行方向にいるモンスターを倒す作戦で進んでいった。

 途中に出くわすモンスターは、俺たちならサクッと倒せるものの、スライムたちが戦うのは厳しくなっていた。


 スライムの数を減らさないように気を張りながら、自分たちの体力をなるべく温存できるように進んでいく。予想していたことだが、やはり浅い層と比べると一筋縄ではいかない。


「うわっ!」


 29層まで進み、二足歩行のモンスターと戦っていると、思ったよりも強い力で体当たりをされてしまい、俺は尻餅をついた。

 モンスターは意気揚々と拳を振り上げると、倒れている俺を押しつぶそうと襲い掛かってくる。


 しかし――寸前で俺の前に入り込んだローラが、剣でモンスターに袈裟斬りを入れ、撃破してくれた。


「怪我はないか?」


 モンスターが倒れ、小さな振動が伝わってくる。ローラは俺の方を見やると、ふうと息を吐いた。


「助かった。怪我はないよ」


「先に進むぞ。そろそろ階段がある位置のはずだな」


 ローラが言う通り、もうすぐ30層――フロアボスがいる階層への階段はすぐそこだ。

 俺はステータスを開き、自分のレベルを確認した。


 ――レベル49。ここに来るまでに、レベルは1上がっていた。

 25層までしか来たことがなかった俺にとって、ここは未知との遭遇の連続だ。次のフロアボスがどのくらいの強さなのかわからない以上、もう少しレベルを上げておきたかったが――


「そういえば、30層のフロアボスはどんな奴なんだ?」


「アリアドネ。全長4メートルはあるクモのモンスターだ。わかっていると思うが、ミノタウロスよりも格段に強い」


「うえっ、クモ苦手なんだけど……」


 ライゼが鳥肌を抑えるために腕をさすった。ミノタウロスより少し小さいとは言え、巨大グモなのは間違いない。


 ローラからアリアドネについてその他の情報を聞くと、俺たちは30層に続く階段を降りて行った。



「キシャアアアアアアアアア!!」


 30層に到達。その途端、話に聞いていたアリアドネが俺たちの前に姿を現した。

 とにかくデカい。体は毒々しい紫色で、足は柱のように太く、先端は鉄の爪を付けているように鋭利だ。


「下がっていろ。ここは私が――」


 ローラがミノタウロスの時のように前に出ようとするのを、俺は手で制止した。


「……何のつもりだ?」


「ここは俺がやる。だからローラは休んでてくれ」


「そんなことをする必要はない。私がやればすぐ終わるんだから、貴様こそ休め」


 俺は首を横に振る。


「違う。ローラは一人でなんでもやりすぎだ。俺はお前と対等に話がしたい。だから、それなりの結果をここで残す」


 ローラは強い。彼女はおそらく、放っておいても42層のモンスターとも健闘するんだろう。

 でも、それじゃ意味がないんだ。ローラが俺たちを信用して、三人で戦えるようにならないと。


「だから、ここは俺――とライゼがやる!」


「え゛っ゛!? 今の話の流れ的にアンタがやるんじゃないの!? クモ無理なんだけど!!」


「いいから、お得意の炎魔法の準備しといてくれ! 俺たちの火力で、奴を焼き尽くす!」


 俺はいきり立つアリアドネに向かって行き、剣をグッと握りしめた。

 アリアドネは二本の前足を高く上げると、俺を貫こうと思い切り振り下ろしてきた。同時に、緋華の刃が炎を帯びてくる。


「<紫電一閃(しでんいっせん)(ほむら)>!!」


 剣を振り上げ、斜めに切っ先を薙ぎ払った。刃を纏っていた炎は斬撃となり、アリアドネの顔に向かって飛んでいく。

 そのあまりの火力と勢いに、アリアドネの前足は爆発とともに吹っ飛んでしまった。奴の珍妙な叫び声があがり、派手な音がダンジョン全体に響き渡る。


「ライゼ! 今だ! お前の魔法を見せてやれ!」


「ああもう! わかったわよ! やればいいんでしょ!!」


 ライゼは持っている杖を高く掲げると、装飾が付いた先の部分をアリアドネに向けた。


「全てを焼き尽くす灼熱の業火よ! 絶えず揺れ動き、命を照らす炎の聖霊よ! 今こそ邪悪を打ち払う力を我に与えよ!」


 空気中の温度が急加速的に熱くなり、宙に火球が出現する。それは一気に勢いを増していくと、恐ろしい龍へと姿を変えた。


「<獄炎(ヘルファイア)灼熱舞(・プロミネンス)>!!」


 ライゼが魔法の名前を宣言した瞬間、6匹の龍は独立して空を舞い、アリアドネを食らいつくさんとばかりに襲い掛かる。再び、激しい爆発音と悲鳴が入り混じった。


 以前、ダンとの戦いのときに見た技だ。杖を使っていることや、彼女のレベルが上がっていることから、威力は格段に増している。


 炎が消えると、アリアドネは絶命し、真っ黒になった頭を地面に付けた。

 ――30層のフロアボス、アリアドネを攻略した。

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