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118.スライムテイマー100

 目が覚める。一番に感じたのは、鼻腔を突き抜ける土の臭い。

 次に、誰かの叫び声が耳朶を打った。俺は地面に手を付き、すぐに起き上がる。


「はああああああああああッ!」


 俺の前に立って拳を振るっているのはエレノアだった。バジリスクの体と彼女の拳がぶつかった瞬間、壁にボールが当たったような激しい音が響いた。


「アルクス!」


 俺の隣で声を上げたのはイルザだ。額に汗をしながら、彼女は弓を引いて矢を放っていた。

 そして、その先にいるのは――キングバジリスク。体から何本も矢を生やしながら、二人に激しくいきり立っている。


「アルクス、下がって! 手を貸してあげられそうにない……!」


 見ると、イルザの足が震えているのがわかった。格上相手だ。無理もない。

 恐怖を押し殺して、気を失っている間の俺を守ってくれたのだ。


「――いや、もう大丈夫だよ」


 俺は立ち上がると、ゆっくりと前に歩き出した。


「アルクス!」


「アルクスさん……? 何をしてるんですか!?」


 二人が驚きの声を上げる。しかし、俺は構わずにステータスを開いた。


――


 アルクス・セイラント 17歳 男

 レベル46


 スキル

 <スライム>

 『スライムテイマー』……レベル8のスライムを発生させることができる。最大(58→100)匹。

 『スライムメーカー』……スライムにクラスチェンジを施すことができる。


 <人間>


――


 強化されたのは『スライムテイマー』。それも、これまでの強化され方とは比べ物にならないほど、出せるスライムの数が増えている。

 そして――スライムの数が増えるということはすなわち、<人間>の効果である『仲間の数だけ強化』という範囲も広くなっていく。


「みんな! 俺に力を貸してくれ!」


 俺は後方にスライムを出せる限り生成した。すると、俺の背後には夥しい数のスライムたちが列をなした。

 まるで軍隊だ。あまりの多さに、後ろの二人も呆気に取られている。


「ギガアアアアアアアアアア!!」


 キングバジリスクが鳴き叫び、俺をめがけて突進してきた。勢いはさっきよりも増している。


 しかし、こちらも気絶する前とは一線を画している。それが意味することはつまり――


 ――今の俺にとって、こいつは敵ではないということだ。


 俺は足を上げると、奴の体に向かって思い切り蹴りを放った。


「グゲェェェッッ!?!?」


 すると、確かな感触と共にキングバジリスクが後方に吹っ飛ばされ、坂道を転がる球体のように派手に転がっていく。

 地面が激しくえぐれ、足元が揺れるほどだった。キングバジリスクは何が起こったのかわからないというようにこちらをじっと見据えた。


「嘘……アルクスさんが、キングバジリスクを蹴りで……?」


 エレノアの感嘆の声が漏れた。俺は歩いて奴の方へと距離を詰める。


「グ、グエエエエエエエエエ!!」


 さすがに違和感に気づいたのか、キングバジリスクは威嚇の声を上げる。見ると、奴の口が白く輝くのが見える。

 刹那、一直線に白い光線がこちらに放たれた。遠距離からの攻撃だ。


「危ない! アルクスさん!」


 エレノアが声を張り上げた。


 その時だ。俺は軽く剣を振るうと、光線を真っ二つに切り裂いた。


 柱のような光は剣の斬撃で左右に分かれ、地面を激しくえぐった。もちろん、俺に攻撃はかすってもいない。


「無駄だ。お前の攻撃は俺には通用しない」


 気を失う前と後で、世界が変わったようだ。あれだけ恐ろしかった奴の攻撃が、もはや茶番のようだ。


「ギ、ギエエエエエエエエ――」


「だから無駄だって」


 俺は瞬発的に地面を踏みしめて肉薄し、奴の後ろに回り込んだ。振り返った瞬間、再び蹴りをお見舞いする。


 ――さて。今の俺の実力はどれほどのものだろうか。奴を打ち倒すだけの力を手に入れたのか。その答えを、今確かめる!


 宙に浮いたキングバジリスクの巨体。奴が空中で身動きを取ることが出来ない間に、俺は緋華をグッと握りしめた。

 炎が刃から放たれ、おどろおどろしく揺らめく。青白い雷が体の周りを駆け巡り、二つの力が交じり合った。


「お前は確かに成長するし、強いよ。でも、成長の度合いで言えば俺の方が一枚上手だった。だから――見せてやる。弱者の、本当の強さを!」


 剣を傾け、俺は走り出した。キングバジリスクの巨体が、まるでこちらに吸い寄せられているようにすら感じられる。近くまで行くと、地面を踏みしめて跳躍した。


「<紫電一閃(しでんいっせん)(ほむら)>!!」


 斜めに薙ぎ払った斬撃は、キングバジリスクの体を二つに切り裂いた。水風船が割れたように血が噴き出し、奴の断末魔の声が上がる。


「グエエエエエエエエエエエエ!!」


 地面に奴の巨体が落下し、激しく振動が起こった。俺は剣を納めると、奴が絶命したことを確認して息を吐いた。

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