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113.シャイニングコカトリス

 ワープスライムを使ってオルティアへ行き、そこから北へ向かうと、その先は草原エリアとなっている。

 草原エリアはオルティア全体を包み込むようにして広がっているので、街と森林の間も森林エリアに含まれる。


 ただ、今回指定されている『北の草原エリア』と言えばここだ。普段行っている西側と大きくは違いはないものの、遠くに高い山が見える場所。

 門を抜けてしばらく歩くと、その先には――


「ボゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 目を疑った。いつもならスライムやゴブリンのような雑魚モンスターがのんびりと生息しているような草原は、巨大な竜種が練り歩く場所になっていたのだから――!


 聞いていた時点で覚悟はしていたが、想像以上だ。大小さまざまな竜種のモンスターが、目視だけでも数十体はいる。

 口から炎を吐いているものや、尻尾を振り回して地面を均しているものなど、暴れまわっている様子がよくわかる。


「なんだこれ……竜種のパーティ会場みたいだな……」


「竜種はパーティなんてしないよ?」


「いやあくまで喩えだぞ!?」


 しまった。イルザに冗談は通じないんだった。ライゼはなんとなく行間を読んで指示を把握してくれるが、イルザにややこしい説明はしないようにしよう。


「危ないです! 逃げてください!」


 頭を抱えたその時。荒々しい女性の叫び声が聞こえてきた。

 見ると、少し離れた場所から、冒険者の女がこちらに声をかけてきているのがわかった。そして、彼女と俺たちの間には一匹の竜種のモンスターが。


「<鑑定>!」


 ――


 対象:シャイニングコカトリス レベル1


 コカトリス族の最上位種。恐るべき速さと獰猛さを兼ね備えている。


 ――


「あ! あいつ見たことある気がするぞ!」


 ドラゴンと言うよりは、巨大なニワトリのような見た目。体毛は白く、首を絞められたような鳴き声でこちらに向かってきている。

 前にライゼと7層で倒したモンスターは、確かゴールデンコカトリス。その上位種ということだろうか。


 ……っていうか、あいつはそもそも竜種に分類されるのか? ニワトリじゃなくて?


「逃げてください!! このままだと!!」


 冒険者の女が叫んだ瞬間、彼女が膝から崩れ落ちる。見ると、彼女の腹部は真っ赤に染まっており、かなりの傷を負っているようだ。

 なるほど、あいつにやられたってところだな。女が叫んでいる合間にも、シャイニングコカトリスは馬のような速度でこっちに走ってきている。


「ギャギャギャッッ!!」


 奴が鳴き声を上げたとき、俺は剣を引き抜いた。


 抜刀の瞬間、地面を蹴ってコカトリスに向かって行く。刃には炎を宿し、一閃。


「<紫電一閃(しでんいっせん)(ほむら)>」


 横なぎに振るわれた剣は、コカトリスの胴体を真っ二つにし、たちまち地面に斬り伏せてしまった。

 たった一瞬。勝負はすれ違いざまについてしまった。


「――ふう。思ったより弱かったな」


 上位種とはいえ、7層のフロアボスの親玉くらいじゃ俺には勝てないようだ。

 ゴールデンコカトリスを倒した時が確かレベル20くらいだったから、このモンスターは冒険者で言うところのレベル30くらいの実力はあるのだろう。まあ、どちらでも関係はないが。


「う、嘘でしょ――?」


 剣を納めたとき、さっきの冒険者が声を上げた。


「シャイニングコカトリスをたった一撃で倒した――!? いや、それ以前になんで倒したのに分裂しないんですか!?」


 そういえばあったな、コカトリスの分裂機能。以前はかなり手を焼いたっけ。


「そういえば確かに、なんで分裂しなかったんだろう?」


「シャイニングコカトリスが、アルクスに倒されたことに気づいてなかった。斬られた後も走り続けてたのがその証拠」


 首を傾げていると、イルザが解説をしてくれた。なるほど、と俺は手を叩く。


「シャイニングコカトリスに死を気付かせなかった!? そんな話は聞いたことないです!?」


「俺もよくわからないからなんとも言えないんだけどな。怪我してるんだろ? 治すよ」


 倒れかかっている冒険者を介抱しようとしたとき、女が首を横に振った。


「もう無理なんです。さっきの攻撃で毒を受けてしまいましたから」


 女がまくり上げた服の下を見ると、確かに腹部にひどい傷が出来ており、血管が不気味な色でドクドクと腫れ上がっているのが見えた。

 コカトリスの毒、というのは初めて聞くが、攻撃を受けた彼女が言うなら間違いない。


「今から医者にかかっても手遅れでしょう。私はこのまま死ぬんです」


「だったら、今ここで治療すればいいだけだ!」


「――は!?」


 俺は彼女を助けるため、とあるスライムを召喚することにした。


「錬金スライム!」


 以前ミノタウロスと戦ったときに獲得した新たなスライム。こいつの力を使う。

 俺の呼び声に応じて現れたのは、頭の上にビンを乗せたスライムだ。


「なんですか、この子は――?」


「まあ見ててくれ」


 俺はそう言うと、次にシノを召喚した。


「アルクス様。何かお困りでしょうか?」


「うん。シノってアサシンだし、毒について詳しいんじゃないかと思って。コカトリスの解毒方法について知らない?」


「……一応、特効薬のレシピは存じ上げてはおりますが。材料となる薬草を熟練の技で調合する必要がございます」


「それなら大丈夫だ! 錬金する(・・・・)!!」


 錬金スライム。このスライムの能力は、頭に乗せたビンに材料を入れると、たちまちそれを合成してくれるというものだ。

 レシピさえ知っていれば、どんな素人でも完璧に錬成を行うことができる。薬ももちろん例外ではない。


 俺はシノから教わったレシピ通りの材料をビンの中に投げ込み、錬成を行った。

 材料を投入し終わった数秒後。小瓶の中には飴色に輝く液体が完成していた。


「さあ、早く飲んで!」


「は、はい!」


 俺は完成した液体を小瓶に移し、女に飲ませた。するとたちまち、彼女の腹部の腫れがたちまち引いていくのがわかった。

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[一言] チートだぁ………o(^▽^)o
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