表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/218

112.クエスト調達!

「シエラさん? なんでこんなところに!?」


 シエラさんは森の民のことを知っている。だからここに来るのもおかしな話ではないんだけど……ここに来るまでにモンスターに遭遇する危険がある。


「一応モンスター対策はしてきたんだけど、途中でイルザさんに会ったから案内してもらったの」


「森、危険。ウサギ狩りしてたら、見つけたから」


 イルザは眉をピクリとも動かさないまま、ウサギの耳を鷲掴みにしている。俺はそのギャップに思わず引いてしまった。


「で、シエラさんはどうしてここまで来たんですか?」


「そうそう! 実はアル君に見せたい依頼があってね……」


 シエラさんはそう言うと、懐から一枚の依頼書を取り出し、手渡した。

 見るなり目に入ってきたのは、一匹のドラゴンのイラストと『緊急!』という文字だった。


――


 竜種討伐クエスト


 オルティア北 草原エリアに竜種のモンスターが大量発生。

 冒険者たちに討伐を依頼します。


 適正ランク:S~D

 報酬:討伐数によって増加


――


「竜種?」


 聞き覚えのある言葉を俺は反芻する。


「竜種っていうのは、ドラゴンとかワイバーンみたいな竜に分類されるモンスターのことだよ」


「じゃあ、それが大量発生してるってことですか?」


 シエラさんは頷く。


「原因はまだ調査中なんだけどね……草原エリアにモンスターが大集合してるの。竜種は特に放置してると危険だから、今は人手が欲しくって」


 確かにドラゴンが街の辺りをうろついているとしたら、馬車も通れないし、一般市民に危害が及ぶ可能性もある。

 ただ、俺には一点、引っかかることがあった。


「でも、なんで俺なんです? 俺はD級冒険者だし、シエラさんがここまで来るほどの人間じゃない気がするんですが……」


 それに、依頼書に書かれた適正ランクはS級からD級と、かなり幅が広い。こんなのは初めてだ。


「D級だからこそ、だよ。アル君、ランクの幅が広いっていうことはどういうことだと思う?」


「幅が広いってことは……ごめんなさい、わからないです」


「D級として参加して、S級が倒すようなモンスターと戦えるってこと。つまり、どれだけランクが低くても、実力さえあれば誰よりも活躍できる」


 シエラさんが会心のしたり顔で説明する。そこで俺も理解した。


 通常、強いモンスターと戦うようなクエストはS級冒険者ばかりに割り振られてしまい、俺みたいな下級の冒険者は分相応な仕事をするしかない。

 しかし、今回は違う。D級冒険者の俺でも、その気になれば全てのモンスターと戦うことが出来るのだ。


「攻略班、入るんでしょ? 今回のクエストで手柄を上げれば、少しは足しになるかもよ?」


 シエラさんは俺の気持ちを汲み取ってくれていたらしい。だから、モンスターに襲われる危険を省みずにここまで知らせに来てくれたのだ。


「 さ、早く行かないと手柄を持ってかれちゃうかもよ!」


「ありがとうございますシエラさん! 俺、行ってきます!」


 慌ててワープスライムを召喚しようとしたとき、服の袖が引かれるのを感じた。

 俺の袖を掴んで立っていたのはイルザだ。


「どうした? まだ何か言うことがあった?」


「……私も行きたい」


 予想外にも、彼女の口から出てきたのは同行の希望だった。


「イルザも竜種狩りしたいのか?」


「うん。一緒に戦ってみたい。どうやったらアルクスみたいに強くなれるか、知りたいから」


 そう言えば、以前にイルザの口から強くなりたいと聞いたことがあった。

 強さに関しては、彼女は真剣だ。変わらず表情の機微はないが、瞳にはその意志が見て取れる。


「……よし、イルザも一緒に行こう! 何がイルザの役に立つかはわからないけど!」


「えーーーーーーーっ!」


 その時、声を上げたのは意外にもシエラさんだった。彼女はしまったとばかりに口を押さえるが、時すでに遅し。

 シエラさんは頬をぷくっと膨らせると、顔を紅潮させて視線を逸らした。


「……だって、イルザさんはアル君にちょっかいを出すから」


「出してないよ?」


「現在進行形で出してるでしょーがっ!! 距離が近いの!!」


 シエラさんがビシッと指した先では、俺の手をぎゅっと握るイルザの手があった。

 いつの間にやら、袖から手に持ち変えられていたらしい。最も、当人にもその意識はないだろうが。


「シエラは、私がアルクスに近づいたら、怒る?」


「そういうことなんだけどそういうことじゃなくて……あと私の方が多分年上なんだけど!?」


 イルザは首を傾げて困った顔をする。シエラさんの気持ちは、おそらく10パーセントほども彼女に伝わっていないのだろう。


「とにかく! アル君は絶対に無理はしないこと! そしてイルザさんはアル君にべたべたしないこと! それだけ!」


 シエラさんは大声でそう言い放つと、気まずくなったのか、元来た道を引き返していった。――なぜか一人で。


「ラウハ、シエラさんをお願いできるかな? 多分あのまま行くと普通に危ないと思う」


「ゴゴゴゴ…………」


 ラウハは仕方ないなとばかりに座っていた岩から腰を上げ、シエラさんの後についていった。


 ――さて、準備は出来た。いざ、竜種討伐に行こう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ