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106.ダンジョン攻略班

 王都への護衛任務が終わって、一週間が経った。

 予定通りシエラさんを三日後にオルティアにワープさせて、依頼は無事に達成。シエラさんも予定を済ませることが出来たようで、満足している様子だった。


 俺もワープ先候補に王都を追加することが出来て、得るものがあった依頼だったと言える。

 途中のヴァサゴの一件を除けば、お互いにとってかなり良い結果となった。


 しかし、それはちょっとしたイレギュラーのようなもので、日常を取り戻した俺は、今日もダンジョンに潜ってライゼと一緒にクエストをこなしていた。


「――ふう、片付いた」


 緋華を腰に差し、俺は一息ついた。壁に俺の吐息が反響する。

 灰のダンジョンの25層。俺たちはちょうど、モンスターの群れを撃退し終えたところだった。


 いつものようにスライムたちに素材の回収をしてもらっていると、ライゼが話しかけてきた。


「アルクス。今日はこの辺りで終わりにしましょう」


「どうした? まだ25層だぞ? 具合でも悪いのか?」


 いつもなら限界まで行こうと言うはずのライゼが、今日はなぜか弱気な様子だった。


「違うわよ。今日はどうしても見に行きたいものがあるの。いいからワープスライム出して」


 ライゼは矢継ぎ早にそう言うと、半ば強引にワープスライムを出させ、俺をオルティアへと帰らせた。



「なあ、何があるって言うんだよ?」


 オルティアに着くなり、ライゼは俺の手を引いて街の門の前までやってきた。

 どうやらここで何かが起こると言う話は本当らしく、門の近くには冒険者たちを中心に人がまばらに集まっている。


「アンタ、本当に知らないのね。アンタが一番好きそうだと思ってたのに」


「俺が一番好きそう……?」


「今日はこの街にダンジョンの攻略班が来るのよ。灰のダンジョンを攻略するためにね」


 ダンジョンの攻略班。その言葉に俺はすぐにピンときた。

 攻略班とは、俺たちが住んでいるエルステッド王国が国を挙げて組織している実力派な冒険者集団のことだ。


 組織は全員S級冒険者のみで構成されており、その名の通りダンジョン攻略を行っている。その目的はただ一つ、ダンジョンがどこまで続いているのかを知るということ。


 灰のダンジョンの最高到達地点は42層。その記録を持っているのはこの攻略班だ。最後に記録を更新したのは半年ほど前で、着々と数字を伸ばしている。


 いわばそれは冒険者たちの憧れで、実力と実績を兼ね備えた人間のみが集まるようなチーム。

 それが今日、この街に再びやってくると言うのだ。


 前に来たときはよく見れなかった気がするから、今回はしっかり見たい。


 期待に胸を膨らませていると、周囲の冒険者たちが声を上げた。


「来たわよ、攻略班」


 その時、門を潜って馬車が入ってきた。それと同時に冒険者たちがワッと出迎えの歓声を上げた。

 先頭の馬車から手を振っているのは、茶髪をセンター分けにした中年の男。馬車の中で立ち、こちらに向かって手を振っている。

 おそらく、彼が攻略班のリーダーなのだろう。自信に満ち溢れた表情で手を振る様子は、まるで英雄の凱旋だ。


 そして、馬車はさらに続いていく。二台目の馬車に座っていたのは――


「お姉ちゃん! 街の人だよ! お出迎えしてくれたんだ!」


 間違いない。馬車に乗っている二人を俺は知っている。金髪と水色の髪の二人組。あれは――


「あれ? もしかしてこの前のおにーさん? おーい!」


 王都でぶつかった二人組だ。水色の髪の少女が太陽のような笑顔でこちらに手を振っている。

 なぜあの二人が馬車に乗ってるんだ!? すぐに聞きたくなったが、馬車はずんずんと街の方へ進んでいってしまう。


「ちょっと、アルクス!?」


 俺は慌てて馬車を追いかけて走り出した。



「おにーさんやっほー! まさかこんなところで会えるなんて!」


 十分後。俺たちの姿に気づいた水色の髪がこちらに手を振りながら駆け寄ってきた。

 改めてよく目を凝らしたが、やはりこの前の少女だ。だからこそ驚きを隠せない。


「俺はアルクスっていいます。この前はどうもありがとうございました」


「そんなに固くならなくていいよ! 私はフラン! 私はおにーさんって呼ぶから、フランって呼んでいいよ!」


 彼女は俺よりもいくつか年下のように見える。あどけなさが残る感じから、15歳くらいだろうか。

 少し緊張していただけに固い挨拶になってしまったので、俺はありがたく口調を改めることにした。


「フラン。君は攻略班だったのか?」


「ん? 違う違う。私はお姉ちゃんの付き添いだよ。ほら、お姉ちゃんあんな感じでしょ? ついて行ってあげないと心配だもん!」


 姉――と言うのはこの前ぶつかった金髪の少女のことだろう。

 確かに表情から何一つ読み取ることができないし、一人で歩いていたらちょっと怖いかもしれない。


「ところで聞きたいんだけど、攻略隊の人ってどこに行ったのかな?」


「お姉ちゃんたちなら今集会してると思うよ。でも、どうしたの?」


 せっかく攻略班がこの街に来たのだ。そうとなれば俺がやることは一つしかない。


「ア、アンタまさか……」


 そんな俺の内心を読み取ってか、ライゼが唖然とした様子で俺に言った。

 もちろん、俺が言うことは決まっている。


「俺も攻略班に参加してみたいんだ。今から班の人に言いに行こうと思って」

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