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005.初めての討伐クエスト

 翌日、いつものように冒険者ギルドへ行った。改めて討伐クエストを受ける為だ。

 俺が建物に入ると、中にいた冒険者達からの視線を集める。昨日のアレで、俺が一気にCランクへ昇格した事への視線だ。そこには羨望や嫉妬といった思惑が入り混じっているが、俺に対して絡んでくるような事はない。というのも昨日ギルドマスターのカイザックさんから、自分が認めたランク認定だと強く言い聞かせてくれたからだ。


「おはようございますエミリィさん」

「はい、おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 昨日より僕の専属になったエミリィさんに挨拶をすると、いつもの笑顔で返事をしてくれる。一応規則なのでお決まりの定型文だが、そこはかとなく優しさを感じるのは専属ゆえの贔屓目(ひいきめ)みたいなものがあったりするのかな。


「エミリィさんお奨めの討伐クエストをお願いできますか?」

「了解です、少々お待ちください」


 そう言ってエミリィさんは、軽やかに討伐クエスト掲示板へ向かう。当然彼女の頭には全ての依頼は入っているが、受注するものは掲示板からはがしておかないといけないためだ。

 ギルドに俺が顔を出した時点で、既にクエストは選んでいたのだろう。掲示板から一枚さっとはがすと、すぐにカウンターへと戻ってきた。


「こちらです。確認をお願いします」

「ええっと……『フォレストウルフ×10の討伐』ですね」

「……いかがでしょうか?」


 エミリィさんが心配そうにこちらを見る。フォレストウルフならば、俺が【剣召喚】を獲得するきっかけになったケイブベアと同じ、Fランクの討伐クエストだ。単体ではケイブベアの方が強いが、フォレストウルフは群れを成す修正がある。


「はい、大丈夫です」

「そうですか。……アスカくんの強さは理解してますが、気をつけて下さいね? もし本当に危ないと感じたらすぐ撤退して下さいよ」


 少しだけ声量を下げエミリィさんが無理はしないでと伝えてくる。これは事務的な発現じゃなく、彼女が本心で言ってくれているんだと思うと少し嬉しい。


「わかりました、覚えておきます」

「ではこれで……はい。こちらの討伐クエスト、よろしくお願いします」

「わかりました。行ってきます」

「はい、いってらっしゃい」


 こうして俺は笑顔に見送られ、初めての討伐クエストへと出発した。






 出発から1時間ほどで目的地となる、フォレストウルフが棲む森へ到着。

 この近くに小さな村があるが、どうやら最近フォレストウルフの被害が多発しているらしい。これまでは家畜や作物が被害にあっただけだが、放置しているとそのうち人に危害を加える恐れがあるとか。

 それで出されたのがこの討伐依頼ということになる。ならばさっさと討伐して、村の安全を確保しよう。


「森でウルフ相手なら……【剣召喚】ダガー」


 『ダガー』を握り締めて俺は森へと踏み入る。さすがにこんな場所で剣を振り回すのは得策じゃない。だが相手はフォレストウルスなので、別に名剣と呼ばれるほどのものを出す必要もない。

 この『ダガー』ならランクCなので、何度でも問題なく呼び出せる。もしこれで苦労するなら、その時はその時で考えよう。

 そんな感じで奥へと歩いて行く。時々多少開けた場所には出るが、大半は獣道のがましと思えるほどの場所ばかりだ。そんな中を進んでいくと──


「…………来た」


 音もなく……しかも丁寧に風下から、数匹の何かが近寄ってくるのがわかる。

 これはスキルでも何でもなく、前世で会得した剣術によるものだ。俺の剣術は競技ではなく、純粋に相手を討ち倒すための剣術。そのため、自分に向けられる視線や感情には敏感になる。

 こんな場所で敵対意識をぶつけてくる存在となれば、それはもうフォレストウルフ以外はいない。

 こちらも『ダガー』を構える。そして……一気に間合いをつめて討つ!


「ギャウウゥッ!」


 一撃でしとめたフォレストウルフから呻きの泣き声が漏れる。俺はすぐさま別のヤツへとダガーを振るう。更に次の三匹目を倒した時。


「ウォオオアアオオオ~~~ッ!!」


 別のフォレストウルフが遠吠えを発した。おそらく適わないと察して仲間を呼んだのだろう。となれば俺にしっかりヘイトが向いたということだ。すぐさま身を翻して、元来たほうへと走り出す。

 別に逃げるわけじゃない。道中所々にあった広い場所へ移動するだけだ。ほどなくしてそこそこ広い場所へと出る。ここならばもう少し長い武器でも活用できる。


「【剣召喚】太刀(たち)!」


 先程まで手にしていた『ダガー』を手放し、すぐさま『太刀』を手に取る。元々習っていた剣術は日本刀での捌きに主眼を置いたものなので、言ってみればこの『太刀』が一番しっくり来るといえる。

 改めて『太刀』を構えなおすと、数を増やしたフォレストウルフが押し寄せてきた。確かに数は多いのだが、俺が移動してきたために追尾してきたフォレストウルフ達も一方向からやってくる事になった。

 それに……一対多での乱取りなんて幾らでもやってきた事だ。それに比べれば、なんの駆け引きも無い獣を討つのは容易い。


 ──そして数十分後、森に住まうフォレストウルフ達は全て討伐された。






 討伐クエストを終えた俺は、報告のために冒険者ギルドへ戻った。俺の姿を見てエミリィさんが驚いた様子でやってくる。


「アスカくん、どうしたんですか? まさかトラブルでも……」

「あ、いえ。クエストの完了報告に来ました」

「えっ、もうですか? それに……」


 俺の方を見て何か(いぶか)しげな表情をみせるエミリィさん。何だろう、何か不備でも……ああ、そうか。


「討伐したフォレストウルフなら収納してあります」

「……あら? アスカくん、確か【収納魔法】は……って、違うわね。使えないとは言ってなかったかしら」


 エミリィさんが言ってるのは、おそらく昨日ギルドマスターのカイザックさんと一緒に話した時の事だろう。


「いえ、同じような事ができますが【収納魔法】ではありません」

「わ、わかりました。それではこちらへどうぞ」


 エミリィさんに案内されたのは、ギルドから繋がる解体場だ。ここに魔獣や魔物を持ち込んで、必要な素材を解体したりする。今日の討伐相手であるフォレストウルフは、毛皮や爪に牙は素材、肉に関しては食用に用いることが出来る。なので俺は討伐後、全て余すことなく持ち帰ってきている。

 ちなみにその方法だが、ステータス画面にアイテム用のストレージの項目があったから見つけたものだ。これは【剣召喚】のようなスキルじゃなく、おそらくステータス画面持っている人間は同様に使える機能らしい。


「ではここへお願いします。討伐数の確認をしてクエストの完了となります。今回はフォレストウルフ×10ですね」

「わかりました…………あ」


 思わず声が漏れる。というのもクエストの目標討伐数をうっかり忘れていたからだ。


「どうかしましたか? ……もしかして、討伐数が不足しているとか?」

「いえ、それは大丈夫です。大丈夫なんですけど……」


 ストレージからフォレストウルフを全て取り出して置く。俺は解体もできないし、料理もできないから全部出すことにしたのだ。


「え…………ええ~っ!? こ、これ全部ですかぁ!?」

「あ、はい。おそらく群れの全てを討伐してあります」

「はぁ~……そうですか……」

「分りました。少々お待ちください」


 そしてすぐ奥へ行って、解体師を連れてもどってくる。


「おっ、これは随分たくさんのフォレストウルフだな。どれどれ……ほお……これは状態もいいし、傷も最低限で痛みも少ない。素材も肉も良い状態だな」

「ではこちらの解体をお願い致します」

「わかりました。おーい、ちょっと手伝ってくれー」


 解体師との話を終えたエミリィさんは、俺と共にギルドのカウンタへ戻る。


「フォレストウルフは10体以上ありましたので、今回の討伐クエストは無事完了となります。お疲れ様でした」

「はい、ありがとうございます」


 俺のギルドカードを水晶に翳して今回の記録を登録する。そしてクエストにかけられた報酬金を受けとった。


「納められましたフォレストウルフが10体以上ありましたので、後日討伐総数を確認して報酬の上乗せを致します。受け渡しは明日以降なら大丈夫かと思います」

「わかりました。それでは明日また来ます」


 こんなやり取りを、何人かの冒険者達が見ているのに俺は気付いているた。大半は何の気なしに眺めている感じなのだが、若干約一名どこか真剣に睨むように見ている者がいる。……明日来るって言っちゃったし、からまれないといいけど。


「了解致しました。お待ちしております。……お疲れ様、アスカくん」

「はい。ではエミリィさん、また明日」

「はい、また明日です」


 そして本日も、いつもの心安らぐ笑顔で見送られた。

 こうして冒険者ギルドで始めての討伐クエストは終わったのだった。






◆初出の剣◆


C:『太刀(たち)

日本刀と呼ばれるものは、特に記述がなければ基本ここに含まれる。

平均的な刃長は80センチほどで、緩やかな反りと方刃が特徴。

鍛え上げられたイメージと異なり、扱いが悪ければ簡単に折れるし曲がる。

製法上折れやすい刀と折れにくい刀はあるが、基本的に武器同士がぶつかった場合の衝撃には弱い。


初回の一括投稿はここまでです。

明日から10話あたりまでは1日1話更新となります。

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