001.神様なんて、居ないと思ってた
新規の連載を開始しました。
最初は1~5話を一括投稿し、その後は10話あたりまでは毎日更新います。
以降は1~2日おき投稿となります。
──神様なんて、居ないと思ってた。
そんな事を考えた俺だが、別に“神様”の存在を信じてないわけじゃなかった。天上に住まうと言われる存在……通称“神”と呼ばれるモノはきっとどこか彼方にでも座しているんだろうと。
ただ、自分がそれに関わることは無い……そう思っていただけだ。
俺の名はアスカ。ごく普通の平民だ。
両親は以前魔物に襲われて亡くなってしまったが、そんな事は俺たち平民にとってよくある話だ。その証拠に、その事で悲しんでくれたのは、俺以外には冒険者ギルドのエミリィさんくらいのものだ。
エミリィさんは冒険者ギルドの受付嬢で、よくギルドのお仕事でお世話になっている。年齢は俺よりも少し上くらいだろう。どことなくお姉さん的な感じで、俺の事を「アスカくん」と呼んでくる。
独り身になった俺は生きるために仕事をしなければいけないが、冒険者ギルドの討伐依頼は、15歳──成人してからでないと受けられない。
なので昨日までの俺は、主に採取やお使いといった依頼をギルドから受け、それで得た報酬で生活していた。その際にエミリィさんには色々と助けてもらえ本当にありがたかった。さすがに依頼を取り扱う受付嬢だけあって、個々の依頼への注意事項やアドバイスを的確にしてもらえた。
「……というわけで本日より、討伐クエストも行けるようになりました。オススメの討伐クエストをお願いします」
「あのね……確かにアスカくんは本日成人した為、討伐クエストも規則上は受注可能ではありますが……」
意気揚々とギルドへ来た俺に対し、エミリィさんはため息まじりの声で返してきた。
「クエストを受けられる事と、達成できるかどうかは同意ではないんですよ? これまでアスカくんが受けてきた採取クエストとは、難易度がまったく異なります。そもそもアスカくん、討伐クエストを受けるにあたりパーティーを組むとかは……」
「いえ、一人で受けようかと思ってます」
「………………はぁ~~~」
はっきりと返事を返すと、明確に深いため息をつかれてしまった。続いてジト目に睨まれてしまう。ちょちょいっと手招きをされたので顔をよせると、こそっと俺にだけ聞こえるように話しかけてきた。
「あのねぇアスカくん。討伐クエストっていうのは、基本的には複数人パーティーで受けるものなの。討伐クエストの中で難易度が一番低い……そうね、フォレストウルフの討伐クエストあたりを例にあげると、Fランク冒険者だけのパーティーならば、最低4人以上じゃないと受けさせないの。……理由、わかる?」
「……何故ですか?」
「もぉ……。それはね、討伐対象が基本的に群れを成しているからよ。個々の戦力が勝っていても、『個』対『群れ』では圧倒的に不利になるからなの。それにアスカくん、これまで採取クエストしか受けてないでしょ? 最初の討伐クエストをソロで受けるなんて、どう見ても自殺行為よ」
まったくもう、と軽く頬杖をついて再度ため息をもらす。エミリィさんが純粋な親切で言ってくれているのはわかるけど、俺としては正直他人と組もうとは思わない。
……ましてや、この程度のランクで。
「……わかりました」
「よかった、わかってくれたのね。それじゃあ──」
「では討伐クエストをお願いします」
「わかってないじゃないのッ!!」
バァンッ! と受付カウンタを叩くエミリィさん。ほら、あんまり騒ぐからギルド内の全員の視線がこっちに集まってるじゃないですか。
それにちゃんとわかってますって。わかってるからこそ、討伐クエストを受けるっていったのに。
「心配してくれる事は有り難いですが、Fランクの討伐クエストならソロで十分です。なので──」
「おいテメェ。流石に今のは聞き捨てならねぇぞ」
不愉快そうな……でもどこか愉悦を感じる卑しい声がこっちに向けられる。何だろうとそちらを見ると、20代半ばほどの冒険者らしき男が睨むように見ていた。大柄な体躯の男は、俺と視線が合うとニヤリと笑い歩いてくる。
「お前みたいなヒヨっ子がソロで討伐クエストだあ? 10年早ええんだよ。いや、10年たっても無理なんじゃねえのか?」
「……誰ですか」
「あぁ~?」
知らない人なので誰かと聞くと、途端に顔をゆがめて強く睨んでくる。その様子をみていたエミリィさんが、慌てて教えてくれる。
「こちらはタリックさん、Dランクの冒険者ですよ」
「そうだぞ覚えておきな。俺くらいになればFランク討伐なんて、ソロでも十分ってことになるがな。がはははッ」
何だかしらないが、どうやら彼くらいの強さがあればソロでの討伐は可能らしい。
「……それなら問題ありませんね。エミリィさん討伐クエストお願いします」
「えっ!? アスカくん、それは──」
「テメェ! それはお前が俺よりも強いって言ってんのか!?」
声を荒げる彼を見て、エミリィさんがまたしても慌ててこっちを見る。
「アスカくんダメですってば。タリックさんはDランク冒険者なんですよ。下手に怒らせたりしちゃダメです」
「いえ、俺は別に怒らせるつもりはなくて。ただ事実を言っただけで──」
「まだ言うかテメェ……いいだろう。おい、裏の訓練場……今なら空いてるな?」
「は、はい。空いてますけど一体なにを…………って、まさか!?」
とたん先程とは違う慌てた表情を浮かべるエミリィさん。なんだろう、ギルドの受付って忙しいのかな。そんな風に考えていると、先程まで怒りが強く浮き出ていたタリックの表情が、何かを付けねらうような卑しい表情になる。
「ここまでコケにされたんだ。ならそれなりの落とし前をつけてもらわねえとなぁ。おいガキ、今から俺と勝負だ」
「ちょ、ちょっとまって下さいっ。アスカさん、早く謝ってください。そうじゃないとこのままじゃ……」
「分った。俺が勝てばソロで討伐クエストを受けさせてもらえるんだな?」
「チッ、ふざけやがって……」
「あああ、もうっ! 知りませんよ~ッ!」
こんな成り行きで、俺はタリックとギルド裏の訓練場で勝負をすることになった。
だが、もちろん何の心配もしていない。
何故なら俺には、ちょっとした秘密があるからだ。
それは俺のユニークスキル────【剣召喚】。