0.お勤め終了
これは箸休め程度の作品です。
普通に連載する予定ですが、ペースはどうなるか未定です。
どうも始めまして。
私の名前は魔王です。
魔王は役職だろって?
じゃあ名前はない。
魔王とは人々を苦しめて悪道を極める奴のことだ。
響はかっこいいが、要するに人間社会における害悪、社会のゴミ、抹殺すべき汚点。
そんないわれを受けてきたやつのことを、人間社会では魔王という。
魔王は天職であり、転職はできない。
洒落じゃないよ?
生まれた時から魔王であり、魔王の価値観で生きることを強制される。
まぁ何が言いたいかというと…
人間の価値観はよくわからん。
愛する人を守って死ぬのは誇り高きことだ?
死ぬの怖いじゃん
残虐非道、畜生以下のゴミだ?
それ以外やり方知らないし、殺さなきゃやられちゃうじゃん?
挙げ句の果てには、魔王である俺に向かって勇者とかいうご都合解釈野郎はこう言ってきた。
なぜ罪を犯しても存在しようとする!
俺の存在が罪だって?
お前の信仰する神様とやらの意志で生まれてきだ俺が罪だって言ってんのか?
まじ傑作!
って言ってやりたいところだが、ご都合解釈野郎には通じないんだろうなぁー。
まぁいいやこれでお勤めも終了だ。
あとはなるようになれって感じだ。
にしてもこいつのイケメンヅラはうざいな
こいつあれだよ。世界は俺が中心とか思ってるに違いないよ。
そうだ。
どうせ死ぬんだったら最後の最後にせいぜい悪道を極めたかな俺が、その奥義で勇者に一撃を食らわせてやろう。
「お前という存在が、この世界を歪めているのだ!今この手でその首を取ってやる。イリーナ、クリス、今帰るぞ。そして…」
あーあ、なんか聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなこと言い始めたよ。
よし!
「くっ、勇者よ、最後に一ついいか?」
掠れた声を出す。
「なんだ魔王よ?貴様にかける慈悲などないが、この俺が最後の言葉くらい聞いてやろう。」
「お、まじ?んじゃ二言三言。俺実は頑張ればあと二日は生き残れるんだよねー。でもなんか疲れちゃったしここで終わってもいいかなーて思ってな?でも殺されるのは痛いし、逃げようかなーって思ったんだけど、なんかお前聞いてもない恥ずかしいことベラベラ喋り始めたから逃げどころ逃しちゃってさ〜。あ、そうそう、残った力でこれ全国放送してるからそこんとこよろしく!全国の皆さぁーん!童貞勇者は俺を倒したら王都のファーストクラスホテルで魔法使いと、シスターと一緒にしっぽりズッコンバッコンするってさー!」
悪道を極めた俺が見つけた答え。
結局、人の心を究極的に追い詰めるのは図星攻撃だった。
勇者は口をあんぐりとあけ、だんだん顔を赤くしていく。
「貴様ァァァァァァ!!このっ!死ねぇぇぇ!!」
最終決戦よりも力でてんじゃね?
と思うくらいの気合と魔力と怨念を込めた感を振り下ろす。
「だがしかーし!魔王様は最後の最後まで悪あがきをしていくのだった!!」
振り下ろされた剣をテレポートでかわしていく。
「貴様!逃げるつもりか!」
「いんやぁー?さっきの全国放送で力をほとんど使ったからそれはないよ?」
「なら今ここで死ね!」
「ほい自爆」
「……は?」
そういうと、体の中心に凝縮した魔力を解放し、爆発を起こす。
「ふはっはっはっ!!ただで死ぬ訳ねぇだろぉ!!この爆発は、的確にお前の服をはがした上で、持続時間5日間の服どころか、布を見に纏えない呪いが付与されている!全裸フルプレイトメイルという新ジャンルで、せいぜい恥ずかしい思いをしながら王都まで帰るんだなぁ!!」
ヒャッハーと叫びながら勇者をしっかりと押さえつける。
「やめろぉぉぉ!!離せぇぇぇ!!!」
ニヤリと笑い、高らかに叫ぶ。
「それでは全世界の諸君!良い人生を!アディオース!!」
この日、歴代最強と呼ばれた勇者によって魔王は消滅した。
気づいたら白い空間だった。
「お勤めご苦労様、魔王君。いやーなかなかの煽りっぷりじゃな。あんな魔王数多くの世界あれど、数える程しかいないよのう。」
そう言ってきたのは幼女。
10歳くらいか?
「やたら上から目線。ヘラヘラとした態度。噂通りのロリババア。お前神様だろ。」
「ロ、ロリババア!?なんてこというんじゃお前は!それに様をつけるなら態度を改よ!!」
「先代の糞爺が言ってた通りの奴だな。老人の妄言かと思ったが本当だったとは…」
「聞いておるのか!?」
「うるせぇーな聞いてるよ。様をつけるなら態度を改めろだぁ?じゃぁこれからは様抜きで、ロリババアだ。クソ女神。」
「まさかのそっちを省略!?それに口悪くないか!?」
「うるせぇ!あんな無理ゲーな勇者送りやがって!お前神様ならもうちょっとバランスってのを考えろ!あいつが余裕なのに合わせて余裕なふりするのまじできつかったんだからな!?」
「あぅ…それはその…先代の魔王が勝っちゃったからしょうがなくじゃな…」
「しらねぇーよ!それになんでこんな格好なの俺?なんでこの兜脱がないの!?俺生まれてきてから26年間自分の顔見たことないんだけど!?」
女神と思しきロリババアは、あっと言うと、指を鳴らした。
「ほいこれで脱げるぞ?」
ガチャガチャと音を立てて留め具を外し、かぶとを脱ぎさる。
正確には地面に叩きつける。
「よっしゃぁぁぁ!!おいロリババア!鏡ねぇか?」
「まずその呼び方をなんとかせんか!」
何だよケチケチしやがって。
「なんて呼べばいいんだ?」
「女神様と呼ぶがいい!妾こそ女神アリスじゃ!!」
「おけ把握。アリスさっさと鏡をよこせ。」
「アリス!?呼び捨てにしたのかこやつ!?」
何だこいつ?
うるせぇくそがきじゃねぇか。
「だめだ…この無礼な奴に飲まれては。私は女神。威厳ある。OK?YES!!」
なんかブツブツ言ってるし、先代のじじいやっぱりクソガキと女神見間違えたんじゃ…
「よし鏡だな。ほれ」
「おうありがとう。」
鏡を除くとそこには初めて見る人の顔があった。
ん?
ん〜?
「おいこれ人の顔じゃねぇか。」
「なんで魔王のために新しく種族を作らなきゃならんのだ!めんどくさい!めんどくさすぎる!」
うわぁー
まじかよ。俺スペックはともかく人間の顔して人間と戦っていたのかー。
「もしかして兜が取れなかったのはそれを隠すため?」
「うっ…まぁそんな感じですね…」
ふっ、と笑う。
「やっぱりクソやろうじゃん。」
「く、クソやろうとはなんじゃ!私は神じゃ!そのくらいの横暴は許されるのじゃ!!」
「ふっ…」
失笑再び。
「横暴って自覚あったんだ。全能の神様によって作られた魔王は、実は手抜きでしたと。ま、これで横暴じゃないとか言い始めたら、怒りとかじゃなくてもはや憐れみだったけどな。」
「うぅ…そんなに言わなくても…」
俺はやめない。
だって魔王だから
「だいたい神ってなんなの?自称する?普通。聞いていれば調子に乗ってさ。これであれだよ。無礼者とか言って殺されたりしたら、王国の王様と同じくらいのレベルだよ?それにロリババアってなんだよ。ほら、黙ってないでなんとか言えって」
「その…なんかずびばぜん…」
泣き始めたよ。
びっくりだよ。
これで俺も神殺しの称号ゲットってか?
「泣くなよ。話進まないじゃん。それで俺は死んで神様に呼び出されたんだろ?26年間溜まった報酬かなんか支払われんの?」
「はっ!つい押されてしまった!そうだな!話を進めよう!!」
曰く女神の説明だと。
魔王とは世界のメンテナンス要員。
ある程度の恐怖で人類の慢心を折るらしい。
先代がかったので俺は負けるように設定されていた。
まぁ、負けイベってこった。
それで俺は死んだので報酬として次の人生をある程度の設定できる権を得たのだが…
「なんで無報酬なの?」
「む?報酬なら次の人生をある程度の設定できる権を上げようと言ったではないか?」
「えぇ〜それだけかよ?なんかこうもっと何か…なんかないのかよ?」
「超アバウト!?なんかってなんじゃ!思いつかんなら言うでない!」
確かに欲しいものはないのだが…
次の人生をある程度設定できる権って何がいいんだ?
「ちなみに先代の魔王は一般家庭で孫が欲しいと願っていたよ。今はある世界でのびのびと老後ライフを過ごしておる。」
確かにあのじじい孫が欲しいとかほざいてたな。
「お前は若いからの!俺TUEEEEEとかどうだ?男のロマンだぞ?チーレムとかもいいんじゃないか?」
俺TUEEEEE?
チーレム?
「なんだそれ?」
「あぁそうか。まぁ言って見れば勇者的な力で無双したり、その力でいろんな女の子とイチャイチャしたりするあれだ。」
「それ何が楽しいんだよ?確かにイチャイチャは興味があるが、勇者的な力って、何が悲しくて同業者倒さないといけないんだよ?」
また魔王の勇者が魔王を殺すってシュールすぎだろ。
自分のこと棚に上げて、
『俺はお前を許さない!』
とか言うの?
俺には無理だ。
それにと続ける。
「俺TUEEEEEは前でもそうだったろ。魔王なんだから。」
「うーむ…となると私の下で働くか…」
「絶対無理。それだったら魔王殺しに行った方がまだましだわ。」
こんな奴の下で働くとか。
絶対給料中抜きされるわ…
それどころか無給かもしれん。
「そう言うと思ったわ。なら何がいいんじゃ?」
顎に手を当てて悩む。
「ならこれだけ考慮してあとは任せるわ。」
「これだけとは?」
アリスが聞き返す。
「元魔王の俺が自由に生きられる退屈しない世界で人生を送りたい。」
「ほほぉー…なるほどな」
「良い良い!!その思いを強く持て!今から世界に飛ばすが、お前の願いが強く左右される。しっかりとするんじゃぞ?」
願いを強くって…
もうちょいましなシステムないのかよ。
「いいか?年齢は頭の中に設定や、常識、言語などは備わっている。まぁせいぜい楽しむことだ。」
白い光がまとわりついていく。
「世話になった。いいか?もう二度と魔王に選ぶなよ?選んだら職務を放棄してやる。」
女神は何も言わずにニタリと笑って送り出した。
この時、元魔王の俺は
俺は転生した。
作者の気力、体力、精神力のために、ブクマと評価をお願いします。
頑張るぞい( ̄^ ̄)ゞ