Throw away the love.
試さずにはいられなかった、僕は彼女のことが嫌いだった。
おせっかいな馬鹿な幼馴染だった。頼まれ事を断れない様子に、僕は幾度となく苛立った。レポートを人の分までなんて、どうせ嫌なくせに。
「困ったことがあったら、いつでも相談してね」
そんなことを言うから、頼ってやった。
上級生の財布を盗んだのがバレて脅されて、暴力を振られている。そんなありえない嘘をついた。僕の目をまっすぐに見つめた彼女は、頷いた。
恋愛はできないの、って同級生の告白を断るくせに、僕のことを泣きながら抱き寄せる。彼女は本当に、馬鹿だった。
彼女は知らないだろう。僕がついたこの嘘も、僕が知らない同級生に彼女が貸した教科書をわざと棄てたことも、彼女のことが嫌いだってことも。
「大丈夫、私がなんとかしてみせるから」
そんなことを言うから、試してやった。
夏休みの真っ只中、サークルの先輩に片端から声をかけた。ヤリモクの女を見つけたから、旧校舎に集まってイイコトをしようと。
口枷を嵌められた彼女は、遠慮もない何も知らない上級生たちに僕の目の前で汚されていった。廃れていく彼女を、どう棄てようかと考えた。眺める僕をじっと見て、何もしない無抵抗な彼女に、行為は加速して彼女は酷く扱われた。
彼女が僕を見る目が、優しい目から無機質な目に変わっていくのに目を離せなかった。けれど彼女に触れようとは思わなかった。心臓の辺りがキリキリと傷んだ。いっそ、憎んでくれればよかったのに、彼女の目は虚ろになるまで、その直前までずっとずっと僕を優しく見つめていた。
気がついたら日が暮れていた、彼女の広く澄切った湖面を揺らめくような声は、使い古されて棄てられたような鶏の玩具のように枯れていた。
適当に、放って帰る予定だったのに、床に情けなく転がるゴミを宝物のように抱きしめた。
虚ろな瞳は僕が座っていたいすをじっと見つめている。
「……ぁあ」
渇いた喉から、細い声が漏れた。
「ずっと、好きだよ。僕にだけ優しくしてよ。ずっと、好きだよ。こんな何も持っていないような僕でもいいなら、君と一緒にいたいよ。死ぬほど好きだよ。僕が守りたい。僕が頼られたいんだよ」
おかしい、これは僕が持っていたものだったか。
おかしい、棄てたはずじゃなかったか。
汚い中古品のゴミを触っているはずなのに、なんでこんなにも暖かいんだろう。なんでこんなにも離せないんだろう。
「ああああああああああああああああああああ」
どうして、間違って棄ててしまったんだろう。
「こっちを向いて、お願い」
馬鹿だ、僕は馬鹿だ。ただ、僕が頼られたいのに僕だけが求めたいのに、誰にでも優しい彼女が憎らしくて、それでいて僕が好きだなんていう彼女が信じられなくて。
君だったものから手を離せない。目を離せない。君の存在を求めている、あの笑った君を求めている。
「お願い、いまから大切に」
もう棄てたあとなのに、彼女の愛も僕の愛もないのに。
「 」
もう、僕が持っていないはずの愛情が死にそうなくらい今更、君のことを呼んでいる。
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