【一時限目】覇王登場!
ギィャアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!
「ん…もう朝か…」
一道 轟也 (いちどうごうや)の朝は断末魔の叫びを上げる目覚まし時計の音で始まる。
「おい、クソ兄貴、朝ごはんだぞ」
「ガフッ」
ムエタイ選手も顔負けのキックが轟也の溝落ちにバゴォーン!!!
この蹴りを入れたのは轟也の実妹 一道雅
だ。 ポニーテールにした艶のある黒髪に、ぱっちりとした黒い目。
兄である轟也も美人だと思っている。
階段を降りてリビングへ入ると妙に凝った料理が並んでいた。
「2人とももうすぐで学校行かなきゃでしょ!早く食べなさい!」
この人が轟也と雅の母である 一道奈緒美だ。
背が高く、モデル体型で、まさに美魔女。
轟也は「はいはい」と言い、さっさと朝飯を済ませ家を出た。
「くっそあちいわ」
雲ひとつない青い空から太陽の熱が轟也の体にダイレクトアタックしているようだった。
「轟くーーん!!!おっはよーーー!!!」
耳元でキンキンした声が響いた
「うるさっ!!!毎朝何なんだよお前!!!」
「もぉーそんな怒んないの!朝からこんな美少女と登校できる轟くんはとても幸せ何だよー!」
この女は轟也の幼馴染の 相沢美丘 (あいざわみおか)
トロンとした目にふにゃふにゃした仕草。そしてムチムチのマシュマロボディ。学校内で一、二を争うほどの人気がある。
ただ、こいつは天然バカで空気が読めないクソ野郎なので、轟也は苦手としている
「それよりも今日は本当暑いねぇー」
美丘は自分の顔を手をパタパタさせて仰いでいる
「へぇーアホでも暑さは感じるんだな」
「アホじゃないしー!!!」
そんなやりとりを続けている間に学校に着いた。
家から学校まではそこまで遠くなく、徒歩で40分くらいで着く距離だ。
轟也達が通うのは、私立深涼高校
生徒数1000人を超えるマンモス校なので学校行事はとても盛り上がる。
さらに、進学実績が良く、名門大学生を何人も排出している。先生達も熱心で生徒からは信頼されている。
ただトイレが汚い。
「おーーーーーっす」
遠くから走りながら誰かが呼ぶ声がした
こいつは轟也の親友である 折尾 叶 (おりお かなう)
轟也もなぜか知らないがこいつとは、妙に気があう。
「なになになに!毎日2人で登校してくるなんて…もしかして2人とも…」
「ち、違うし!!!て、て、ていうか、折尾くんはな、な、な、何の用があ、あ、あるの?」
「がっはは!動揺しちゃってー!
まぁ、俺が要件があるのは相沢さんじゃなくて轟也の方なんだけどね」
叶は真剣な眼差しで俺を見た
だが、轟也は違和感を感じた
この眼差しはどこかで見たことがあるはずだ、いや、絶対にある!
そして轟也は全てを理解した。
「課題は見せねーぞ」
「くそっ!!!轟也の鬼畜野郎がーーーー!!!!!」
叶は新幹線のように走り去った。
「大勝利」
轟也はボソッと呟いた。
轟也、叶、美丘は3人とも同じクラスで1年5組だ。
1年5組は、なんというかとにかく変な奴が揃っている。
「や、やぁ、お、お、おは、よ、よ、う、グフェ!」
「お、おい大丈夫か三河」
こいつは三河 元気 (みかわ げんき)という。名前とは反対にめっちゃ体が弱く、すぐに吐血する。
「おいおい!三河!今日やべぇな!がはははは!ゴフォ!!!」
何もない平坦な床で盛大にずっこけたこのアホは、向 晴矢だ。
美丘が筋金入りの天然バカなら、
晴矢は天性のバカと言える
三歩歩いたらすぐに忘れる、鶏の脳を持っている。
「みんな、そろそろ朝礼が始まるぞー座れー」
こいつは我らが学級委員長 真中 湊 (まなか みなと)
学級委員長だが適当でガサツである。
ーーーーそして、しばらくたってーーーーーーー
「キーンコーンカーンコーン」
ベタなチャイムが鳴り、学校での1日が終わった。
「じゃあ、またな」
「おうよ」
一緒に帰っていた叶と別れ、いつもの道を歩いて轟也は家へ帰っていた。
轟也はこの何でもない日常が好きだった。
普通に登校し、普通に学校生活を過ごして、普通に家に帰る。
ただ、少しつまらない気もした。
もっと何か起こればいいのに。
轟也は生まれてこのかた16年、夢中になれるものが見つからなかった。元々、短期で飽き性だったのもあるが、今まで普通すぎるくらいに生きていたから、自分でこれしてみようとか、これがしてみたいと思ったことがないのだ。
どちらかというと、これが普通だろ、という一般常識にとらわれて生きてきた。
だから、つまらないが、これが普通なんだ。と思っていた。
家に着く直前には、交差点がある
ここに着けばもうすぐで家が見えてくる。
「ここを通ったら、いきなり異世界!!!なんてこと起きないかな…」
轟也はここにくるたびそう思っていた。
「ここを通れば…」
轟也は歩き始めた
ゆっくりゆっくりと一歩一歩踏みしめながら歩いた。
「まぁ、そんなこと起きるわけないか…」
ここの交差点を前にするたびに轟也は変な期待を抱いてしまう。
ここを通れば日常が変わって、もっと面白くなる。
普通という波には乗っているが、心のどこかに不満があった。
「まーいっか!」
だが、この交差点を過ぎてしまえばまた「普通」の自分に戻ることができる。
そして、轟也は家へ向かって歩き出しーーーーーーーー
ドゴォーーーーーーーン!!!!!!!!!!
轟音が鳴り響いた
その音は雷が落ちた音でも、爆発が起こった音でも、事故が起こった音でもなかった。
だが、轟也は無意識に震えていた。
轟也だけではない。その場にいた全員が見ればわかるほど震えていた。
交差点のちょうどど真ん中にその音の元凶である「何か」が落ちていた。
その「何か」の周りはアスファルトが砕けていて、砂煙が充満していた。
「おいおい、一体何がーーーーー」
その時だった。
砂煙の中からうっすらだが人型のシルエットが見えた。
「なんだ…此処は…私は…生きているのか…」
「何か」が言葉を発した。
やはり、「何か」は人であるようだ
「我は…ゴルゼフ王国に帰ってこれたのか?…」
「ゴルゼフ王国」
このワードは誰でも知っている。
この国で一番有名な昔話の中で出てくる王国の名前。
しかし、これは昔話の中の話。
轟也は少し期待を抱いた。もしかしたらこいつが俺の日常を変えてくれる。少し飽きてしまったこの日常を変えてくれるかもしれない、と。
周りの人達はすでに避難していた。
誰1人としておらず、この空間には、轟也と「何か」の2人のみ。
轟也は興奮していた。
自分がずっと思い描いていた変わった日常をもしかしたら手に入れることができるかもしれない。
そして、焦っていた。
早く、「何か」の姿を見たい。早く、早く、
早くーーーーーーーーーーーー
「何だ貴様は、この「覇王」に不服でもあるのか?」
「………」
言葉が出なかった。
砂煙の中から出てきたのは、やけに背の高い男。
年は顔的に20代後半だろうか、現代では見ることができない金の装飾が施された黒い金属製の甲冑を身につけていた。腰には一本の黒い剣があった。
「…まぁよい おい貴様」
「へ…へぇい!」
裏返った声で轟也は返事した。
「我のために城と食事をすぐに用意しろ。用意しなければ…わかっているな?」
この日から俺の日常は変わった。
事情によりキャラクターをたくさん出してしまい申し訳ありませんでした。活動報告の方に細かい設定を載せておきますのでご了承ください。
また、焦っていたため、誤字脱字がある恐れがあるのでコメントにて教えていただければ嬉しいです。