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心からの贈り物

作者: あまいみかん

こんにちは、シータこと、あまいみかんです。今回は私がシグマ目線で書いてみました。よかったら読んでみてくださいね♪

買い物からの帰り道。日は既に暮れてしまった。

買い忘れたものがあることに気がついた俺は、近くにあったコンビニエンスストアに立ち寄った。

3月とはいえ、夜にもなると外はやはり肌寒い。もう少し着込んでくればよかったか。

「いらっしゃいませ!」

コンビニエンスストアに入ると、女の店員さんが、疲れを感じさせない明るさで迎えてくれた。

毎日お疲れ様です。

買い忘れたものを買って、すぐ帰ろう。

みんなが待っている。

2L入りのペットボトルのお茶を手に取り、先程の女の店員さんがいるレジへと進む。

レジ前に並んでる人は1人か。すぐ会計できそうだ。

ん……?なんだこれ。

レジの横にホワイトデーのコーナーがあった。そういえば、ホワイトデーは明日か。

バレンタインには、彼女のシータからカップケーキを貰った。あれは美味しかったなぁ。

1週間前からホワイトデーの事は頭の片隅に置いておいたつもりだった。

本当は手作りのお菓子をあげようかと思っていたけれど……忙しくてなかなかできなかった。

今から作るのも、多分俺には厳しいし。

買って帰るしかないか……?

いや待て、もしかしたらちょっとしたものならできるかもしれないぞ!凝ったものでなくても、そう、例えば……

「あの……お客様?」

ハッと見ると、女の店員さんが困り顔でそこにいた。

慌てて周りを見渡すと、先程まで客は数人ほどいたが、みんないなくなっていた。

「あ! すみません!」

女の店員さんに迷惑かけてしまった!

もう必死に謝って、2L入りのペットボトルを渡した。

あぁ、もう嫌な顔されても仕方が無い。きっと、もう俺は嫌な客のリストに入ってしまったに違いない…!!

その女の店員さんは、バーコードを機械で読み取った後……

「よろしいのですか?」

「え?」

表情からして、その女の店員さんは怒ってはいないようだった。

「ホワイトデーのプレゼント。迷っていたじゃないですか」

疑問形じゃない、という事は、やっぱりバレてしまっているようだ。

……やっぱり今から作るよりも、買って帰ろうかな。

そう思った俺は、再びホワイトデーのコーナーを見た。

「彼女さんは、チョコレートとかお好きですか?」

女の店員さんは、いつの間にかレジカウンターを抜けて、俺のすぐそばにまで来ていた。

「あ、えと、はい!!」

人と話すことが少し苦手な俺の心臓は自分でも分かるほど、跳ね上がった。

「それなら、こっちのチョコレートアソートがいいかもしれません」

そう言って、ピンクのラインの入った透明な袋包みをその人は手に取った。その中には、カラフルな包み紙で包まれたチョコレートが入っている。

うん、確かに、これならシータも喜びそうだ。

「それじゃあ、これにします」

「では、合計で七百円になります」


周波団のシェアハウスに俺が帰ると、ガンマ……イツキ兄さんが出迎えてくれた。

「ただいまー」

「おかえり、シグマ。 あ、それはもしや」

シグマとは俺のことだ。

イツキ兄さんはチョコレートに気がついたようだった。

「あぁ、うん、シータに買ってきたんだ。 忙しくて手作りできなくて、さ」

「そうか、じゃあ、上手くかくしておかないとな」

イツキ兄さんは優しく微笑んだ。

「そうだ、ベータもアルファに何か渡すそうだぞ」

ベータも彼女のアルファからバレンタインに何か貰っていたのは、俺も知っていた。

やっぱりお返しするんだ。

「さぁ、飯だぞ。 早く来い」

イツキ兄さんはそう言って、部屋の奥へと戻って行った。

その日の晩は、アルファとシータお手製の鍋だった。

美味しかったが、俺は、明日のことで頭がいっぱいで、上手く話せなかった。


次の日の朝。

目が覚めると、キッチンの方で包丁で何かを切る音と、共に、リビングの方から声がした。

自分の部屋の扉をほんの少し開け、様子を伺う。

「かわいい……!ありがとう! ベータ!!」

そう言ったアルファの手には布のお花を持った白いかわいらしいくまのぬいぐるみがあった。お菓子もあるようだ。

アルファは照れ笑いしながら、嬉しそうに、くまのぬいぐるみをいじっていた。

その様子を見るベータの顔もにやけている。

俺も渡しに行こう。

そう思った。

サッと部屋を飛び出し、アルファとベータたちの後ろを通った。目が合ったアルファに、チョコレートを見せると、アルファは嬉しそうな表情はそのままに頷いた。

シータは、キッチンで、スクランブルエッグを作っているところだった。

シータの肩を叩くと、シータは作る手を止めることなく、

「おはよう、シグマ。 早いね?」

と言った。

いざここまで来ると、やっぱり緊張する。

よく考えたらホワイトデーのプレゼントってどうやって渡せばいいのか分からないぞ!?

口から心臓が飛び出しそうだ。

シータはくるりと俺の方を向いて、首をかしげて見せる。

今しかない!

俺は思い切って、チョコレートの包みを差し出した。

シータは少し驚いた顔をして、それを受け取った。

心臓が、高く鳴った。

シータに聞こえていないだろうか。

「ありがとう……!」

彼女は、アルファと同じように照れ笑いをした。でも、それは、俺にとっては、特別なものだった。

シータは1口それを口に入れて、「美味しい……! 本当にありがとう!」と満面の笑みを浮かべて言った。

「どうしたしまして。 シータ、好きかな、と思って……」

絞り出すように、言った。シータとほんの少しだけ目が合って、また心臓が高く鳴った。

「ね、ねぇ、シータ」

「ん?」

「す……」


「わぁぁぁぁっ!!」


捻り出した言葉は、シータの声でかき消された。

「え?」

突然のことに、思考回路が停止する。

フライパンの前でおどおどするシータ。

「どうしよう……焦げちゃった」

シータのその声で、ようやく俺の脳内もようやく現状が把握できた。

シータの持つフライパンの上には、炭の塊のような物が乗っていた。

「だ、大丈夫!? あ、俺も手伝うよ!」

急に脳内が動かしたからか、様々な言葉が浮かんでくる。

「うん、お願い!」

シータのその答えに、俺は、そばにあったエプロンを頭からかぶった。

「俺は、何をすればいい?」

「んー、私、スクランブルエッグを作り直しながら、スープ作るから人参とか大根を切っておいてくれる?」

「分かった」

言われた通りに、人参を切る為に、包丁で皮をむいていると……

「あのね」

「どうしたの?」

答えながらも、作業は続ける。

「大好き」

再びの突然の出来事に手元が狂って、左の親指に包丁が突き刺さった。

「いって!!」

何とも言えない痛みと恥ずかしさが込み上がってくる。

「あ、大丈夫!?」

血が滝のように流れる。

シータがサッと火を止めた後、救急箱などを持ってきて、ガーゼなどを巻き付けてくれた。

その後ろで口笛が鳴り、視線を指からそちらへ向けると、ガンマ兄さんと俺の親友のデルタが物の陰から俺達の様子を見ていた。

あいつ……!後で殴ってやる……!

恥ずかしくなって腹が立ったが、それは心の中に留めて、俺は、手当てされる指を眺めることにした。


朝ごはんを食べた後、俺は、リビングでベータと1対1で話していた。

「でさ、アルファが俺の予想以上にいい反応してさ? かわいいなぁって思って抱きしめたらみぞおち殴られた」

ベータは笑いながら言ったが……それ、絶対に痛い。

「まぁ、そういう所もかわいいんだけどね?」

アルファは照れると、殴ることが良くある。

俺も、その現場を見たことは何回もある。

うーん、シータがアルファのように、照れる度に殴ってきたら、俺の身体はいくつあっても足りないだろうな。

よく照れるし。

なんて思考を巡らせていると、ベータが俺の顔を覗き込んできた。

「今、シータのこと考えてる?」

「ふぇ!?」

指摘が的確すぎて、変な音が口から飛び出した。

「あ、やっぱり? すっごいにやにやしてたからさ。 でも、シータは照れても殴ったりはしないよね」

「シータは顔に出るタイプだからね」

ふとベータから目をそらすと、視界の隅にアルファと顔を赤くしたシータがいた。

「あっ……」

「ベーター!!」

シータの後ろからアルファが飛び出してきた。

「おぅふっ!!」

アルファの放ったパンチがベータのみぞおちに入った。

でも、ベータは慣れているようで笑っていた。

と、そんな2人を眺めていると、背中に何かが当たる感覚がした。

「ん?」

何だと思って振り返ると、拳をつくったシータがいた。

「え、もしかして、アルファの真似して殴ったの?」

殴った、というよりかはどちらかと言うと、軽く叩かれた、という感覚だったが。

「うん」

「あ、じゃあ照れていたんだ? 」

俺がそう聞き返すと、彼女は瞬く間に耳まで真っ赤になっていった。

やっぱり、シータは、アルファのように強く殴ることは永久にできないだろう。

痛みを伴うような愛情表現は、俺は苦手だ。

その点、ベータはよく耐えられるな、なんてことを俺は思う。

でも、それが好きという事なんだな。

この関係がいつまでも続いてほしいな、と、俺は心の底から願った。


ありがとうございました!

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