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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~  作者: 猫子
最終章 支配者の再臨
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百一話 チート魔術師のスローライフ

 ――俺がマーレン族の集落にメアを連れて帰還してから、半年が経過していた。


 俺は香煙葉ピィープ畑の前に座り、十五体のオーテムを並行して操って畑の管理を行っていた。

 俺の背後には二十人のマーレン族が並んでいた。

 全員、マーレン族の香煙葉ピィープ作りの元大御所であるカルコ家と、その関係者である。

 俺から香煙葉ピィープの製法を学ぶために集まってきているのだ。


「ノズウェルは特にしっかり見ておいてくれよ。俺が不在の間はカルコ家に指揮を任せようと思ってるんだから。俺の親父は素人だし、族長は忙しくて葉っぱにばっかり構ってはいられないからな」


「オ、オーテム狂になど言われなくても、わかっている……!」


 カルコ家の長男、ノズウェルが必死に俺の操るオーテムを目で追っていた。

 ……ノズウェルは最近めっきり落ちぶれつつあるカルコ家のために、かつての敵であった俺に取り入らねばならないという可哀想な状況になっているのだ。


 俺が帰って来て香煙葉ピィープ作りを再開した当初は、カルコ家は野心家なので厄介ごとが起きないようにと香煙葉ピィープ作りに噛ませるつもりはなかった。

 ただ、他に丁度いい人手がなかったのと、マーレン族の集落自体が香煙葉(ピィープ)頼りで権威を手にできる程単純ではなくなったため、結局彼らに任せることになったのだ。


 マーレン族の集落は今まで排他的で、外界との接触を断っていた。

 ただ、ジゼル達以外にも大人達が家出した俺の捜索のためにロマーヌの街近辺を動いていたらしく、その際の繋がりでマーレン族の集落も徐々に外の都市との接触を持ち始めるに至っていた。


 最近では魔法具やらオーテム、オーテム饅頭なる怪しい食べ物をお土産品として販売し始めている。

 ……オーテムって、そんなに気軽に売っていいものだったのか?

 いや、散々ファージ領で広めて来た俺が突っ込めることではないのだが、もうちょっとこう、神聖なものとして扱っていたと思うのだが……。


 外部との接触により、族長が頑張って広めた物々交換の目安となる魔鉱石が、外の一般貨幣に駆逐されつつあった。

 族長はやや複雑そうな様子を見せていたが、近代化に犠牲は付き物である。

 魔鉱石より便利ではあるはずなので、まあ諦めて欲しい。


 ……半年前、俺がマーレン族の集落に帰って来た際には、もう集落中から叩かれまくった。

 家の中でも父のゼレートから凄まじく怒られた。

 当然であった。

 俺はジゼルとの結婚式を蹴って家出し、メアを連れ帰ってこの娘と結婚しますと公言したのである。

 どう考えても、家の面子を潰すとかそういう次元ではない。

 元々俺は悪目立ちしていたので、余計にそうだった。


 特にメアが居たたまれなさそうな様子だったので、やっぱりメアを連れて集落を出ようかとも考えていたくらいだ。

 ただ、ジゼルが理解を示してくれたこともあり、連れてきてしまったものは仕方がないと、両親もメアを受け入れてくれた。

 ……ゼレートから『お前の気持ちを考えず無理にジゼルとの婚姻の儀を進めて、追い込んでしまったな』としょんぼりとした様子で謝られたときには、ただただ申し訳なかった。


 その後、族長とフィロの熱心なフォローと支援があり、どうにか香煙葉ピィープや魔道具をダシに、俺はマーレン族の集落内での名誉を回復することに成功していた。

 

 現在、俺は実家とは別に家を建てて、そこでメアと共に暮らしている。

 ……マーレン族の集落に帰還してから集落内で俺の扱いが真っ当になるまで一か月程掛かったため、メアとの婚姻の儀もそれだけ遅れてしまった。


 余談ではあるが、婚姻の儀には、メアの父であるメレゼフが隠れて様子を見に来ていた。

 俺は気が付いたのでこっそり声を掛けたのだが、メレゼフは肩を落として『今更父親面できるものか』と寂しそうに言っていた。

 それから『メアを頼む』と言い残して消えてしまい、結局メアとは顔を合わせず終いであった。


 ……族長としてメアを殺そうとしていたことが引っかかっているのだろう。

 メアの子供が生まれたら、彼女の様子を見つつ、一度ドゥーム族の集落へと行くことを提案してみようと思っている。



 カルコ家一同への指南が終わってから、俺はメアの待つ家へと軽い足取りで帰っていた。


 そう、この半年で、メアは妊娠していた。

 マーレン族の占術によれば、どうやら男女の双子らしい。 


 まだまだ生まれるまで先は長いが、今から誕生が待ち遠しくて仕方がない。

 立派な魔術師に育ててやらねばならない。

 この前教育の一環としてメアのお腹に精霊語で話しかけていたのだが、『先に普通の言葉を教えてあげてください!』と普通に怒られてしまった。


 ……他にここ半年での大きな変化といえば、オルヴィガがマーレン族の集落に来たことだろうか。

 ついにファージ領を追い出されたのかと思ったが、どうやら俺に(ディン)を修復して欲しいと頼み込みに来たらしい。

 オルヴィガは地上に降りてから(ディン)について詳しく調べていたそうだが、このままではやはりハイエルフ全体の危機にあるようだ。


 (ディン)の魔力がなければ、ハイエルフは生殖能力が大きく衰える。

 五千年後にはハイエルフの人口が十分の一以下になりかねないのだとか。


 ……オルヴィガもハイエルフの未来を案じていたのかと俺は驚愕したが、どうやらハイエルフの危機を救ったきっかけを作れば、ハイエルフの現王ゴーグルを蹴落として再び王に返り咲けると信じているらしい。

 微妙に狡賢いところに腹が立つ。

 これが神話大戦を生き抜いて今のハイエルフ全ての先祖となり、一万年間王座にしがみついていた男か。 

 実際、俺が見れば修復するか別の代替案を出せる可能性はあるし、そうなれば王として復帰することも不可能ではないだろう。

 この世界の(ディン)は地球の月よりは大きくなく、また月祭(ディンメイ)の影響で近づいたままであるため、詳しく調査に向かうことも不可能ではなく、修復して魔力の輝きを取り戻すこともできるかもしれない。

 

 しかし、オルヴィガはともかくハイエルフを哀れむ気持ちはあるのだが、俺は俺で忙しいので(ディン)まで向かって調査を行う時間がない。

 しつこく頭を下げるオルヴィガに折れ、十年以内には(ディン)に向かってやると約束している。


 オルヴィガは『十年など一瞬ではないか!』と喜んでいた。

 さすが一万歳超えの爺は違う。


 もう一つ変わったことと言えば……ペテロが死んだことだろうか。


 ディンラート王国の現王が病に倒れて早急に次の王を決めることになり、有力候補であった第一子アルフォンス王子と末子のシャルロット王女が後継争いを行っていた。

 その際、ガルシャード王国の戦争派の残党が、シャルロット王女に仕える騎士であるガストンたった一人の活躍によって解散していたことで、シャルロット王女は王候補として大きくリードすることになった。


 更にシャルロット王女は、王家が長年に亘って不老の怪人ペテロの傀儡にされていたことと、そのペテロがアルフォンス王子に唾をつけており、他の貴族に圧力を掛けて彼を王にしようと目論んでいたことを公に暴露したのだ。


 怪人ペテロはシャルロット王女の暗殺を企てたが失敗して逃走を図り、城の地下の隠し通路にて騎士ガストンとの戦いに敗れて死亡した。

 その後、シャルロット王女が正式に女王となったのだ。

 今ではガストンは世界最強の剣士と称されている。


 俺だってまさかと思った。

 ペテロは既に王家をコントロールすることに関心を持っていなかったはずだ。

 アルフォンス王子を王にするために強引な手立てを取り、他の王候補と対立する理由がない。


 ペテロがどういうつもりで殺されたのか、ガストンがいつの間にそこまで強くなっていたのか、全ての真相は闇の中である。

 もしかしたら俺の記憶違いで、ガストンは最初から強かったのか……?


「あっ! アベルさん! いたいた!」


 顔を上げると、シビィが俺へと向かって走ってきているところだった。

 ……何か、面倒ごとでも持ってきたのではなかろうか。


「どうしたシビィ? 俺は今、急いでるんだけど……」


「メアさんに早く会いたいだけでしょ? アベルさんにお客ですよ。族長様の館の方で待ってるみたいです。多分、身なりからして貴族の人みたいで……」


「面倒臭い……何の用か知らないけど、断っといてくれよ」


「駄目ですよ! アベルさん、開発のためにもっとお金欲しいってぼやいてたじゃないですか」


「貴族もピンキリだからなぁ……金が有り余ってるような奴ならいいけど、そういう奴は領地に来いとか高圧的に言って来るし……」


 俺は肩を落としながら、族長の館へと向かう。

 手早く断って帰ろう。

 長引きそうなら後日に回してもらう。

 今のこの集落は、観光客向けの宿泊施設も充実している。

 

 そう考えて族長の館に向かうと、客間に綺麗な衣服に身を包んだ長身の女性……オカマがいた。

 つーか、仮面は付けていないので違和感は凄いが、ペテロだった。

 被り物で顔を隠していないが、横にミュンヒも並んでいる。


「ペ、ペテロさん!? 生きてたんですか?」


「勝手に殺さないで頂戴、政界の舞台から消えることにしただけよ。そのためには目立つ舞台で死ぬのが一番丁度良かったの。シャルロット女王と結託して、彼女の功績を水増しするのに貢献する代わりに、わざとヘタを踏んで殺されたことにしてもらったのよ」


「な、なるほど……」


「騎士ガストンがって言っておけば、だいたい皆信じるものね。彼の求心力って凄いもの。ガストンって聞いたら、すぐシャルロットだってわかるし。全く、ワタシもジュレム伯爵が消えるまでは本気でアルフォンス王子を推してたのに、ガストンのせいでひっくり返されちゃったもの。いい騎士を捕まえたわよ、あの娘」


 ガ、ガストンの謎の大活躍はペテロの水増しのせいか……。

 というかこの口振り、ペテロは恐らくガストンがただの中級冒険者程度の実力しかないことを知らずにやらかしている。


「どうしたの、アベルちゃん? そんな引きつった顔をして」


「……い、いえ、なんでもないです」


 生真面目なペテロのことだ。

 きっと騎士ガストンがただのガストンだと知れば、シャルロットを女王にはしなかっただろう。


 ……しかし、それは今更知ってもどうにもならないことだ。

 ガストンはハリボテのまま世界最強の剣士になってしまったが、まあ俺の知ったことではない。


「ワタシは長く生きすぎたし、本当はそのまま消えるつもりだったんだけど……それはそれで問題があるかもしれないから、しばらくは今の位置から様子を窺うことにしたのよ。ワタシの持ってた組織の残党が、暴走しないとも限らないものね。それに、アベルちゃんが今後何をしていくのか見届けたかったの」


「ペテロさん……!」


「……それに、野放しにするのも不安だし」


「ははは……そんな……」


 俺は苦笑いをして誤魔化した。

 まずいな……こっそり作っていたキメラと人工精霊を、研究資料ごと隠しておかなければならない。

 関わった奴も、呼び出してもう一度しっかりと口止めしておこう。


「そういえばアベルちゃん、ドゥーム族の祖のメビウスの魂の入ったオーテム、ファージ領に放置してきたでしょ? あんな危ないもの倉庫に放置しないで頂戴。アナタ、ファージ領を魔境にしたいの?」


「す、すいません、俺も疲れてて……もう大したことはできなさそうだし、別にいいかなって……」


「とりあえずゾロモニアちゃんを封印してる塔に放り込んどいたから、次にファージ領に帰ったらまた確認しておいてね」


「助かります」


 俺はペテロに頭を下げた。


「……ペテロ様も、アベル様に毒されて感覚が麻痺していませんか? 充分ぞんざいに思えるのですが……」


 ミュンヒが若干引いた様にペテロへと言う。


「実は、アベルちゃんに会わせたい人がいるのよ。入って来て頂戴」


 ペテロが後ろの扉に声を掛ける。

 ……隠れてもらっていたのか?

 何を勿体振った真似をしているんだ?

 別に俺はそんな、誰を連れて来られても喜ぶようなことは特に……。


「ア、アベル様……!」


 扉の前には、猿顔の小柄な老人が立っていた。

 俺は目を見張った。

 見間違えるはずがない。

 元水神四大神官の一人、ペンラートである。


「ペッ、ペンラート!」


「アベル様あぁあああっ!」


 ペンラートが俺へと駆け寄ってきた。

 俺は腕を広げ、ペンラートと抱擁を交わした。


 ペテロは、俺との約束を守ってくれたのだ。

 ちゃんとペンラートを牢から出してくれた。

 正直ペテロが死んだと聞いたときは『踏み倒して地獄に逃げやがったなクソオカマ!』と憤っていたが、そんなことはなかったのだ。


「……気色悪い茶番中に悪いけれど、そいつ本当に危険人物なんだから、アベルちゃんが責任を持ってしっかり見張っておきなさいよ?」


「ペテロ様、どちらかというとアベル様の方が危険人物なので、彼に警告してもあまり意味がないのでは?」


 ミュンヒが散々なことを言ってくれる。


「だ、大丈夫よミュンヒ、アレでアベルちゃん、そこそこ弁えてるはずだから。ペンラートは振り切れてるけれど、アベルちゃんは学習して自分の異常性を隠そうと努力できるタイプだから。少なくとも目立つ騒ぎは好んで起こさないはずよ」


 ペテロは俺を何だと思っているんだ……?


「よく来てくれたペンラート! 実は俺、ここの集落でこっそり生殖できるタイプのキメラとか人工精霊を造ってるんだ。後で見せてやるからな」


「なんと、さすがはアベル様! この愚拙、感涙の極みにございます!」


「ちょっと待ちなさいアベルちゃん! それ、ワタシにも見せなさい!」


 ペテロが鬼の形相をしていた。

 い、いかん、口が滑った!


 ……こうしてどうにかシラを切り通して粘り勝ちした俺は、ペテロとの再会を終えた。

 ペテロはこれからまたファージ領の方で暮らすつもりのようだった。

 ペンラートはマーレン族の集落の宿屋に泊まってもらうことになり、今日のところは俺も自宅へと帰ることになった。

 予定より帰る時間が遅れてしまった。


「あっ! お帰りなさい、アベル!」


 家の奥よりメアの声が響き、立ち上がる様な音が聞こえてくる。


「メア様はゆっくりしていてください。兄様の子に何かあってはいけませんからね」


 ジゼルの声がし、彼女が玄関先へと現れた。

 ジゼルはエプロンを掛けており、笑顔を浮かべていた。

 

「兄様、お帰りなさいませ! すぐに食事を用意致しますね!」


「悪いな、ジゼル」


 ジゼルは身重のメアに代わり、家のことを見てくれているのだ。

 俺もやることが多くてあまり家にはいられないので助かっている。


 奥の方から、お腹を大きくしたメアが不安げな様子で出て来た。


「メア様、いけませんよ。あまり不用意に動き回っては。大丈夫ですよ、兄様の身の回りの世話は、全て私に任せていてください。兄様のご飯の支度も、洗濯も、全て私がやっておきますから。さ、メア様はゆっくりと養生なさってください」


 ジゼルが笑顔で話す。


「ア、アベル、その……ジゼルちゃん、大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよ、メア様。不安にさせてしまって、申し訳ございません……。私はただ、家族として兄夫婦を補佐しようと考えているだけですから」


 メアが俺とジゼルを交互に見る。


「安心してくれ、メア。ジゼルともその、色々あったから不安になるのはわかるが……しっかりと話し合って、そこの折り合いはついたとジゼルも言っている」


 ……ジゼルには後ろめたい気持ちがあるので、どうしても強く出られると邪険にできないのだ。

 それに、メアの身体が心配だが俺も忙しい身なので、助かっていることには間違いない。


「そうですよ、メア様。どうか安心して、兄様のことは全て私に任せてください」


「……夫婦の補佐って言っているのに、アベルのことしか話してなくないですか?」


 ジゼルが誤魔化す様に咳払いをした。


「やっぱりダメですよアベル! メアだけで大丈夫ですから! やっぱりジゼルちゃん、距離感ヘンですもん! 普通兄妹でそんなに顔近づけたりしませんもん!」


「そうか? 俺の家では昔からこうだったぞ?」


「ジゼルちゃんが普通じゃないんですよ!」


 メアが俺の腕にしがみつき、ジゼルへと目を向ける。

 ジゼルはにこにこと笑顔をメアへ返していた。 

 ご愛読ありがとうございました!

 連載開始から三年半、ついに呪族転生が完結いたしました!


 四百五十五話、総字数百四十万文字。

 ここまで長い小説を完結させられたのは初めてです。

 これも連載当初より支えてくださった読者の皆様のおかげです!

 改めてありがとうございました!


 九月の中旬にコミカライズの第二巻が発売予定ですので、そちらもぜひよろしくお願いいたします!


 また、本日より新作の「不死者の弟子」を投稿し始めております。

 こちらも主人公最強系のラブコメを予定しておりますのでお楽しみに!(2019/07/19)

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― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます。 面白かったです、良い物語をありがとうございました。
なろうでは古よりエタるという不治の病が流行していますので、このような痛快で読みごたえのある作品が完結という形でその幕を閉じることに心より喜び申し上げます。
[一言] 超面白かったです! メアかわわわわわ!! 石化したお母さんは呪詛返しした時に戻ってるのかな?
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