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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~  作者: 猫子
最終章 支配者の再臨
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十話 ファージ領三大兵器①

「や、やった……ついに、完成した……」

「これでこの重労働からも解放される……」


 錬金術師団の団員達や、臨時で雇われていた作業者達が、地面にへたり込む。


 俺がクゥドルからメアの話を告げられてから三日後……ついに、念願の木偶竜ケツァルコアトルが完成したのだ。


 木偶竜ケツァルコアトルは全長二十メートルにも及ぶ、巨大なオーテムの集合体……いわば、全身に細かく魔術式を刻まれた浮上要塞である。

 結界の多重展開、即時自動修復、何ならアベル球と同じ原理で作られる神火球を口から連続的に放つこともできるなど、なんでもござれである。


 少々魔力コストは掛かるが、ペテロに強請り、どうにか数日以内に大量の魔石を用意してもらえることになった。

 顔が引きつっていたが、ここでノーと言わずに首を縦に振ることができるあたり、よくできたオカマである。


 かなり当初の予定から時間面と費用面での妥協は強いられたものの、思いの外短期間で完成させることができてよかった。

 俺が別の用事に駆られている間にも、コツコツとアルタミアとリノアに現場の指揮を頼んで開発を進めてもらっていたのが大きい。

 なんなら俺が仕切っていたときよりも効率がよかったかもしれない。


 最初の想定より色々と簡略化されてはしまったが……これで、木偶竜ケツァルコアトルが完成した。

 俺は荒ぶる木偶竜の顔を見上げ、大きく頷く。

 俺の横に立つアルタミアが、俺の肩を軽く突いた。


「ねぇ、アンタ……今更だけどこれ、過剰戦力じゃないの? 一年あれば、これ一つで世界を更地に変えられるわよ……? 私も大分アレな自覚あったけど、ここまではしなかったわよ?」


 かつて討伐を依頼されていた伝説の魔獣アポカリプスを、こっそり隠れてペットにしたせいで国中から命を狙われてなんやかんやで塔に引きこもることになり、本人の不在後も百年近く頭のおかしい魔女がいたらしいぞヤベェよなと悪名を轟かせていたアルタミアが、何かをほざいていた。


「ペテロさんの話だと、何が敵になるかわかったもんじゃないからな」


 ジュレム伯爵の正体は未だにはっきりとは掴めないものの、クゥドルの話によれば、クゥドルに近い戦力を隠している可能性が高い。

 そもそも……あり得るのだ。クゥドルが、俺の敵となる可能性も。

 俺は仮想敵をクゥドルにおいておくべきだろう。


 俺がクゥドルに致命的に劣っていた部分は、移動速度、防御面、そして規模である。

 木偶竜ケツァルコアトルは、これらの欠点を大きく補ってくれる。

 これだけではクゥドルにはまだ届かないだろうが、大分喰らいつくことはできるはずだ。

 だからこそ、多少妥協してでも完成を急がせる必要があった。


 それに、切り札はこれだけではない。

 リーヴァイの槍の解析も、ゾロモニアのお陰で順調に進んでいる。

 昨日、ゾロモニアに進捗を問うたのだが……あれは使い方次第で、かなり悪いことができるかもしれない。

 あの槍が思い通りに使えるようになれば、クゥドルに致命打を与えることも難しくはないはずだ。


 俺はゾロモニアから進行を聞いた後、思わず興奮のあまりゾロモニアとハイタッチをして彼女を絶賛し、そのまま手を取って小躍りしたくらいだ。

 無論その後、冷静に結界を張り直し、監禁し直しておいた。

 下手に逃げ出されては打倒クゥドルがパァになってしまう。

 俺も可哀想だと思わないこともなくはなくもない気がするのだが、ゾロモニア自身、かなり悪さをしてきた悪魔なので、あまり野放しにするのは危険だから仕方がないのだ。そう、必要なことだからしょうがない。

 元々、辺境地で杖に封じられていたらしいので、今更ちょっと倉庫にぶち込まれたくらい、全然大丈夫だろう。


 魔力波塔についても、魔力波塔の仕組みを兵器に転用するという方向で再設計を行っている。

 元々この機能はオマケでつけるつもりだったのだが、クゥドルの話を聞いてあまり時間的な猶予がないかもしれないことを痛感した俺は、こっちを主軸に進めることにしたのだ。

 ブチあてればクゥドルでも一撃で瀕死に追い込めるポテンシャルはあるが、実際に運用するには現時点から問題塗れなので、恐らくいざというときのジュレム伯爵、もしくはクゥドルへの交渉用の兵器ということになるだろう。


「しかし……今更だけれど、このケツァルコアトルの、目に悪そうな、狂気的な配色はどうにかならないの?」


「失敬な、デザインはメアに手伝ってもらったんだよ。かっこいいじゃないか」


「ああ、そうなんだ……あの娘、こういう感じなんだ……」


 噂をすれば何とやら、ちょうどそこへメアの声が聞こえて来た。

 顔を向ければ、手を振りながら駆けて来るメアと、その少し後ろを歩く、ペテロ、ミュンヒのペアがいた。

 どうやら俺の様子を見に来たメアとペテロが、道中で合流したらしい。


「アベルー! 月祭ディンメイの企画、纏まりそうですよ! メア、役に立ちましたか!」


 メアが駆けて来る。

 額には『副会長代理』と書かれたハチマキが巻かれていた。

 俺があまりに忙しいので、ファージ領の月祭ディンメイに伴ったイベント企画の副会長の座を、代理という形でメアに投げているのだ。


「あれ……団員さんが揃って寝ころんでいるのに、アベルが看過してる……? もしかして、木偶竜が完成したんですか!」


「……アンタ、結構毒を吐くわよね。あんまりこの男に毒されちゃダメよ」


 メアの言葉に対し、アルタミアが釘を刺す様に言う。


 ペテロは、メアに少し遅れて俺の前に立ち、仮面越しにまじまじと木偶竜ケツァルコアトルを睨みつける。

 それからミュンヒと小声で何かを話し合っていた。


「どうですか、ペテロさん! かっこよくないですか? 正直俺、大国四つ相手にしても、全然負ける気がしませんよ!」


 俺は胸を張って言い、続けて木偶竜ケツァルコアトルの性能面について、ペテロに語って聞かせてやることにした。

 耐久性能、自己修復性能、そして高火力魔術兵器の連射……と、俺が話す度に、どんどんペテロの顔色が悪くなっていく。


「あの、アベルちゃん……? あんまりやりすぎたら、王家を黙らせ切れなくなっちゃうから、ほどほどにしてってワタシが言ったの、覚えているかしら?」


「……え、なんか言っていましたっけ?」


「アベルちゃんは軽く考えているみたいだけれど……せっかくマハラウン王国との裏交渉が上手く行きそうなのに……妙な兵器を抱え込んでいるのが露呈したら、最悪火種として利用されてしまう可能性もあるのよ?」


 ……ガチ説教だった。

 確かに、少しばかり軽く考えていたかもしれない。

 ペテロはペテロでクゥドル使って世界統一目論んでたくせに何をほざいてるんだこのオカマはと思ったが、ペテロは実際に全世界侵略を始めるつもりだったが、俺は別にそんなことを目論んではいない。

 不用意な争いを誘発するなという意味では、ペテロは正論だ。


「あ……はい、すいません。人目に付かないよう、最大限努力します」


「あんまりやりすぎないでって言っているのよ!」


 ペテロが顔を赤くして俺へと掴み掛かろうとする。

 その動きをミュンヒが押さえる。


「我慢してください、我慢! 確かに政治も大事ですが、保険に武力を用意しておかないとどうにもならない状況だと、先程ペテロ様も仰っていたではありませんか!」


「限度ってものがあるでしょうがぁっ!」


 怒鳴っているペテロを見ながら、槍やら魔力波塔については完成しても黙っていた方がいいかもしれないなと、俺は考えていた。

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