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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~  作者: 猫子
最終章 支配者の再臨
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三話 とある火の国の凶兆③

「それで……リムド五大老は、ジュレム伯爵について、何か知っていたんですか? マハラウン王国がジュレム伯爵に乗せられて、ディンラート王国に対して攻撃を仕掛ける恐れはあるのですか?」 


 話が世界の重要人物の脅威度序列のリストから、マハラウン王国との戦争に戻ったところで、俺は最初から持っていた疑問をペテロへと投げかけた。

 ペテロは口許に僅かに笑みを浮かべる。


「リムドは、絶対にそうはさせないと言ってくれたわ。彼、戦争が嫌いなのは本当なはずだから、信用してあげてもいいと思うのよ。元々、戦争の回避が目的で危ない橋を渡ってワタシに接触していた節もあるみたいだから。ジュレム伯爵について彼から意義のある話は聞けなかったけれど、彼の抱いている不安の種は教えてくれたわ」


 ペテロが先程取り出した五大老について書かれた五枚の紙の内、一枚を取り出して指先で示した。


「五大老の一人、ジームよ。元々かなり行き過ぎた過激派だったのだけれど、最近は支離滅裂な言動が多くて、五大老内部でも浮いているそうなのよ。五大老は必ず血筋で選ぶ仕来たりで、親兄弟が一人も残っていないから、仕方なくこの男に五大老の一角を任せたままにしているらしいわ。ジームは勝手に動き回っては事件を引き起こすから、国の内外問わずに敵も多いみたい。クゥドル神復活を理由に、ディンラート王国へと攻撃を仕掛けるべきだと主張しているらしいの」


 記載されているジームの絵では、皺だらけの丸顔の老人だった。

 データによると、百三十センチメートルと随分と小柄らしい。

 意外にも、魔術よりも、魔力で強化した肉体で戦うタイプだという。

 ギョロリと見開かれた目が、絵からでもわかるほどに狂気的だった。


 ジュレム伯爵はリーヴァラス国を偽神メドを用いて制御しようとしていた。

 それを踏まえて考えれば、今度はマハラウン王国をジームを用いて扇動するつもりなのかもしれない。


「序列では、五十五位……マイナス3ペテロさんですね。他の三人よりは上ですが、リムド五大老よりは遥かに劣っている」


 話を聞いている限り、リムドに比べて人望も薄い。

 実力でも大きく劣るとなれば、ジームが何かをしたからと言って、マハラウン王国が意向を変えてディンラート王国への攻撃を始めるとは思えない。


「……もう突っ込まないわよ。ジームに関しては、リムドが他の五大老に話を通して、暗殺の準備を進めているらしいわ。近い内に、宮殿内を人払いしてから攻撃を仕掛けて、事故として処理する算段らしいわ。ワタシに明かしたくらいなのだから、今頃はもう実行してるかもしれないわね」


 そうなると、五大老の血筋が一つ途絶えることになるが……リムドとしても、ジームの奇行の方が看過できない状況に追い込まれてしまっているのだろう。

 無論、ペテロを嵌めてディンラート王国に打撃を与えるリムドの策謀である可能性も否定できないが、ペテロもそのことは考慮しているはずだ。

 俺が口を挟むようなことではない。


 マハラウン王国の問題が片付いているのならば、ジュレム伯爵が干渉していると宣言した四大国家の残り、土の神を信仰するガルシャード王国と、空の神を信仰する天空の国 (アルフヘイム)へと目を向けなければならない。


「だったら今のペテロさんは、残り二国の対策を練っているところなんですか?」


「……正直なところ、ガルシャード王国は掴みどころのないところなのよね。平和主義第一で長らくやって来たところで、大きく方針を変える前兆みたいなものはまったく見えてこないわ。内情は探らせてはいるけれど、成果はほとんどないの。天空の国 (アルフヘイム)に関しては、潜入自体がほとんど困難だから、今の段階では古代文献を調べるくらいが限界ね」


「後手後手じゃないですか……」


「ワタシとしては、二つの国が動くより先に、アベルちゃんがとっとと伯爵を捕らえてくれると助かるのだけれど……」


「簡単に言ってくれますね……」


 ペテロはリストの中からペンラートを抜き取り、俺へとチラチラと見せつける。

 おのれ、この五十二位め。卑劣な真似をしてくれる……!

 俺が歯軋りをしてペテロを睨んでいると、メアがリストを拾い上げて、楽しそうに捲り始めた。

 他にどういう人間が序列に入っているのか、気になったのだろう。俺もじっくり落ち着いたところで見てみたいという気持ちはある。


「え……」


 メアが途中で手の動きを止め、表情を歪めた。


「どうしたんだ、メア?」


 メアが困ったような目で俺を見て、ゆっくりと一枚の紙を広げて見せて来る。

 手が、震えていた。


「ア、アベル、これ……」


 紙一面に、厳つい髭の濃いオッサンの顔が描かれていた。

 ガストン・ガーナンド。

 脅威度序列第三十三位、ディンラート王国最強の騎士として名を刻まれていた。

 ま、まだ、バレてなかったのか……。


 いや、それどころか、むしろ扱いがよくなっていないか?

 ガストンにあのとき気迫だけで勝利したブライアンは、一応載ってはいるものの、かなり後半の方に位置付けされている。

 あの後、精神的に追い込まれ過ぎたガストンに奇跡が起きて覚醒したのか、引っ込みがつかなくなって嘘を塗りたくっている間にこんなことになってしまったのか、いったいどっちなんだ。


「……それは、シャルロット王女の騎士、ガストンね。そいつが、どうかしたのかしら?」


 五十二位のペテロが、不思議そうに俺へと尋ねて来た。

 俺は思わず口許を押さえて笑みを押し殺し、下を向いて顔を隠した。

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