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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~  作者: 猫子
第八章 大いなる水の神リーヴァイ
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五十話 再・水を司る神リーヴァイ④

『無能なる余の信徒共よ、貴様らに、最後の使命を与えてやろう! 異端者を滅するために、殉教という名誉をな!』


 リーヴァイが遥か高みに上がったと同時に、街壁を覆う様に巨大な水のカーテンが展開されていき、聖都を完全に閉じ込めた。

 随分と大層な魔術だ。

 俺達諸共、教徒達も逃がさないつもりらしい。


「リ、リーヴァイ様……?」「嫌だ、そんな、どうして……」

「しっ、痴れ者がぁっ! リーヴァイ様のために死ぬのが、怖いというのか!?」


 聖都中パニックになっていた。

 水路に並んでいた教徒達が、泣き叫び、聖都の外へと向かって逃げていく。

 それを捕らえて怒鳴りつけている熱心な教徒達もいるが、目からは涙が零れていた。


『アベルよ、これで滅びるがいい!』


 天に浮かぶリーヴァイが腕を掲げる。

 空から、幾つもの龍脈の水の塊が、俺を目掛けて豪雨の如く降り注いでくる。

 何千もの水の塊は俺の周辺の広くカバーしており、道を壊し、建物を破壊していく。


 ここまで来ると避けようがない。

 メツトリの結界が弾いてくれてはいるが、さすがに無事では済まず、軌道をかなり曲げられ、高度を落としている。

 おまけに、それだけでは終わらない。


「助けてくれぇぇぇっ!」

「とにかく、高い所へ逃げるんだ! 外へは出られない!」

「無意味だ、全員死ぬんだ!」


 地に落ちた水は質量を増していく。

 更に水のカーテンに封じられた聖都が、リーヴァイの豪雨を外に逃がすことができず、どんどんと浸水し始めていた。

 既に、大人の膝ほどまでは水が溜まっていた。


 上から延々と叩きつけられ、メツトリの高度が上がらない。

 これでは、遥か高くにいるリーヴァイへと、攻撃を当てることができない。

 奴も止まっているわけではない。この距離、この角度ならば、避けて来るはずだ。

 上手く当てても、龍脈の盾に逸らされる。


『沈め、アベル! 聖都と共に、沈めぇっ! 思い上がった人間よ、これが神の怒りと思い知れ!』


 腕を延ばした体勢で吊るされているサーテリアの背後で、リーヴァイが憤怒の目で俺を見下ろす。


「この国は複雑な事態にある、俺なんか何も考えてない奴が、手を下していいのか、散々悩んだ! だが、この国の中心にいるお前だけが、ここまで何ら疑う余地もない、ただの下衆野郎だとはな!」


「皮肉なものね! アナタには、本物のリーヴァイであった事以外、何の価値もない! リーヴァラス国がこんな状況でさえなかったら、誰もアナタなんかの言葉に耳も傾けなかったでしょうよ!」


 俺とペテロの罵倒にも、まるで反応を示さない。

 一方的に天から龍脈の水を集中砲火で落としてくるだけである。


「……তুরপুন(錬成せよ)


 地上から巨大なヒディム・マギメタルの腕が伸び、水面を貫く。


『何をしようと無駄だ! もう、貴様には何もなす術はあるまい! 龍脈が空になるまで、水弾を叩き込んでくれる! 我が憤怒の中に沈めぇぇぇえっ!』


 俺は杖を左腕に移し、右腕を空に掲げる。

 手の甲に槍の紋章が現れ、眩い輝きを放つ。ヒディム・マギメタルの腕に、リーヴァイの槍が現れた。


『おお、余の槍……! だが、それを投げようと、無意味な事! それは、龍脈の魔力を用いることで、初めて真価を発揮する! アベル、貴様には過ぎた代物……』


 俺が槍に魔力を込める。

 聖都内を、槍の光が覆い尽していく。

 戸惑い、泣き叫んでいたリーヴァイ教徒達の動きが一斉に止まり、息を呑む。


「そ、そんな馬鹿な……!」

「リーヴァイ様の槍は、リーヴァイ様にしか扱えない! そのはずだ」


 リーヴァイでさえ、一瞬、水弾を撃ち込むのを止め、表情を固まらせたほどだった。

 だが、すぐに不敵な笑いに代わる。


『面白い……いいだろう、この距離で、当たるかどうか、試してみるがいい! それも、この嵐の中でな! それだけの魔力を込めては……外せば、貴様とて後があるまい! よぉく狙うがいい、アベル!』


 再び水弾の雨嵐が、一層と苛烈になって再開する。


「狙う必要はない」


 俺は再び杖を振るう。

 巨大な六芒星が宙に浮かび、六つの正三角形の外側の点を中心に、六つの巨大魔法陣が浮かび上がる。


『何の真似事だ?』


「くたばれ、クソ神がぁっ!」


 俺は杖を降ろす。

 ヒディム・マギメタルで象った巨人の腕が、槍を、思い切り地面へと叩きつけた。

 光が広がり、巨人の腕が消し飛ぶ。


『自棄になったか、アベ……』


ভাগ্য(運命)নড়ন(歪曲)


 六つの魔法陣が輝き、世界が歪み、リーヴァイの槍が消える。


『あ、あり得ぬ……認めぬぞ! 人間如きが、か、神の真似事など……!』


 遥か空高くを舞うリーヴァイの背の上に、リーヴァイの槍が現れた。

 次の瞬間、聖都の中央を、光の柱がぶち抜いた。

 光の中で、リーヴァイの巨体が、腹部で、縦長の宮殿を破壊していく。


『グゥオォォォォォオオオオオオオオオオオオオオッ! 余が、この余がアァァァァアアアアアアアアアアッ!』


 リーヴァイは宮殿を完全に壊し尽し、うつ伏せになって地面に張り付く。

 背にはリーヴァイの槍によってできた、大穴が開いていた。槍自体は、地面を貫通し、遥か地中へと埋まってしまったようだ。


 リーヴァイが白眼を剥いて、呻き声を上げる。


『に、人間の分際で……許さぬ、許さぬぞ! 余は、余は、まだ、生きておる……それに、龍脈、サーテリアも、手の中だ。魔力の尽きた貴様を、嬲り殺しに……』


「誰の魔力が尽きたって?」


 俺は槍を投げた直後から、メツトリに詰んでいたオーテムを用いてオーテムコールを行い、二発のアベル球を準備していた。

 無論、落ちて来たリーヴァイを、確実に葬るためだ。


『なっ……!』


 二発のアベル球が、リーヴァイの胸部と腹部に叩き込まれる。

 リーヴァイの下半身、上半身、両腕、首が、アベル球によって爆散した。

 同時に宮殿の立っていた土地に罅が入り、水路の水に沈んでいく。

 バラバラになった部位も、アベル球の熱で焼け焦げ、蒸発して行く。


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