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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~  作者: 猫子
第八章 大いなる水の神リーヴァイ
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九話 とある水の神の信徒(side:ラスブート)

 水の国、リーヴァラス国の聖都リヴアリンに位置する大宮殿最上階、神の間にて、一人の巨漢が立っていた。


 肥えて肥大化した腹に、ごわごわとした茶の髭。

 巨漢の顔は、面の様に笑みを保っており、顔には常に深い皺が寄っている。

 不吉で、不気味な男だった。


 巨漢がその奇怪な相貌のまま、片膝を突き、神座に置かれた蒼い水晶玉へと腕を組み、頭を下げる。


「リーヴァイ様、ここのところ呼び出しが多いですが……私は、教皇様よりも疎まれております故に。この聖なる地で、龍脈の魔力を操れる教皇様の感知を掻い潜ることは、この私でも難しいのです。私があの方に見つかっては、少々難があるのでは?」


 龍脈とは、聖都リヴアリンの地下深くに流れる魔力の塊を宿した液体の流れの事である。

 聖都の周囲を巡って繋がっており、循環し続けている。

 神話時代にリーヴァイがクゥドルに敗れた際、その身体が溶け出して地に染みたものである、とされている。

 この龍脈、及び聖地の奪い合いが、リーヴァラス国の内乱を過激化させた最大の要因でもある。

 現在は、リーヴァイより聖魔水権杖を賜った、サーテリアの制御下にあった。


 巨漢の言葉に答えるように、蒼い水晶が光る。


『仕方あるまい、それだけの事態だ。確かに、四大神官の二人を欠いた状況で、潔癖症のサーテリアの忠誠を挫く様な真似は避けたいが……そのようなことを、言っている場合でもないのでな。サーテリアならば、どうとでも言いくるめられる。そうは思わぬか、殺戮司祭、怪僧のラスブートよ』


 リーヴァイの言葉に、巨漢の男、ラスブートが不気味な顔をわずかに上げる。


「リーヴァイ様、その呼び名は今は……」


 ラスブートは、元々悪魔に唆され、人の欲に歪められてを繰り返して枝分かれしたリーヴァイ教の教派の中でも、最も異端とされる教えを信じ、全うしてきた狂人であった。

 あらゆる犯罪と禁忌を網羅してきたといっても過言ではない。

 敵対宗派に捕えられて極刑を科されたが、恐ろしく身体が頑丈であり、七度の刑の執行に堪え切り、そうこうしている間にリーヴァイが目を付け、助け出したのだ。

 しかし実力は申し分なかったが、あまりに下衆な経歴により、リーヴァイ教の看板となる四大神官には加えられなかったのである。


『余は、折を見て、汝を四大神官へ上げようと考えている。マリアスとネログリフがディンラート王国に拘束され、四大神官には二つの穴が開いている。それを、汝が埋めるのだ」


「なんと……それは、ありがたき幸せ……。ですが、よろしいのですか?」


『民の顔色を窺っているような余裕のある時期は、とっくに過ぎたのでな。それより問題は、馬鹿に奪われた余の槍と、なぜか無防備に転がっている空神の遺産の回収……。そしてこの余を相手に大物気取りの伯爵に現実を教えてやることと、眠る凶神クゥドルを完全に永眠させてやることだ』


 神座の水晶が、リーヴァイの激情を示しているかのように、赤々とした輝きを放つ。


『伯爵との同盟は、既に余が先行して動いたことで決裂している。奴を相手取ることを想定し、なんとしても奴に対して優位性を取らねばならぬ。そこで、伯爵がクゥドルへの人質とすべく、生かさず殺さずを続けて機会を窺っているディンラート王国を……余が、先に掠め取る。槍と空神の遺産も回収できて……余は伯爵に対して優位な駒を揃えることができる』


「そのための布石として、四大神官ペンラート殿を、ファージ領へと差し向けるのですね」


『それだけではない。ペンラートの奴は実力は申し分ないが、馬鹿なのでな。余の細かい命令が理解できていないのか、わざと理解できていない振りをしているのか、一切聞かん。だから小回りの利く汝が、ペンラートの襲撃と同時にファージ領へ向かい……空神の遺産を奪うのだ。貴様は、アベルとの相性もいい』


 ラスブートの戦い方は、元の教派の儀式の繰り返しによって得た超人的な体術と、規模は小さいが殺傷能力の高い魔術の二種を用いた、速攻の暗殺である。

 アベルの本領を発揮させずに完封できる見込みがあると、リーヴァイは見込んでいた。


「では、ペンラート殿の引き起こす混乱に乗じてアベルを殺し……槍の聖紋を腕ごと奪い、空神の遺産を回収して帰ってくればいいのですね?」


『……いや、ここは保険を掛けていく。ペンラートが動けば、アベルが確実に対応せざるを得ない。その間に、空神の遺産を確実に奪うのだ。交戦は、避けられなくなった場合のみに控えよ』


「……はい? リーヴァイ様がそうお考えならば、従うまでですが……」


『決して、人間如きに脅えているわけではないぞ。だが、奴は、余の片腕を奪った。この罪、人の身で償い切れぬ重さよ。楽に殺してはやらん。絶望の中で死んでもらう。決して、余が人間如きに脅えているわけではない』


「……槍も、後回しに出来る問題ではないのでは? ならばアベルを捕え、拷問にかけるという手も……」


『ここは確実に、伯爵に対する手札を稼ぐ。アベルはペンラートに任せ、汝は空神の遺産の回収にのみ従事せよ。どの道、遺産さえ押さえておけば、アベルの動きを制御できるはずだ。二つとも手に入らず、あの馬鹿の恨みだけ買うのが一番最悪だ』


「……随分と、警戒なされておりますね。いえ、わかりました。このラスブート、必ずや空神の遺産を手に入れてみせましょう」


『では任せたぞ、ラスブート。この任務が成功すれば、汝を四大神官にしてやる』


「お任せを。元々、婦女子の誘拐は、わたくしめの得意分野でございますので。以前に、空神の遺産は少女だとお聞きしたのですが……少し、私の方で楽しませていただいても?」


 ラスブートが、短く図太い、ピンクの舌を出して口の周りを軽く舐めた。

 唇の舌から垂れた涎を袖が拭う。


『死んでさえいなければ、なんでもよい。好きにやってやれ。アベルには……この偉大なる水の神リーヴァイ様に楯突いたことを、深く、深く後悔させてやらねばならぬ』


【活動報告】

 ドラたま六巻の書籍情報と、アンデッドナイトの書籍情報を活動報告にて更新いたしました!

 ラフ画等もありますのでぜひご確認ください!(2018.2.3)

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