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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~  作者: 猫子
第七章 クゥドル神復活
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二十二話 第二の試練④

「穏便に下がってはもらえないでしょうか? 貴方方は、クゥドル像を避ける手立てを持っているのでしょう?」


 ルーペルの眼鏡の奥の目が、ペテロを睨む。

 探る様な言い方だった。

 ルーペルは、ペテロの余裕の真意を測りかねているのだろう。

 というより、俺にもわからない。この人達にボロ負けして、拘束されていたのではなかったのだろうか。


 まぁ、戦うか、交渉するかの判断は、ペテロに投げておこう。

 元々俺は、ペテロのヘルプとして連れてこられたのだ。


 それよりも俺の関心は、ルーペルとペテロの弁舌戦より、奥の『太陽と(ディン)の遊戯』の方にあった。


 俺は手をワキワキさせながら円盤を見つめていた。

 早く触ってみたい。なんなら持ち帰りたい。

 あれならば部屋のインテリアとしても申し分ないだろう。

 悔し涙を流す収集家の顔が目に浮かぶようだ。

 ちょっと強めのオーテムの警備を付けておこう。

 収集家に持ち逃げされかねない。


 とりあえず、今ルーペルが触らないのであれば、俺が手を出しておいてもいいのだろうか。

 何らかの形でタイムリミットが課されているようだったし、今もこうしている時間が勿体ないはずだ。

 ルーペルも、不安げに『太陽と(ディン)の遊戯』の円盤をチラチラと見ている。


 ひょっとしたら、今申し出たらちょっとやらせてもらえたりするのだろうか。

 頭の中でガシャガシャと円盤を回してシミュレーションしているのだが、幾つかヨハナン神官の残したらしいヒントの意味が分からない部分がある。

 実際触ってみなければ、どうともならない箇所がある。


「私としては、貴方達をこのまま叩き伏せてもいい。ですが、それではお互いに共倒れでしょう。時間のない私達には、手札の見えない今の貴方と交戦を行うという選択肢は、取りにくい。ペルテール卿……貴方はどうやら、私達相手に随分と強気なようですが……ダーラスとて、前回で底を見せたわけではありませんよ。私も、ただの飾りというわけではありませんので」


 ルーペルの目が、俺とメアへと動く。


「マーレン族と……石無しの、ドゥーム族ですか。確かに両種族共、ディンラート王国における戦いのエキスパートですが、二人とも随分とお若いようですね。ペルテール卿、貴方は、彼らに期待を寄せているのですか?」


 マーレン族はどうやら集落の外ではとっくに滅んだとされていた種族であったそうだし、メアは額の魔力結晶がないせいか、ドゥーム族だと当てられたことはほとんどない。

 それを、瞬時に看破した。

 ペテロから聞いた話によれば、彼らはディンラート王国外の人間であるとのことだったが、随分とこちらの事情に詳しいようだ。


 俺はそんなことを上の空で考えながらも、意識の八割は『太陽と(ディン)の遊戯』へと向けていた。

 魔法陣を描く要領で精霊光で文字列や数式を宙へと書き、『太陽と(ディン)の遊戯』の解法を解析する。


「アベル……もうちょっと、お話聞いておいた方がよくないですか?」


 メアが俺に耳打ちする。

 しかし、判断を行うのはペテロだ。

 それよりも俺が『太陽と(ディン)の遊戯』の解法を少しでも進めておく方が有意義だろう。

 別に俺は趣味を率先させたかったわけではないということもなくはなくなくないが、先を見据えて今すべきことを行っているのである、というふうに言えないこともないだろう。


 また壁のヒントを見ようと顔を上げたとき、ルーペルと目が合った。

 ルーペルは目を細め、なんだコイツとでも言いたげな表情を作っていた。

 

「……随分と、忠誠心の高そうな部下をお持ちなことで。さすがはペルテール卿」


 ルーペルが、やや馬鹿にした様に言う。

 それから俺とメアの顔を観察し、小声で呟くように漏らす。


「どうやら、即席の間に合わせの様ですね。そんな連中が、私相手の切り札になるとでも……」


 そこまで言ってから、はっと気が付いたようにルーペルが目を見開く。


「わざとらしいとは感じていましたが……まさか、ブラフで引っ張って時間を稼ぎ、私達と心中することで我々の手にクゥドル神の力が渡ることを阻止するつもりですか?」


 ……クゥドル神の力?

 いや、破壊の杖はヨハナン神官のものだが、クゥドル神から授かったものだという解釈もあるのかもしれない。

 だとすれば、別にクゥドル神の力という呼び方もおかしくはない、か。


「安心してちょうだい。そんなつもりはないわ。ただ……先ほど散々いいようにしてくれたから、ちょっと意地悪してあげちゃおうと思っただけよ」


 ペテロがクスクスと笑う。


「真意はわかりませんが……これ以上、無為に時間を費やすつもりはありません。いいでしょう、私達が格上であることを、最終通告として、しっかりと教えてあげますよ」


 ダーラスが臨戦態勢を解き、指示を仰ぐようにルーペルへと首を回した。


「ダーラス、マーレン族の男の横に、アレを撃て。脅えて、向こうから逃げ出すだろう。どうにも、ペルテール卿や側近の女に比べて、あの二人はモチベーションが低いように思う。そして助っ人が居なくなれば、ペルテール卿も諦めるはずだ。今は当てるなよ、戦闘になれば長引く」


 ルーペルがダーラスに命令する。

 ダーラスは小さく頷き、やや前に出て、数歩分ほど俺達に接近してきた。


 え、俺に何か飛ばしてくるのか?

 話の流れからして当てるつもりはなさそうだが、一応、万が一に備えて、オーテムにオートガードをさせておいた方がよさそうだ。


「ペルテール卿よ、このままでは埒があきません。そこで、互いに一つ技を披露し合う、というのはどうでしょうか? 私の方からは、ダーラスを出します。実力差が明確に分かれば、貴方方も諦めて、大人しく下がってくれることでしょう。それは私達とて同じことです」


 ペテロの目が、ルーペルの前方で構える片腕の鉄仮面尾大男、ダーラスへと注がれる。

 そして、フン、と鼻で笑った。


「片腕じゃない。底を見せていない云々以前に……彼、既に満身創痍に見えるけど?」


「ダーラス、やってやれ」


 ルーペルの言葉にダーラスが頷く。

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