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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~  作者: 猫子
第七章 クゥドル神復活
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九話 破滅の魔術師ルイン②

「い、今の炎球魔術に込めていた魔力が、たったの三割ですって……?」


 ペテロが驚愕の色を目に、伏した姿勢からノワール族の少女を見上げる。

 ノワール族の少女はペテロを無視して、黙って俺へと大杖を向ける。


 ペテロの声を聞いたメアが、馬車からこそっと顔を出し、小さな声で俺へと話しかけて来る。


「アベル……ええっと、さっきの魔術が三割って、どれくらい凄いんですか?」


「そんなじゃないか? わざわざ魔法具を使って、制御している意図がわからない。先天的な魔力障害か何かじゃないかと……」


 杖を握るノワール族の少女の顔が、くわっと険しくなる。


「わー、わー! 声大きいですアベル! だからメア、こっそり聞いたのに! どうせそういうこと言うから!」


「その余裕が、どこまで持つか……試してあげましょう、マーレンよ!  শিখা (炎よ) এই হাত(球を象れ)! 」


 ノワール族の少女が天へと杖を掲げる。

 直径約八メートル程度……先ほどよりも、きっちり三分の五くらい大きな炎の球が現れる。

 確かに今が三割で次が五割という、あの宣言は嘘ではなかったそうだ。だからなんだという話だが。


「骨も残さず、焼き尽くしてあげる! 我が名は、ルイン! 生まれの名は、とうに捨てた! 誰もが私を、破滅そのものだと畏れ、やがてそれが私を示す名となった! 確かに認める。私は、魔術の細部の制御が、生まれつきできなかった。貴方は、マーレンは、小手先の技術に優れているのかもしれないけど……私の魔力は、それごと叩き潰す! 掻き消せるものなら、やって見せて……」


 俺は杖を空に向ける。


শিখা (炎よ) এই হাত(球を象れ)


 俺の遥か頭上に、直径二十メートルほどの炎の球を作った。


「…………て、よ」


 ノワール族の少女が、力なくそう続けた。

 呆然とした顔で、俺の掲げる炎の球を見上げている。

 それからだらりと腕を下げる。ノワール族の少女が象っていた炎の球が、フッと四散して魔力へと戻り、消えていった。

 ペテロも大口を開いたまま、俺の炎の球を見上げたまま顔を動かさない。まるで首まで杭で固定されたかのようだった。


 俺はメアを振り返った。


「な、メア。規模を大きくするだけなら簡単なんだよ。今の倍作れって言われても、簡単だぞ」


「……あ、はい」


 俺はそのまま結界を展開して炎の球を圧縮し、海の方へと放った。

 海が球形に抉れたかのように形が変わり、大きな水柱が上がる。

 それからしばし、俺達の方にも大粒の雨が降り注いできた。


「大事なのは、規模じゃなくて威力と、相手の干渉を受けづらくするようにどれだけ魔術として完成させるかだ。規模が大きいだけでも隙だらけだったら、さっきみたいに簡単な魔術であっさり瓦解させられるし、術式が単純で暗号化もなく、発動が遅ければ、相手に魔法陣を消されたり、最悪の場合は書き換えられて相手に利用されかねない」


「そのぅ……講釈は凄く嬉しいんですけど、また今度別の時に聞いてもいいですか? ほら、あの子……絶対怒ってますよ」


 さすがに、あれだけしっかり差を見せたのだから、もう刃向かっては来ないだろう。

 わかる。俺も小さい頃は、遠慮なく魔力を込めたら思ったよりも威力が出たから、自分に驚いたことがあった。

 ルインとやらも、それで勘違いしてしまったのだろう。

 だが、本当に大事なことはその先にあるのだ。


 ルインはわなわなと身体全体を震えさせたまま、後ろへ下がった。

 顔はすっかり青くなっており、隈の濃い目は大きく見開かれている。

 汗が、だらだらと垂れていた。


「こ、こんなはずじゃ……そんな、マーレンは、技巧派だって……ル、ルーペルに、誰も近づけるなって言われてるのに……ルーペル……」


 ルインが覚悟を決めた様に表情を引き締める。

 だが、まだ顔色は青いままだ。ルインは左手で大杖を持ち、右手を自身の心臓部へと当てて、指に力を込める。


 ルインの手に魔力がこもった瞬間……彼女の心臓部から、パキンと水晶体の割れる音が響く。

 ローブが焦げて、その奥から彼女の素肌と、首の下に大きな魔水晶が埋め込まれているのが見える。

 魔水晶には、大きな罅が入っていた。


「フ、フフ……八年振り。故郷をふっ飛ばしたとき以来! 魔減水晶なしで、魔術を使うのは!」


 ルインが杖を掲げる。

 大きな魔法陣が、辺り一帯に展開される。


 ルインの目に、赤い血管が、びっしりと広がり始める。


「アベル……なんだか、凄いの来そうですけど……」


 メアがやや不安げに声を掛けて来る。

 俺は首を横に振った。


 魔術の行使により身体に変化が現れるのは、その魔力に身体が追いついていない証拠である。

 しっかりと身体を自身の魔力に慣らすため、瞑想やオーテム彫り、体魔力循環といった訓練を行う必要がある。

 それらを怠るからああいったことになるのだ。

 瞑想やオーテム彫り、体魔力循環は、魔力を高めるための修行としても基礎である。

 あんな異変が身体に現れるのは、はっきりと鍛錬不足だ。

 そんな術師の魔術は畏れるに足りない。


「ごめん……ルーペル。でも私! 私! 役目は、きっちり、果たすから!」


 ルインが杖を、地面に突き立てた。

 俺も魔法陣を展開し、すかさず杖を振るう。


পৃথিবী(大地よ) ধ্বংস(破滅せよ)!」


মাটি(土よ) ক্ষয়(変質せよ)


 ルインにほぼ連なる様に、俺も呪文を詠唱する。


 ルインの杖を起点に、大きな、白い円が広がっていく。

 あれは、地面に振動を伝えるための媒体としての役割を持たされた、魔力の塊に他ならない。

 続けて、二度、三度と白い円が広がる。


「ひゅー……かひゅっ……な、なんで……なんで、何も、起きない……?」


「俺が地面を変質化させたからな」


 とんとんと、地面を踵で蹴る。

 ルインの魔術は、地面を振動させるものだ。

 実行されていれば、ペテロとルイン、その他ペテロの部下達は、一人残らず消し飛んでいただろう。

 範囲は、広めに見てざっと直径一キロメートルか。傍迷惑な魔術を行使する。

 この辺り一帯が崩れたら、またラルクの悩み事が増える上に、第一容疑者として俺がつるし上げられることになるところだった。


 俺はルインの魔術の効果が及ぶより早く、適応範囲内の地面にルインの魔術に対する耐性を持たせ、保険に硬質化させておいた。

 ルインは魔法陣は単純な物しか使っていないので、地面の魔力構造の波長を逸らし、実質的にルインの魔力を無効化させることは簡単であった。


「あ、あり得ない……う、嘘……ゆ、夢……そんな……その場に合わせて魔法陣を構築して、広範囲に使用するなんて……」


 ルインが手から杖を取り落とし、ふらりとその場に倒れた。

 俺は杖を仕舞った。

 結局この子は、いったいなんだったのか。


「ペテロさーん、大丈夫ですか!」


 俺が叫ぶと、ペテロが全身をびくりと震え上がらせ、杭で固定された手足を強引に引っ張ってこの場から逃れようとした。


「ひぃっ! ひいいっ!」


 拘束した奴に余ほど恐ろしい目に遭わさせられたのか、どうやらまだ錯乱しているらしい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地上は無事だった。 [気になる点] 可哀想に。 きっとこの小娘のせいね!(真顔) [一言] なんかお守りとかあげれば好感度が上がります。 コレクターさん可哀想に……。
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