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その手に一輪の黒百合を…

作者: 朔-saku-


目をあけると変わらない暗闇…


真っ暗闇の中私は行くあてもなく歩く…

自分が誰か名前も何故此処にいるのかもわから

ないけどいつもみえる小さな光に向かって歩く。

やっとみえたと思えば光は遠のいてゆく…

私以外の人に会ったことはない。もしかしたら

私以外の人は居ないのかもしれない、それでも

あてもなく歩く。ただ歩く。




今日も、真っ暗闇の中を歩く。もう少しで光に届く

所で手を差し伸ばすとなにか壁があるように弾かれ

るはずだった…いつもなら。


えっ…?!



目が眩むほどの光に身体が包まれ…そのあと身体

が一瞬浮き堕ちる…堕ちる…

奈落の底のように暗く冷えた空間に堕ちていく…

光はみえなくなっていく…怖くなって手を伸ばしても

落ちていく…


その時、死ぬときにみると言われる走馬灯のよう

な物が留めなく流れる誰のかもわからない記憶が

駆け抜ける…


黒い影が「クスクスッ」と嘲笑うよに笑っているかと

思えば、綺麗な少女が男性と腕を組んで歩いてる、そ

の影で醜女が泣いていたりピエロが血を流しながらお

どけて笑って此方をみつめてた。小さい男女が笑って

おどっていた。その中に何回もでてきた優しい笑顔と

逞しい掌に差し伸ばされた手があった。

最後には血に濡れた手と倒れている人影。

そして、黒百合。


誰のかはわからない記憶。衣装も言語も違うけれど

何故か見知ったものや懐かしいものがあった。



いつしか、光は闇に消えもうなにもみえない…



嗚呼、このまま奈落の底に堕ちて消えてしまいたい

…私はきっと愛した人を殺したのだろう。

あの記憶が私のならそうなのだろう。


生まれ変わる度に何度も何回もその人を愛し殺したのだ。

許されない罪を繰り返したのだろう…彼はいつも最期は

笑っているのに…私を許してくれる彼を何度も殺してしま

った。



堕ちていく私の瞳から一筋の涙が流れおちた…



「…の上、何処か痛いのですか?宜しければ朕の

主侍医にみてもらいましょう…」


懐かしい愛しい声が聴こえ光の中に吸い込まれて

いく…最初にみえたのは愛しい人の優しい雰囲気とは

似つかない狂気じみた笑みと一輪の黒百合…


「鳥羽様…」


時は巡り私は新月の夜に燈火が消えるのと同時に

愛しい人を刺した…彼も私を刺した…そして血に

濡れた手で私の頬をさわり軽い口づけを交わした。

そして、息を吸い込むと私と彼の距離が無くなる

ぐらいに私を抱き寄せた…そして耳元で「愛してる」と

囁くと私に刺さる短刀を深く突き刺した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


彼女が息を止めたのを確認すると床に横たわさせた。

燈火をつけ彼女をみると白を基調とした着物に赤が

映えどんなトキよりも美しかった。

彼女にまとわりつく帯はまるで鎖のようで嬉しかった。

一生この美しい人は私のものだと思うと優越感に満ちて

にやけてしまう。


「…愛しい人よ。貴女のためならこの我が身朽ちたと

しても本望なのです。たとえ、貴女が私を憎んでも

殺したくても私を愛する運命は変わりません。この

黒百合に誓って絶対に私を愛するのです。」


そう言って冷たくなった唇に触れるか触れないかの

口づけを交わし彼女の横で息絶えた。

2人の手には黒百合が握られていたという…





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