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東方白銀狼 (旧白狼物語)  作者: 水城野
一章 「白銀誕生之章」
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第十三話「いつの間にか神様になってた」

「……は…………木葉」



微かに私を呼ぶ声が聞こえ、私の意識は浮上する。

うっすらと目を開ける。

ぼんやりと板張りの天井が見えた。


ココはどこだろう?


寝ぼけた頭のまま周りを見る。

板張りの部屋の中には、見覚えがあった。紅葉がいた神社――稲守神社だった。そして私はそこに敷かれた布団の中にみたいだった。

起きようかな……でもまだ眠いし……とりあえず二度寝しちゃおう。

布団をかぶり直し、寝る態勢になる。


あれ……ちょっと待って。私、寝る前何してたっけ?


ふと頭の中をその言葉が出てきた瞬間、私の頭に気を失う直前の映像――つまり、村でマコト達と戦い、そして死んだ映像が流れた。

寝ぼけていた頭が一気に覚醒する。

布団から飛び起きた。部屋を見回して山賊がいないことを確認する。

其処で、気付いた。


視点が高くなっていることに。


下を見てみる。

四つん這いではなく、二本の足で立いた。その足は白い毛で覆われてはいない。

前足だったを見てみる。

こちらも白い毛で覆われていなかった。

手も肉球とかがある獣の手ではなく、ぷにぷにしたやわらかそうな、とても懐かしい人の手だった。

ここから推測してみて、いつの間にか人になっていた。



「え、え、どうして!?」



山賊とか、自分の死の感覚とか、考えていることを置き去りにして、大混乱になった。



「あら起きたようね。気分は優れているかしら、木葉?」



どのくらい経ったか突然、後から声をかけられた。

振り返るとそこには、手に桶を持った紅葉が立っていた。

私は、紅葉に自分の身体に起こったことについて聞いてみる。



「も、紅葉! 私の身体が……」

「ああ、そのことね。大丈夫。これまでに起きたことも含めて、説明してあげる」

「えっ、でも」

「座って」

「は、はい」



紅葉にそう言われて、私は冷静になり布団に座らせられた。

決して、紅葉の笑顔が怖かったからではない。決してない。

紅葉はというとどこかから敷物を出してきて、それに座った。



「じゃあ、まずアナタの姿について話そうかしら。木葉。アナタは今自分の姿がどのような感じか、具体的には何処まで分かる?」

「えーと……多分、人型になってること……かな?」




そう答えると、紅葉は頷く。

一時、何かを考えるかのように目を閉じた後、目を開ける。



「ふむ。なら化けて見せたほうが良いわね」



そう紅葉がいうと、どこからか煙が出てきて紅葉の体を包んだ。そして、煙が霧散した後には、そこには一人の幼女が妖艶な笑みを浮かべて立っていた。

着ている服は巫女服で、年齢はみたところ10~11歳ぐらいだった。

白ーーというより白銀色の髪の毛を持ち、頭とお尻からは髪の色と同じ、もふもふとした狼耳と尻尾が生えている。




「ふふふふ。見惚れてるところ悪いけれども、これはアナタの姿よ。まぁ、アナタ自身はもっと可愛らしいけれどもね」



そう言った幼女から発せられた声は紅葉の声であった。

その後の紅葉の話から、この姿は美化などではなく、純粋に私に化けたらしい。そして、この姿は神格化によってできたらしい。それと紅葉の母性本能を思いっ切り擽るらしく、紅葉の雰囲気がいつもとは違って、なんとなくほんわかしていた。

これがカリスマブレイクというものだろうか……?

地味に、いつもとのギャップに驚いた。



「ってそんな事よりも、なんで私が神様になっているの!?」

「そのことをまだ話してはいなかったわね。なら、木葉が気を失っていた間のことも踏まえながら話すわね」



そいうと、いつもの落ち着いた雰囲気になり紅葉は、私に化けた姿のまま、敷物に座りなおした。

……化けた姿のままなんだ



「じゃあ、状況の整理から始めましょう。木葉。アナタは意識を失うまでのどこまで覚えている?」



そう紅葉に問われ、頭の中でごっちゃになっていた情報を整理して、紅葉に話していく。



「えーと確か、トイレ行こうとして、紫にあって、紫から村の危機を教えてもらって、能力開花手伝ってもらって、村に行って、戦って、戦って…………多分死んだの……かな?」



その話を聞いて、紅葉は手を口に当てた。



「……粗方合ってるわね。記憶があるなら私からは今のアナタの現状と、その後どうなったかを話すわ」



紅葉はそう言うと、説明を始めた。



「まず端的に言うと、村は無事よ。ちゃんと山賊は捕まえて、やってきた大宰府の役人たち突き出しておいたわ。今度、正式に大宰府から神社に使いがくるらしいけど。その時になったらわかるわ。

そして、きっかけは置いておくとして、アナタが神格化した理由は、純粋に『村や神人などの人間たちに、信仰されたから』が妥当なところね。まぁたぶん私と同じように妖獣を経由しているから、妖怪でもあると思うけど」



私、信仰されるようなことしたっけ? それに妖怪化って……。

そう言われたけれども、私には信仰されるようなことがどういう意味なのかイマイチ理解できなかった。

私は、村の皆を守りたくて、勝手に助けに行って、マコトを守るために死んでしまっただけであったのに……。



「わざわざ深く考える必要はないわよ」



首を傾げた私をみて、紅葉は元の姿に戻って私の頭を撫でる。



「つまり、アナタがその姿になったのは、アナタが文字道理『命を懸けて』頑張り、村人や友人を救ったことを皆が認めてくれたからよ。だから、アナタは胸を張りなさい。アナタはアナタが守りたかったものを守ったの。だから――――お疲れ様。木葉」



私が紅葉の顔を見上げると、彼女は眼を細め慈愛あふれる表情でそういった。

私も自然と笑みがこぼれた。

守りたかったもの――マコトやアツシたちを守り抜けた。

これは私が、神様になってしまったことなど置き去りにするほど、うれしかった。良かったと思えた。



「…………(まずいわね…そろそろ我慢が出来なくなりそう……)」

「? 紅葉何か言った?」

「なんでも無いわ」


ボソボソと何か言ったが聞き取れなかった。

紅葉はそれを誤魔化すかのように、よりいっそう頭を撫でる。

くすぐったい。

あ、そうだ。紅葉も私が寝ていた間、看病してくれていたみたいだから、お礼を言わないといけない。



「紅葉」

「なにかしら?」

「ありがとう」



私はできる限りの笑顔を紅葉に向けた。

紅葉はうつむき何かを抑え込んでいるようだった。肩が震えている。

そして、ガバッと効果音が付きそうなくらい勢いよく顔をあげた。



「…………もう駄目、我慢できない!!」



その瞬間、目にもとまらぬ速さで紅葉は私を抱きしめた。

突然のことに私は固まってしまう。

だけれども紅葉はそんな私など眼中になく頬ずりしてくる。

あ、紅葉の肌すべすべする…………じゃなくて、首! 首が閉まってる! そして胸が邪魔で息ができない!

色々な原因によって声が出せなくなっている私は、紅葉の腕の中で頑張って暴れて紅葉に私の状態を伝えようとする。が、おかしくなっている紅葉に当然通じるわけがなかった。



「はぁ……最近、癒しがなかったのよね……。八雲は私を式にしようとやってくるし、高天原はそろそろ顔出せとか言ってくるし、近所の天狗たちはちょっかいかけてくるし、ウケちゃんは仕事忙しくて来てくれないし……ああ幸せ……」



色々と溜まっていたらしく普段の冷静な紅葉の姿とかけ離れていた。先ほどと同じように私の話も聞いていなかった。

っていうか、紫は紅葉を式にしようとしたんだ………やっぱり紅葉って後の八雲藍なのかな?

そんなことを考えているうちに、ホールドはどんどんもっときつくなっくる。それに比例するように、呼吸もどんどん困難になって私の意識も段々と遠のいていく。

紅葉はやっぱり気づく様子もなく、私はもうすでに抵抗できなくなっていて、紅葉のなすがままになっていた。

……折角、神格化して生き残れたのに、ここで死んじゃうのだろうか?

そうあきらめかけたその時であった。



「あらあら、盛んなことですわねぇ~」

「!?」



どこからか聞いたことがある声が聞こえ、その瞬間紅葉は固まる。あ、ホールドが緩んでる。

最後の力を振り絞り、もう一度体を動かして私は紅葉の拘束から抜け出すことができた。

あのまま、昇天しなくてよかった。

少しせき込みながら布団に座りなおして、ほっと一息をつく。



「随分災難だったわね。木葉」



斜め上から声をかけられ顔を上げると、スキマから紫が上半身を出していた。

その表情は微笑んでいる。後ろに見える虚空を見つめているはずのスキマ内の目玉たちもなんとなく喜色をはらんでいるような気がするのもそのせいだろうか?

どうやら彼女が声をかけたみたいだった。



「おはよう。紫」

「だいぶ西日はさしているけれどもね。気分は優れるかしら木葉?」

「大丈夫。だいぶ落ち着いてきたよ」

「なら大変結構よ」



紫も私の頭を撫でてきた。

恥ずかしいけれども、なんとなく気持ちいいので撫でられている。



「あら来ていたのね。八雲」

「何もなかったようにはじめようとしているところ悪いですけれど、耳まで真っ赤ですわよ。稲守?」

「う、うるさい。アナタが覗き見していたせいでしょうが」

「あらあら。私は貴女との『協約』道理にこの子を見守っていただけですわよ~。その時にあのウカノ様が勝手に、乙女なことをやっているのを偶々(・・)目撃しただけですわよ~」



冷静さを取り戻した紅葉に対して、紫が煽りまくっている。

こめかみに井形が浮かんでいる紅葉が「こいつ…」とかつぶやいているが、紫が言っていることに筋が通っているせいか反論しようとはしない。

紫はそれを見て、ニヤニヤしている。その表情を見て、紅葉のイライラも加速されていく……

そういえば『協約』とは何だろう? と心の中で首を傾げていると、紅葉は諦めたようにため息をついた。これ以上イライラを募らせても時間の無駄とはんだんしたらしい。

紅葉は私を見る。



「とりあえず、木葉が『協約』について知りたそうな表情しているから、かいつまんで話しましょうか」

「ええ、そうですわね」



え。そんなに顔に出ていたのか……な?

内心そう思っているうちに二人は説明を始めた。



「先ほど説明したように木葉。アナタの今の状態は『妖怪及び神』っていうことは理解している?」

「うん。一応」

「ならいいわ。でも厳密に言うとその『妖怪及び神』の状態の『生まれて間もない』が付くわ。言うならば、アナタはまだ飛ぶこともできない雛鳥ね」

「ふむふむ」

「んで、雛鳥という例えからわかるように、生まれて間もない神や妖怪は、保護しておかないと他の神妖のたちの格好の的になるわ。さらにアナタは元々白子だったこともあって持ってる力の量は多め。余計に狙われる可能性があるわ」

「つまりは簡単に狩れて、尚且つ人間を襲うより何倍も多く力を補給できる相手として狙われる。ということですわね」

「そういうことよ。……でもそこまで動揺しなくても大丈夫よ。木葉」



二人に判るレベルで冷や汗をかいていたらしく、紅葉が心配してくれた。

弱肉強食な世界なのは知ってるけれど、完全におやつ(又は経験値ボックス扱い)されていて微妙な気分になった。

それでも、まだ話はあるようなので冷静になろう。



「だ、大丈夫。自分の現状にちょっと動揺しただけだよ」

「――きついのなら言いなさいね。

 それじゃあ続きを話すわよ。さっき言った通りアナタは現状危険な状態にあるわ。だから私とコイツとマコトの三者でアナタを保護・教育するためにさっき言った『協約』を結んだの」

「内容は、神霊関係は稲守。妖魔関係は私。人間関係及び貴女への奉仕はマコト――というより神崎家かれのいえが木葉を保護・教育してくれるわ」

「まぁ最終目標は、アナタを一人前にすることよ。それまで私たち三者がアナタの後見うしろみになるの」



紅葉と紫がそう説明してくれた。

つまり要約すると、『おやつ感覚で食べられてしまいそうな私に、たぶんこの世の中で最強の保護者たちがついたということ』である。

……なにそれこわい

有難すぎて、また恐ろしすぎてそう思った。



その後、マコトが夕食を持ってくるまで紅葉たちとの話は続いた。

マコトは起きた私を見た瞬間私に抱き付いた。「良かった……本当に良かった……ッ」と目元に涙を浮かべながら呟いている。

とても嬉しかった

『アナタが文字道理『命を懸けて』頑張り、村人や友人を救ったことを皆が認めてくれたからよ。だから、アナタは胸を張りなさい。アナタはアナタが守りたかったものを守ったの。だから――――お疲れ様。木葉』

さっき紅葉が言っていたことが脳裏によぎる。

紅葉、マコト、紫……私のことをこんなにも大切に思ってくれる人たちがいて、私が目覚めるまで待っていてくれた。そしてこれかも一緒にいてくれる。

生きててよかった。そして私は幸せ者だ。




これからも……私は皆の為に頑張ろう。努力し続けよう。この守りたい人たちと一緒に歩むために。この守りたい人たちの期待に応えるために。



感謝で心がいっぱいになった。私は心からそう思った。



「紅葉、マコト、紫」



マコトの腕の中から解放された私は三人がいる方を振り向く。

三人もこちらを見ている。その顔は皆、微笑んでいた。

私は感謝と決意を胸にお辞儀をして言った。



「これからもよろしくお願いします!」

「「「ええ、喜んで」」」



私は歩み続ける。















このお話は、とある小さな小さな白い狼が、この世界という大きな大きな蒼い海原の中でどの様に生きてゆくのか、そして、この世界にどのような波紋を生むのか。

その生き様を見てゆくお話――なのかもしれない。


一章はこれにて終了しますが……この物語は終わりません。まだまだこの話は続いていきます。


間章を数話挟んだ後に2章に入ります。


これからもこの作品をよろしくお願いいたします。

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