第十二話「戦って、失って」
「小説家になろう」よ! 私は帰ってきた!
時は少し遡り、稲守神社。
マコトが一人で村へ向かっていった後、私を含める稲守神社の面々はすぐに村救助のための準備をした。
明日香や神人たちは武具の準備を終え、現在に村へ向けて急行している。
神社に残っている巫女たちは怪我人治療のために、薬草など準備を行っていた。
そして私も結界用、攻撃用の札をいくつか用意して、稲守神社と村の分社を繋ぐ準備をしている。
「あら?」
その時、神社の周辺に張っている感知結界に「何か」大きい力が接触したのを感じた。
まさか今回のことを利用して八雲が何かしてきたのかしら?
奴はどこかで仕掛けてくると踏んでいた為、一瞬警戒したが、感知した「何か」は奴にしては力が小さすぎた。
ならばこれは何かしら?
そこで八雲の可能性を排除した私は、新たな疑問を解決する為に意識をそちらに傾け、感知結界に併設してある探知結界を起動させ「何か」を細小に調べ上げてみる。
探知結界にようと、引っかかった対象は真っ直ぐ村へと向かっていっている。
そこで対象の纏う力が霊力なのに気が付いた。
こういう点から、改めて私は対象を八雲じゃないと判断した。
そして、力の性質が、あの子と酷似していることに気が付いた。
まさかと思い、さらに意識を集中させて、形、大きさなどをより詳しく対象を探知する。
そして、それがあの子――木葉だと分かった。
待って……。前に、あの子の霊力を見たときは、今よりとてもとても小さかったはず、数ヶ月でここまで大きくなることなんて……ということはまさか。
『能力の開花』
その可能性も頭をよぎる。
対象が結界外に出た。
最後の地場所から考えても、あの子の性格から考えても、これから向かうのは村だとわかる。
背筋が凍うぃ、汗が頬を流れる。
能力の開花は、いわば博打と同じで、開花と同時になにが起こるか分からない物。
特に力、あの子で言う霊力を使う。
マコトは、元々体が強い方なので、もし能力が開花しても大丈夫だが、あの子は白子だ。
霊力が他と多いと言えども、とても体が弱い。今までは身体強化で何とかなったとしても、能力開花後で霊力を使い果たしたとしたら、あの子は軽い傷でも死んでしまうかもしれない。
すぐに準備を終えて、助けに行かなくては、あの子が危ない……!!
準備を終えた私は、すぐに出発しようとした。
だが、そうは出来なかった。
感知結界に新たに複数の「何か」が接触したからであった。
展開していた探知結界で探ると、それは天狗だった。それも私と仲が悪い近くの山の天狗たちである。
まっすぐこちらに向かっている。
ああ、こんな時に!
すぐに追い払える。
しかし、それまで木葉やマコトが危機的状況にならない保証はない。
だけれども、放っておけば、神社だけではなく、こちらへ避難中の女子供にも、被害が出るかもしれない。
この天狗たちを放っておく方が危険だった。
こうなれば、奴らを先に叩いて、救援しに行くしかない。
体動かすのは嫌だけど、速さが要。やらなくちゃ!
木葉、どうか無事でいて!
私は、巫女たちに指示を出した後、札を握り、天狗たちを速やかに迎撃すべく、私は神社から飛びたった。
「木葉さん!」
どうやら間に合ったみたい。
マコトの言葉が聞こえて一安心する。
「こいつ、離れろ!!」
噛みついた山賊と思われる男が腕を振われ、噛みつきを止めて飛び退いた。そしてマコトの所にすぐさま移動する。
……気持ち悪い。口の中が鉄の味がしてヌルヌルする……。
さらに口の中に大量に入ってきた血をいくらか飲み込んでしまったみたいで、気分が悪くなってきた。
ああ、能力(更にチートっぽい)がされたとか、妖怪の賢者――紫と友人になれたりともうヘブン状態だったんだけど、さっきの血のせい正直吐き気がする。一応味は鳥や獣の血とは違った味がした。
「助けに来てくれたんですね。ありがとうございます」
「白い狼……ああ、稲守さまのとこにいらっしゃった」
マコトの所に確か……守衛さんだっけ?が合流してきて、納得すような顔で呟いた。
山賊たちは私を警戒してか様子を伺っている。
取りあえず私は頷いて肯定する。
村に着くまでに女子供たちの大半が稲守神社へ向かっていたのを見た事ことやこの場の状況からマコトたちが時間稼ぎをしてくれてたみたい。
やっぱり守衛さんは守ることを専門にもしてるみたいだし、マコトもよく一緒に鍛えたりしてたから強いんだろうなー。でも二、三十人近くいる山賊たちに二人で足止めしていた普通にすごいと思う。
さらに二人とも木の棒だし。
実は超人の域に入ってたりするのかな?
「木葉さん、門番さん。多分も少しで村の人たちや神社の神人たちが準備を整えてやってくるはずです。だからもう少し持ちこたえられますか?」
私と守衛さんが頷く。
来る途中に武装した神社の人達が村へ向かっているのが見えた彼らのことだろう。
彼が来るまでそう時間はかからないと思う。
でも、村の男たちはまだ準備中なのでもう少し時間稼ぎの必要がありそう。
マコトはそれ見て笑うと、すぐさま構える。
先程の会話が聞こえたのてあせったのか山賊たちが攻撃を再開したからだ。
山賊の攻撃をやすやすと避け、私たちはカウンターをしながら敵の数を減らしていった。
しばらくたち、周りを見渡すと山賊が半分ぐらいに減ってきていた。
マコトは、今ちょうど、相手をしていた山賊の首筋に一撃を与えて、気絶させた。
しかし、敵の攻撃が深めにあたったのか身体から血が出ている。命に別状はないように装っているが動きが、さっきより鈍くなっている。
そして、守衛さんも無傷ではないが、今の所、かすり傷や軽い打撲などだけなので、目立った傷はない。
私は、自分の中の霊力がなくなってきてしまったのか、力がさっきよりも出てこなくなって気がする。
それでも、マコトよりはマシな状態だと思うので、戦いに残ることにした。
できるなら、マコトには、早く離脱して欲しいけどね……マコトの性格的に多分しないと思うけど
思いながら、目の前の盗賊に体当たりをする。
霊力が足らなくなってきたとはいえ、能力開花のせいか、ただの体当たりでも相手をひるませるぐらいの威力はあった。多分、身体的にとても強化されてるみたい。
そして、ひるんでいるところを、守衛さんか、マコトが攻撃して、倒す。そんな感じだった。
「すまんマコト、遅れた! 助太刀に来たぞ!!」
そこに、戦闘準備を終えたアツシ達がこちらに走ってやってきているのが見えた。
様子を見る限り、彼らはそのまま山賊たちに突撃をしかけるみたい。
そして、半数近くが倒された上にこちらに援軍がきたということで、山賊たちも勝ち目なしと思ったのか何人かが逃げ始めた。
その様子を見て、どうにか危機は切り抜けたみたい、と思い胸を撫で下ろす。
しかし、周りを見てみると、逃げている山賊は別に残って戦っている山賊もいる。
逃げた人たちは大宰府の役人に捕まえてもらうとして、今は残っている山賊を倒そう。
「うわっ!?」
「よし捕まえた! 頭ァ! 今です!」
動き出そうとしたしたその時、マコトの突然の声が聞こえた。すぐに振り返ると、倒れた山賊に足首をつかまれ、バランスを崩したマコトが見えた。
次に、そのマコトに斬りかかろうとしている山賊の姿が見えた。
マコトは防御できない。
そう思った時には、私は全力で駆けていた。
そして、斬りかかろうとしている山賊に、渾身の体当たりを喰らわした。が、そこまで効果が無かったのか、耐えられる。
そして、体当たりでバランスを崩した私に刀を振り下ろした。
瞬間、振り下ろされる刀がゆっくりに見えた。でも避けることは出来ない。
刃は首の近くに当たった。
ジーンとした痛みと共に、体から力が抜けるのを感じた。
衝撃と共に土の上に落ちる。しかし、すぐ誰かに抱えられた。
ぼやけ始めている視界から、マコトが抱えていることが分かった。
良かった。マコトは助かったみたい。
身体を動かそうとしたが、ほぼ動かなかった。
「……さん、……さ…! …っ……て………い!!」
マコトが一生懸命になにかを言っているが、なぜか、聞き取れない。いつの間にか、痛みは感じなくなっていた。それに、眠たくもなってきた。
そこで分かった。
私は死ぬと。
嫌だ、まだ死にたくない。生きたい。
そう思ったが、段々と瞼も重くなり、意識が引っ張られる。抵抗はできない。
私はなす術もなく意識を失った。
最期に何か光が見えた気がした。
「木葉さん! 木葉さん! しっかりしてください!!」
木葉さんが身を挺して、作ってくれた隙を使い、木葉さんを斬った山賊に一撃を加えた。
そして、門番さんと、アツシ達は残りの山賊を取り押される。
僕は自分を代わりに斬られてしまった木葉さんを抱えて、必死に呼びかける。
木葉さんの傷は首に近いところにあり、血が大量に流れ出ていた。
段々と心の臓の音も小さくなり、瞼も閉じようとしている。
このままでは死んでしまう!
頭を働かせ、なんとかして食い止める術を探す。
紅葉様は……神社にいらっしゃる。間に合わない。
医術を心得ている者……これも、近くにいない、間に合わない。
傷口を抑え、これ以上、血が出ないようにする。これしか手段がなかった。
しかし、血は止まらない。
そうこうしている内に、無情にも瞼は閉じ、心の臓の音も聞こえなくなり始めた。
今、この時、木葉さんの命は尽きようとしている。
そう思うと、目の前が真っ暗になりそうになる。もう神に祈ることしかできなかった。
「どうか……どうか……お願いします。この子を助けてください……」
木葉さんを強く抱き、奇跡を信じ、必死に神に祈った。
命を懸けていいとも思った。
いきなり、木葉さんの身体が光り始めた。驚いて思わず木葉さんを落としそうになったが、しかっかりと握りなおす。
いつの間にか近くに来ていたアツシ達も驚いて見ている。
光は徐々に強く、神々しく、勢いも形も大きくなる。
光は最終的に、目の前が真っ白になるくらいの光になり、周囲を包んだ。
そして、突然その光は消えた。
光が消えった後、自分の腕の中に残ったものを見て、自分も周りも言葉が出なかった。
其処――木葉さんがいた腕の中には、白銀の髪を持つ十ばかりの稚児が眠っていたのであった。
皆様、お久しぶりです水城の士官です。
これからは、投稿ペースを上げていこうと思いますので、これからも宜しくお願い致します。
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