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第9話 もはやチートじゃね???

 

 3カ月間、騎士の称号を持つ冴子さんにみっちりと訓練を積まされた。

 それはもう命がいくつあっても足りないような真剣での訓練だ。

 その結果………。


「まさかここまでになるとは思わなかったよ」


 冴子さんの手にはいつもの剣が無い。

 いつも持っている剣は冴子さんから1m右側の地面に落ちている。

 そう、ようやく俺は冴子さんから剣を奪うことができたのだ!!!


 今まで何枚のスーツに穴を空けられてきたか分からない。

 そのたびにミルフィさんに殺されそうになったかは分からない。

 そんな中でようやく冴子さんから剣を奪えたのだ。心が躍ってしまう。


「ぃやった!!!やっと俺も冴子さんのように強くなった!」

「うふふ、そうだね。ようやく4割ぐらいまで来たね」

「……へ?」


 冴子さんは満面の笑みを浮かべながらスーツの上着を脱ぎ、腕に嵌めてあったアンクルを投げ捨てる。

 そのアンクルが地面に落ちるとドンッと見た目では考えられないような音が鳴る。


 えーっと……あれですか…漫画でよくあるパターンですか…。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!え?え?そんなアンクルって重く」

「あれはそんなに重くないよ。それよりも私の本来の武器はこっちだから」


 冴子さんはそう言いながら近くに置いてあった木箱の中から鞘を取り出す。

 そして、その鞘を手に取り、何度か深い深呼吸をし、構える。

 その構えは明らかに自らのテリトリーに一歩でも入った物を一瞬で狩る居合道のようだ。


「い、いやいやいやいや……」


 さっきまで殺気をバンバンに醸し出していた冴子さんから殺気が感じられない。

 しかし、距離を詰める事は俺の身体が全身で拒否反応を起こす。

 一歩でも冴子さんの間合いに入ればヤラれる…。


「はい!そこまで!冴子、京也さん、訓練は終わりです」


 パンっ!とミルフィさんが手を叩く。

 すると、冴子さんの威圧感がスゥと消えた。


「冴子、京也さんを殺す気ですか」

「あそこで私の間合いに入ってきているなら遠慮なくいってたよ。よく我慢したね、三戸くん」

「いや、普通の人でも行けないですよ。特に日本人なら居合も知ってますし」

「確かに日本人には警戒されちゃうんだけどね。私たちは警戒されることが必要なんだよ」

「警戒されちゃ相手は倒せないですよ?」

「私たちはお嬢様を守ることが最優先。敵を倒すことじゃない。警戒させられるっていうことは敵はなかなか攻撃しかけれないってこと。つまり、お嬢様に危険をさらす確率が減るということ」

「なるほど。でも、俺は居合いなんてできないですよ?」

「あはは、別に居合いじゃなくても良いんだよ。君は常にお嬢様の隣に居るんだから、それに合った物を身に付けられればいい」

「自分に合った物…なんなんでしょうね?」

「さぁ?それは君が考えることだよ」

「でも全く分からないですね…」


 自分は今まで何の格闘技もしてきていないのだ。

 そもそも、ここに来て初めて剣ってものを手にして操っていたのだ。まぁ攻撃としては一切使えていないけど。主に防御のみ。

 ……ってことは、俺の使うのは剣でいいんじゃないか?


「三戸くんに剣は使え切れないと思うよ」

「えぇ~…せっかく決めようと思ったのに…」

「君は防御だけしかできないじゃない。剣は防御に向いてないよ。そもそもすぐに取り出せない時点でNGだね」

「ってことは…拳銃とかですか?」

「日本でそんなの使えないよ。剣もそうだけど。銃刀法違反になる」

「んじゃ素手しか無いじゃないですか…」

「あはは、その通りだね」


 冴子さんは楽しそうに笑いながらミルフィさんから受け取ったタオルで汗を拭く。

 結局、俺が使うのは素手なのか…。

 でも、俺は自慢ではないが今まで喧嘩というモノをしたことがない。

 人を殴ったことさえ無いのだ。

 そんな奴が素手で何ができるんだろ…。


「冴子、京也様の特訓はこれからお嬢様に頼むのはどうでしょう?」

「リアナ様かぁ…うん、そうだね。互いのトレーニングになりそうだし、私も少しは楽ができそうだしね」

「リアナ?リアナってあの小さいお嬢様ですよね?」

「…その発言は危険だって事はこの家の皆が知っているのによく口にできるね、三戸くんは」

「へ?…ぐはぁっ!?」


 腹部に強烈な衝撃が走る。

 まるでトラックにぶつかったような衝撃で俺の173cm、63キロという平均的な身体が宙に浮いた。

 そして、俺の身体を浮かせた人物はこの家の最高権力者であり、俺の小さなお嬢様であるリアナだ。


「今の言葉を訂正しなさい。そうじゃないとこのままあの世の扉の手前まで行かせる」


 腹部に強烈な衝撃を与えられ、地面に崩れた俺をリアナは見下すように睨んでくる。

 まさか、ここに居るとは思わなかった…。


「い、今のは冗談で…」

「冗談でも言っていいことと言ってはいけないことがあるってこの前言ったよね」

「…ご、ごめんなさい。我が主人」

「次、言ったら本気で天国手前まで送ってあげるから覚悟しておきなさい。ミルフィ、お腹が空いたわ」

「え、ええ。すでに準備はできています。お嬢様」

「それじゃ行きましょう」


 リアナとミルフィさんは家の中へと入っていく。

 冴子さんは苦笑いをしながら、倒れている俺に手を差し伸べてくれた。


「リアナ様は英才教育を受けているから、普通に強いよ」

「…あり得ない、あんな小さいのに」

「力自体は三戸くんの半分も無いんじゃないかな。ただ、人間の急所ってのをよく知っているし、力の使い方も理解している。あと、どういう風に突けば人を浮かせられるかってのも熟知している。だから、君みたいな大人でも飛ばせれる」

「なんつー漫画みたいな…」

「あの子は規格外だから」

「冴子さんでも勝てませんか?」

「あはは、あの子をあそこまで強くさせたのは私だよ?」

「………どんだけ強いんですか、あなた」


 少し追いついたつもりだったのに…。

 リアナでさえあれだけ強いのだ、この人が本気になればきっと山と地球とか破壊できるんじゃないだろうか…とバカなことを考えながら立ち上がり、冴子さんに支えてもらいながら家の中へと入っていった。



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