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第5話 夢?

 

 これは俺の夢だろうか?

 いや、夢ではない。実際に起きてしまっている出来事なのだろう。


 俺の目の前には、つい1ヶ月前に3000万円という大金の小切手を渡してきたミルフィさん、イケメン野郎のキルシェという男が座っている。

 ただこの前と違うのはミルフィさんがメイド服では無く、スーツを着ている事だろう。


「えっと……もう一度言ってもらってもいいですか?」


 先ほど説明されたがいまいち理解できなかったのでもう一度話をミルフィさんに話してもらうようにお願いする。

 ミルフィさんは俺のお願いを快く受けてくれ、もう一度分かりやすく説明してくれた。


「結論から申しますと、今回、三戸京也様にはリアナ様の専属執事となっていただくためにお願いに参りました」

「……はい?」

「前回、リアナ様が京也様の所で一時的ながら匿っていただいた際、リアナ様は非常に楽しかったと仰っておりました。リアナ様は元々心の不安定なお方でした。

 そのため、今回の日本訪問の際に、爆発してしまい、私たちから逃走してしまいました」

「それで俺の所に迷い込んで」

「はい。その件に関しては大変ご迷惑をおかけしました」

「いえ、それは別に良いんですけど…。それと今回の件がどうしてこう繋がるのかよく理解が」

「はい。それはリアナ様の心が非常に安定なさっているからです」

「それは自国に戻ったからでは?」

「確かにそれはあります。しかし今回、リアナ様は日本で過ごすことになり…」

「そこがいまいちわからないんですよ」


 どうして、逃走までして大問題になってしまった日本でリアナが過ごすのか分からない。

 あの子も日本で住みたいとは言わないだろうし。


「それは王様の意向でありまして。ここ日本はリアナ様が小さい頃に一時的に住んでいた場所でもあります」

「それは知ってる。でも、リアナは良い意味でも悪い意味でも日本では知らない人が居ないほどの人だよ。そんな状態で日本に住む方が心境的に悪い。それは少し考えれば誰だってわかることだ。

 つまり、それ以外の理由があるってことでしょ?ましてや、リアナは王位継承第2位の人材。

 そんな重要人物をあえて自国から離してまでする理由を知りたい」

「………」


 俺の問いにミルフィさんとキルシャはお互い目を合わせ、どこまで話すかをアイコンタクトしているような感じをする。

 その様子を俺は見ながら"これは相当やばそうかも…"と思いながら彼らの口が開くのを待つ。

 そして、少しの間、静かな空気が俺たちの間に流れ、沈黙を破ったのはキルシャの方だった。


「私から説明しよう。これは最重要機密情報だ。これを聴けば君はもう私たちの依頼を拒否することは認められない。それでも聴きたいと言うなら私が話そう」


 ……これは物凄くズルイ言い方ではないだろうか。

 彼らの話を聞けば、今の俺の生活は無くなる。

 俺の生活が無くなるということはこの祖母の思い出が詰まっているお店を閉じると言うことになるのだ。

 それだけはしたくない。

 しかし、心の半分近くはすでに彼らの話を聴きたいと思っている。

 その理由としては、リアナがなぜ日本に来なければならなくなったのか。という事。

 だいたい考えればわかるのだ。リアナがどうして日本に来なければならないのかという理由なんて。

 だけど、俺がリアナの専属執事になった所で彼女の役目になるのか?ということは分からない。保障が無い。


「………理由は知らない。だけど、もし俺がリアナの元へ行けば、リアナの役に立てるのか?」

「リアナ様がそうおっしゃって」

「リアナは関係ない。俺は貴方達の意見が聞きたい」


 リアナが俺を選んだのは日本に住む際に、自分の事を偏見なく見る人間が欲しいという心から来るものだ。

 だから、偏見なく見れる人物であれば俺でなくてもいい。そもそも、あの時は対等な立場だったから俺も対等の話し方をしていただけど、主人と執事となれば俺もその関係に相応しい行動を取る事になる。


 俺の質問に対して、最初に答えたのはキルシャ。


「正直に言うなら、私は役に立たないと考えている。理由は君が考えている通りだ。お嬢様は自分に対して偏見の無い目で見てほしいというただそれだけの理由で君を選んでいるにすぎない」

「だな。ミルフィさんは?」

「私は…京也様はリアナ様の役に立つと考えます」

「その理由は?」

「リアナ様が京也様を選ばれた理由はキルシャさんの仰った通りだと思います。しかし、リアナ様もそれは理解しています。それでもリアナ様は京也様を選ばれた。今まで自分の意見を言わなかったリアナ様が初めて国王様に対して自分の意見を」

「それはあの時から1ヶ月しか経ってないから、俺と居ればあの楽しさがもう一度ある。と考えたからでは?」

「リアナ様はそのような考えをする方ではありませんよ。小さい頃から見てきているので保障します」


 ミルフィさんは冗談ではなく真剣に言っている。

 ミルフィさんの横に座っているキルシャさんはミルフィさんの話を聞きながら少し何か物を言いたげな顔をする。

 だけど、ミルフィさんの言葉で覚悟は決まった。


「わかりました。ミルフィさんの言葉を信じます。お話の方を聞かせてください」

「覚悟はできているのか?この話を聞けば君はここを離れなければならない。申し訳ないがこっちは君の事を色々調べさせてもらった。だから、この家の事も知っている」


 キルシャさんは真剣な顔で俺に言う。

 だけど、これはこの人なりの最終忠告であり、優しさなのだろう。

 俺がここを如何に大切にしているかを知っているからこそ、こう言ってくれる。


「確かに俺にとってここは大切な場所。2人は知っていると思うけど俺は今まで人と共同作業のような事はしてこなかった。だから、人に頼られたことも無かったんだ。

 そんな俺だけど、リアナは俺を頼ってくれた。それが嬉しいんだ。

 それに、リアナは俺と同じような人だと思うんです。もちろん、俺と違ってリアナはたくさんの人に頼られてきた。だけど、俺と同じような感じがする。だから、俺は話を聞くよ。

 祖母も分かってくれると思う」


 祖母は元々そういう人だったし、一緒に暮らしていた時も、この店を守っていた時も、子供のために何かをする人だった。

 そんな気持ちを俺も引き継ぎ、この店を継いだし、来てくれる子供のためにできるだけの事はやったのだ。

 だから、今度は祖母の気持ちでは無く、自分の気持ちで人のために何かをしたい。


「本当に良いのか?」

「ああ。お願いします」


 キルシャさんの確認に頷き、彼の話す内容に耳を傾ける。

 そう、ここから俺はただのニートでは無く、ミノリア王国 王位継承第2位のリアナ・ミノリアの専属執事という超絶名誉職へとなったのだ。



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