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第3話 はじめての駄菓子!

 

 お湯が湧くまでの間、少し賞味期限の切れてしまったお菓子の中からお茶に合いそうな物を探す。


「そういえば、どうしてそんな日本語が達者なわけ?」


 何個かお菓子を取り出して、テーブルの上に無造作に置きながら、お嬢様に聞く。


「小さい時に習ったから」

「それにしては普通に話せるよね。外国人独特の少し変な話し方でもないし」

「…昔、日本に住んでいたから」

「ふ~ん。あちっ。ほれ、お飲み」


 いつまでも部屋の端っこで小さくなっているお嬢様をこっちに来るように言い、お茶を差し出す。

 お嬢様が興味を引いたのはお茶では無く、テーブルの上に置かれている駄菓子だった。


「……」

「食っていいよ。賞味期限はちょっと切れてるけど食っても大丈夫」

「…これ何?」


 お嬢様が手に持ったのはイライラしてんじゃねぇよ。というお菓子。

 今ではほとんどの人が知っているお菓子でも海外から来た人には変なモノなのだろう。

 ネーミングもいまいちよくわからないし。


「食べてみなよ。おいしいよ」

「……はむ」


 毒を飲みます!と言った感じに覚悟を決めて、口の中に頬り込む。

 そして、しばらく噛むのを躊躇していたが、次第に目の色が輝き始めた。


「お、おいしい!!!」

「ほら、一杯あるから食べていいよ」

「うん!」


 お嬢様は次々とテーブルの上に置かれているお菓子に手を伸ばしていき、1時間後には見事、全部食べ切ることに成功なされた。

 あれだけ食べたら後々胸やけが来そうな感じだけど…まぁ若さでなんとかなるだろう。

 しばらく、俺はTVを見ていると速報が入る。

 その速報の内容は来日中のミノリア王国、王位後継者第2位のリアナお嬢様を探している。という内容だ。

 つまり、その全国放送で探されているお嬢様は俺の横で、俺の入れたお茶を飲みながらマッタリとしている人物である。


「…キルシャのやつ」


 うまい棒を口に加える前に悪態吐く。

 緊張感無さ過ぎるだろう…と思いながらも、チャンネルを変えていくとほとんどの局が番組を中止して特番を組み始めた。

 そして、逃走中のお嬢様らしからぬ、綺麗なドレスを着た笑顔の写真が大きく映される。


「…本当にお嬢様だったのか」

「…ごめんなさい。迷惑かけて」

「いや、別に良いけど」


 しばらくニュースを見ているとお嬢様がどんな人なのかという情報が次々と映されていく。

 こうなればプライバシーなど全く関係ないだろう。

 このテレビ局曰く、リアナお嬢様はミノリア王国の王家の中でも優秀なお方らしい。

 話せる言語は8つ。天才少女と世界で言われているらしい。

 そして、今回の訪問理由は日本との交流らしい。

 お嬢様ってのは色々大変らしい。


 しばらく、隣に居るお嬢様の事は知りたかったので見ていると、テロップに16歳という文字があることに気が付く。


「……じゅ、16ぅぅ!?!?」

「な、なによ…」

「いやいや、16でそのから。いてぇっ!何すんの!?」

「貴方は大変な事を言おうとした。人には言ってほしくない言葉っていうのがある」

「いや、そりゃわかるけど…お前、俺より1つしか変わらないのか……お、主に身体的な意味で可哀そ、いてっ!」


 バシバシと人の背中が叩くお嬢様。

 とてもじゃないが、今TVで言われているような人には思えない。

 というか、16歳には見えない!

 しかし、腕の力はそれなりにあるらしく、背中が物凄く痛い…。


「わか、わかった!もう言わないから」

「……いいわ。どうせ皆思ってることだもの」

「なら、何故俺を」

「近くに居たからよ」

「お嬢様気質だな。いや、お嬢様だから良いのか」

「ふん。それよりもそろそろ帰るわ。これ以上ここに居たら貴方が大変なことになるもの」

「お嬢様がそういうなら別に良いけどさ。これだけこの放送されたら悪い奴らがあんたを狙うと思うよ?」


 これだけ国を動かすほどの重要人物だ。

 今頃、警察や自衛隊などが総動員して探しているに違いない。

 そして、その影では彼女を人質にしてお金を取ろうとするバカもいるかもしれない。

 まぁそういうバカは問答無用に命を奪われるなんて思っていないだろうが。

 お嬢様は俺の言葉の意味を理解したのか、少し考え始める。


「まぁ俺はTVなんて見ない。お嬢様の事は知らない。ただ迷子を保護していた、って形にしてくれればいいよ」

「それでもあなたは危険だと思うわ」

「それならそれでいいでしょ」

「楽観的ね」

「まぁ失う物は人よりも少ないからね。この駄菓子屋ぐらい」

「ご両親は?」

「俺、捨てられたし。祖母も死んじゃった。それでニートだから友達も居ない」

「にーと?」

「あぁ、勉強も働きもせずにぐーたらしてる奴のこと」

「ふ~ん、ろくでなしね」

「そ、ろくでなしなの。だから、別に君がここに居ても迷惑なわけじゃない。居たいだけ居ればいいよ」

「キルシャがここまでしたんだもん。私もどうなるか…」


 お嬢様にとってキルシャという人はあまり好きな相手じゃないらしい。

 キルシャという言葉を口にした途端、身体中から不安オーラを出す。

 そんなお嬢様を見ながら、俺は漫画のように抱きしめることはできず、空になったお茶受けにお茶を入れる。


「大丈夫だよ。そのキルシャって奴がどんな奴か知らないけど、君は王女さま候補なんでしょ?」

「……そんなの文字だけよ。私なんか操り人形だもの」

「ふ~ん、王族も大変なんだな」

「そうでもないわよ。私は言われたことをするだけだもの」

「言われたことだけする操り人形がこんな所に居るわけないだろ。8つも言語話せるくせにバカだな」

「ばっ!?バカとはなによ!!!」

「そうやってすぐに感情的になる。それがバカって言うんだよ。でもまぁ、君はそういうのが似合ってると思うよ」

「なっ!?」

「くくっ。今、すっごいイケメンな発言したよな。忘れて忘れて、俺のキャラじゃなかった」


 なんか凄く恥ずかしい!!!

 お嬢様は「ばっかじゃないの!」と言いながらお茶を飲もうとして「熱いっ!?」という芸人顔負けなリアクションをしている。

 俺はTVで言われているお嬢様の印象と目の前にいるお嬢様の印象の違いを見ながら、やっぱりこっちの目の前にいる方のお嬢様の方が良いな。と思った。



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