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第13話 見えないところほど大事?

 

「へぇ、ここが日本のデパートっていう所なのね」

「おい、ちょろちょろするのはやめて。言っておくけどリアナだとバレたら大変なんだから」


 物珍しそうな目で辺りをキョロキョロと見ているリアナに注意をする。

 しかし、一番注意しなければならないのはリアナでは無く、ミルフィさんかもしれない。


「京也様、あちらの服を見ましょう」

「ちょ、ミルフィさん。あなたが暴走したら抑えれませんって」

「あ、す、すみません。でも私もリアナ様も久しくこういうところに来ていないので、もう楽しくて楽しくて」

「ミルフィ、あっち行ってみましょ」

「はい」


 リアナがミルフィさんの手を取り、服売り場の方へ歩いていく。

 そして、俺はその後ろを付いていく。

 周りの人から見たらどんな感じだろう?

 外国人の姉妹に振りまわされる友人って辺りなんだろうか?


 現在、俺達はリアナの別荘から約3時間離れた所にある大きなデパートに来ている。

 事の発端はリアナのこの一言。


「服が欲しい。下着が欲しい」


 全く年頃の女の子とは思えないようなこの発言に俺の顔が赤くなったのは言うまでもない。

 しかし、確かにリアナの言うことも分からないわけじゃない。

 リアナは身体のわりに16歳と言う年頃の女の子。

 新しいファッションにも興味があるだろう。もうすでにここには数カ月籠りっぱなしなわけだし、ちゃんとした息抜きも欲しい所だ。


 俺はまずミルフィさんにリアナのお買い物計画を相談した。

 すると、意外とすんなりと「そうですね、息抜きしましょう。冴子には私が言っておきます」と言ってくれ、そこからはトントン拍子に進んでいった。

 ちなみに、リアナもミルフィさんも容姿のスペックが非常に高い、リアナの顔は日本にバレているなどなどの問題は変装という形で何とかなっている。


 リアナは綺麗な金色の髪から黒髪のカツラを被らせ、ネットで買った普通の服を着させる。

 ミルフィさんにも同じように変装させれば、傍から見れば日本好きの海外から来た姉妹に見えるのだ。


「京也。こっちの服とこっちの服、どっちがいい?」

「どっちでも良いんじゃない?お金なら大量に」

「日本の男ってどうしてこういう時に気の利いた事言えないの?」


 心底残念そうな顔をするリアナに対して俺は何も言えない。

 そんな事を言うなら俺をこんなところに連れてくるなよ…と言いたいところだけれど、冴子さんは少し離れた所から周りを警戒しているし、ミルフィさんは自分の服に夢中。

 俺はリアナの専属執事というなの最終防壁なのだから近くにいるのは俺しかいない。


「京也はこういう所来ないんでしょ?」

「そうだなぁ、女性服なんて買う男は気持ち悪いだろ?」

「そう?私は気にしないけど。まぁ下着を付けるのはちょっと嫌ね」

「下着なんて3枚セット100円ので良いんじゃないの?」

「……今もそんな安いの履いているの?」

「いや、ミルフィさんにこれを言ったら“これで1000円以上する物を買ってきてください”って1万円渡されて言われたから、ネットで買った奴」


 あの時のミルフィさんの顔は今でも覚えている。

 完全に引いた顔だった。あそこまでガチで引いた顔も初めて見るぐらい引かれた。


「そう。もし今そんなのを履いていたら女性下着を履かせていた所よ」

「そんな見えない物に拘ってもなぁ」

「見えないところだからこそ、その人の本当の価値ってのが見えるのよ」

「ふ~ん、そんなもんなのかなぁ」

「そういうものなのよ。これとこれ、買うわ。ミルフィは?」

「ミルフィさんならもう単独行動してるけど?」

「そう」


 リアナは大したことじゃない。と言いたいようにカゴの中に服を入れて、レジの方へ行く。

 そして、外国人設定なのか英語で買おうとする。

 しかし、店員さんは英語が分からない人が多いので、そこで俺が出てくるわけだ。

 まぁ俺も英語をスラスラできるほどじゃない。これは演技みたいなもの。

 俺がお金を払い、店員さんにお礼を言って、店を出る。


「あははは、さっきの店員さんの慌て方は面白かった」

「冴子さんにそうしろって言われてるとは言え、趣味悪いぞ」

「しょうがないでしょ。面白いんだもの。日本って所は本当に面白い所ね。日本語以外の言葉となると凄い拒否反応を見せるんだもの」

「そりゃ島国だからなぁ」

「それよりも見なくていいの?あのミルフィの慌て様」


 リアナの指差した方を見ると、必死に俺達に合図を送っている。

 そういえば、ミルフィさんも日本語が話せない設定なんだっけ…。あれだけ、店の中で日本語を使っていたのだから今更な感じはあるんだけど…。

 珍しく慌てているミルフィさんをリアナと2人で見ていると、冴子さんが苦笑いをしながらミルフィさんの方へと歩く。

 そして、冴子さんは素早く会計を済ませる。


「酷いです。京也様もリアナ様も」


 買い物袋を手に少し怒ったような顔をしたミルフィさんが俺たちの所へ来る。


「俺はリアナから離れられないですし、リアナはここに居ようって言いましたから」

「ちょっと、私そんなこと言ってないわよ」

「リアナ様!」

「私が言う訳ないでしょう。確かにミルフィが慌ててる所は面白かったけれど」


 クスクスと笑いながらそんなことを言うリアナに軽く文句を言うミルフィさん。

 本当に姉妹のようにしか見えないだろう。

 しかし、そんな平和なお買い物計画も突然、終わりを告げた………。



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