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第二話~嫉妬をするならば、道は堕ちるしかありません~

「じゃあ、ごめんね。綺音あやね

「ううん、いいよ」

 こちらをすまなさそうに、何度も振り返りながら、花梨かりんは帰っていく。私が大好きな木野きのくんと一緒に……。


 一緒に木野くんを好きになったのは、最初頃。二人で一緒に告白したら、綺音だけオーケーで、私はフラれてしまった。正直ショックだった。ずっと二人で差し入れをしたりしていたのに、何で私だけフラれてしまったんだろう。

 花梨には平気と言ったが、全然平気じゃない。花梨はいつも私の欲しいものを奪っていく。アクセサリーとかもそうだし、人にしてもそうだ。

 何とか、ぎゃふんと言わせたいが、花梨が気になっているもう一人の人はモテモテの生徒会長だ。こんな地味な私が付き合うのは無理だ。ましてや、あまり目立たない木野くんにフラれたのだから。

 帰り道をとぼとぼ一人で歩く。何か、方法は無いだろうか。私も、幸せになりたい――。

 その時、目の前に見たことのない建物があった。

「こんなの、あったっけ……?」

 真っ黒な建物。看板を見ると、占い専門店「ブラック・シャドウ」とある。

 ブラック・シャドウって、都市伝説で有名な……。いつか、聞いたことがある。何でも願いを叶えてくれるって。

 私は気付いたら、足が勝手に進んでいた。


「すいません」

「はい?」

 奥の方に進んでいくと、綺麗な女の人がいた。怪しい雰囲気を纏っているが。

「ここって……噂の」

「あら、人の噂って、怖いわね。まぁ、でも本当よ。何でも願いを叶えてあげる」

「本当に?」

 声が震えてしまう。

「ええ、貴方友達に好きな人を盗られたのね?」

「何で…」

「水晶玉で、お見通しよ」

 ふふっと、楽しそうに笑うその人。綺麗なんだけど、どこか不安を感じさせる笑みだ。私はぞくりとした。

「貴方には、これを差し上げるわ」

 女の人が差し出したのは綺麗なネックレス。ハート形で、すごく可愛い。

「うわぁ……」

「そのネックレスは、貴方を美人にさせる効果があるの。貴方が努力をしなくてもよ。ただし期限は一週間。一週間経ったら、帰すこと。それが守れる?」

「守れます!」

 そんな夢のような話があるのだろうか。私が努力をしなくても美人になれるネックレスが。そうしたら……木野くんも生徒会長も、他の人も、私の虜になるんだ。花梨もさぞ悔しがることだろう。

「では、さようなら……」

 

 気付くと元の帰り道に戻っていた。だけど、手の中の重みが私を勇気づけてくれる。私は顔が少しにやけるのが自分でも分かった。


 家に帰り、早速ネックレスをつけてみた。その瞬間、眩しい光が溢れ、目を開けると、

「うわぁ…」

 そこには、パッチリと二重になった瞳の、肌や唇が綺麗な私がいた。

「やっぱり…、効果があるのね」

 この顔なら……、落ちない男はいないわ。

「あははは!!」

 その部屋には綺音の笑い声が響き渡った。



「おはよう」

「えっ、綺音!?」

 次の日、私は花梨を待ち、新しい顔を見せた。

「どうしたの!?整形とかしたの?」

 必死になって聞いてくる花梨がバカみたいで笑える。これは私だけが特別なのよ。

「ううん。日々の努力よ」

「……そう」

 花梨はつぶやいた。きっと、悔しいのよね。

「なぁ、アレ、ホントに鷹野たかの?」

「うそ!全然違うじゃん!!」

 周りの声が聞こえる。みんな私にびっくりしている。これだったら、木野くんも……。


 次の日から私の人生は変わった。みんなが私に注目をしている。告白もされた。ネックレスの期限の一週間も過ぎたけど、私はもうこの顔じゃなかったら、生きれない。

 もちろん、生徒会長の多田たださんとも付き合うことになった。木野くんも告白してくれたけど、私は振った。これが目標だったのだ。好きにさせて、振る。これが原因で花梨と木野くんも別れた。私の人生最高すぎる。

 その日は多田先輩とデートだった。待ち合わせの場所で来るのを待っている。

「先輩、まだかなぁ」

 そんなときに突然に事故は起きた。トラックが突っ込んできたのだ。

「えっ」

 逃げる間もなく、綺音はかれた。

「大変だ!女の子が轢かれたぞ!」

 大勢の人が見ている中で、綺音はトラックに押しつぶされ死んでいた。

「うわぁ……。もう生きてないなぁ。それに、顔がぐちゃぐちゃだ……」


「期限を守らないからよ」

 凜は遠くの方から見ていてつぶやいた。

「まぁ、いいんじゃないの?これで大勢の人の注目を浴びれるんだから……」

 凜は笑うと、遠くの方に消えていった。

 

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