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一 二号艦

艦魂・神龍編シリーズ、久しぶりの外伝作です。

タイトルの通り、大和の妹である戦艦『武蔵』の艦魂、武蔵を―――そして大和との、姉妹の二人を主軸に物語は紡がれます。

彼女たち姉妹の絆、戦い、その運命をご覧ください。

 まだ名前がない頃。彼女は第二号艦と呼ばれていた。

 世界最大のフネとして生まれ、そびえ立つ黒い城の周囲を多くの機銃と高角砲を備え、海に浮かぶ要塞と化したその艦は、三六〇度どこから見ても戦艦いくさぶね

 壮大な迫力が満ち、艦が航走するたびに大きな白波が海面に立った。

 第二号艦は、己の武器と言えるべく巨大な砲身を掲げた。ゆっくりと旋回を始める。そして、その砲身の周囲、甲板の上には測定機が幾つか、さらにモルモットが入った檻が多数、置かれていた。

 檻の中に閉じ込められたモルモットたちは、キィキィと鳴きながら、檻の中をちょろちょろと動いていた。ある一匹は檻の柵をかじり、ある一匹は耳をぴくぴくさせながら、周囲から響き渡る音と振動に注意を向ける。

 そんなモルモットたちが入った檻のそばに、スッと影が現れた。

 キキ…と鳴くモルモットは、檻の中からその影をさす相手を、つぶらな瞳で見上げた。

 「………ごめんね」

 影の根に立つ一人の少女。彼女は一言、小さく呟いた。

 モルモットが柵の間から鼻を覗かせ、くんくんと動かす。そして、目の前に立つ少女を見据えた時、異様な匂いを感じ取った。

 それが、そのモルモットの最期の感覚だった。

 次の瞬間、砲身から火を噴くと、たちまち火山の噴火に似た大音響と地震が艦全体に響き渡り、特に甲板上には、一瞬にして衝撃波が襲いかかった。

 それは骨を軋ませ、内臓が喉元まで出てくるような、鼓膜がビリビリと破れる勢いで震えるような、そんな衝撃だった。

 甲板上に多く置かれた檻の中に入っていたモルモットは全て、内臓を露出させ、眼球を飛び立たせていた。

 同じく甲板上に置かれていた測定機には、人体が到底堪えられることができないような数値が示されていた。

 主砲発射の試験を終えた第二号艦は、軍港へと戻る舵を取った。その上で、一人の少女は檻の中で、生前の面影を残さない無残なモルモットの死骸を見下ろした。

 少女は無言のまま、艦が港に戻るまで、その場に立ち尽くしていた。

 第二号艦はその後、全ての公式試験を終了した。今まで作業に従事していた作業員の姿も日に日に少なくなっていく。

 一方で第三号艦が戦況に伴い、航空母艦への改造が決定した頃、第二号艦の名前が正式に決定し、その艦名が軍部内で広まろうとしていた。

 

 第二号艦―――――名を、『武蔵むさし


 世界最大の戦艦、日本が建造した最後の戦艦となる、戦艦『武蔵』が大日本帝国海軍に君臨した。

前々からご要望の声を頂いてはいたのですが、実現に随分と時間が経ってしまいました。その件に関しまして、お詫び申し上げます。

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