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スペック無自覚令嬢が婚活を始めた結果、隣人の年下イケメンに溺愛されるようです。

作者: 夏目ナナセ
掲載日:2026/08/11

拙者、両片想い大好き侍と申す者……またの名を平成の夢主てんこ盛り設定大好き侍と申す。


 マンションの隣人、ルイといつものように食卓を囲む。

 ルイと出会ったのは半年ほど前で、隣からの大きな爆発音に驚いて声をかけに行ったのが交流の始まりだった。

 

緊急事態と思った私が勝手にドアを開けると、ルイは「はぁ!?あんた誰だよ!?」と目を丸くして威嚇しながら、「どこの奴だ!」「なんでここが分かった!?」などととにかく怒鳴り散らしてきたのだが、部屋の惨状に言葉を失った私はこの部屋をどうにかしなければという使命感に駆られ、構わず足を踏み入れた。

 

 それからなんだかんだで一緒にご飯を食べる仲になり、あの生意気な態度もなりを潜め、一応年上の私に敬語を使ってくれるようになったのだが――。


「マナ〜明日も仕事〜?」

「そーだよ」

「仕事多すぎじゃないですか?また押し付けられた?舐められてんじゃねーんすか?」


 だいたいいつもこんな感じのタメ口混じりの敬語で、小馬鹿にしたように絡んでくるが、出会いの時から考えると大分進歩している……はずだ。

 ルイは呆れた目を遠慮なくこちらへ寄越し、「そもそもお人好しすぎるんですよ。俺の時だって――」とブツブツ言いながら私の作った料理をかき込んでいる。

 

「どこの部署ですっけ?」

「え? 魔導企画部だけど……」

「あ〜」

 

 ルイはもぐもぐと口を動かして黙り込む。

 私がどこに勤めているか知らないのにいきなり部署を聞いてくるルイを不審に思ったが、このままじゃ仕事の話になりそうだったので、意を決して本題に入った。


「仕事はもういいんだ……私ここ引っ越すの。家の為に結婚しようと思って」


「はぁ!?」


 ルイはタダでさえ大きな目を更に見開いて固まる。噛んでいたご飯を一気に飲み込んで水を一気にあおった。

 しばしの静寂の後、ルイが恐る恐るといった様子で口を開く。

「……え?マナって貴族なんですか?」

「うん、まぁ」

「道理でねぇ……」

「貴族っていっても子爵家の三女だから結婚出来なきゃほぼ平民なんだけどね。現に今も平民という形で普通に働いてるし」

 明るく笑い飛ばしながら付け加えたが、ルイはそんな事はどうでもいいようで、血相を変えて私の両肩を掴んできた。


「け、結婚って!相手はもういんの!?」

「……これから父にお見合いを頼もうと思ってる。出来るだけ爵位の上の方の方が父も安心するだろうしとりあえず頑張ってみる」


 まるで私が結婚するのが困るかのような態度のルイに淡い期待を抱きつつも、何か言われる前に一気に喋り倒す。

 

 こうして婚活することに決めたのはルイが原因だった。


 ――ルイは、恐らく一般人ではない。

 

 身体には数多の傷。腕にびっしりとある刺青。部屋にあった大金。最初の爆発音や異臭、その後のお尋ね者らしき言葉の数々――。

 いつも暇人なルイを、初めはただの無職と思っていたのだが思い返してみるとおかしな事ばかりで、私は1つの結論に至った。


 ルイは絶対裏社会の人間だ!!!


 とにかく絶対に好きになってはならない相手。

結婚は自由にしていいと言われてはいるが、優しい父も流石にこれは許してくれないだろう。

 もうほんの少し手遅れだが、本気で好きになる前に離れる。これ一択だ。


 しばらく何か考え込んでいる様子だったルイがやっと視線を合わせたかと思うと、矢継ぎ早に質問をしてきた。

「……貴族だから平民とは結婚できない?」

「うーん出来なくもないと思うけど、恋愛結婚でもないのにわざわざ平民の方を選ばなくてもいいかな……貴族から探すつもり」

「恋愛結婚じゃないなら条件結婚ってことですか?どんな人がいいの?」

「え〜と、出来たら歳が近い人で、王宮勤めの騎士様とか魔術師様とか官僚とか、とにかく地に足が着いた人がいいかも」

「中央勤めがいいってことですか?」

「いや、うーん。あまりに地方だと家族と会いにくくなるからなぁ〜うちの領地王都から近いし」

「見た目は?なんでもいいんですか?」

「そりゃ……かっこいい人なら嬉しい」


 そう言いながら私はルイの顔をチラリと見る。

 

 純白のサラサラな髪。艶やかな光沢を持つ髪は鎖骨まで伸び、今のような食事時には大抵ハーフアップにしている。

 アーモンド型のスッキリとした目元。黄金の瞳に白いまつ毛がかかり、神秘的だが儚さとは無縁の力強い眼光を宿してる。鼻筋も通った小顔で、パーツの配置も完璧。

 身長も高く、着痩せするのか見た目では分からないがなかなかの筋肉でスタイル抜群。

 

 ——要するにルイはかなりのイケメンだ。


 そんなイケメンが両肩に手をついたままの近距離にいる。

 ルイは「ふーん」と言いながら顎を突き出したまま見下すように目線を下げ、私の顔を見て何やらじっくり考え込んでいた。

 口を開いては閉じを数回繰り返し、まるで何かを言おうとしているが決心がつかない様子のルイに何を言われるのか怖くなる。

 

 高望み過ぎだろ!と笑われるのか、お前の顔じゃ無理だろと言われるのか、どっちしろそんなことを言われたら耐えられない。

 この沈黙を破るべきは私かもしれないと、咄嗟に口を開いた。


「まぁ贅沢言ってらんないけどね! 私こんなだし! アインフォード子爵家のご威光が何処まで効くか――」


「は?アインフォード?」


 肩に触れているルイの手がビクリと跳ねる。

 結婚すると言った時よりも驚いている様子に頭を傾げながら、「え、うん。マナ・アインフォードです」と改めてフルネームで自己紹介した。

 

 ルイはどこか遠くの方を見つめたかと思うと、目をギュッと閉じ天を仰ぐ。

 そして絞り出すように、「……とにかくじっくり選ぶといいと思いますよ。1年とか2年とか……しばらくは釣書だけ見てたらいいんじゃないですか」と言って私から離れた。

 

 その日からルイは家を空けるようになり、夕食を共にすることはなくなった。



***



「えー!!会長が本社の研究室で直接研究されるんですか!?」

「ああ。後これ絶対秘密だけど、会長しばらく行方不明だったらしい」

「え!?それ大丈夫なんですか!?だって会長って、国に四人しかいない王宮魔導師じゃない」

「大丈夫じゃないから秘密なんだって。なんか知らないけど、雲隠れしてたのが不思議なくらい今やる気に満ち溢れてるから邪魔すんなよ」

「部長〜あたしをなんだと思ってるんですかぁ!」


 会長が復帰して本社で研究しているらしい。朝からその話題で持ち切りだった。

 とはいえ私にはなんの関係もない。独身の会長を狙っている女性社員が気合を入れて化粧直しをしていたのでトイレが混んで迷惑だったくらいだ。


 いつも通り黙々と企画書と睨めっこしていると、突然肩に衝撃が走った。

「まだ終わんないの? あたしが頭に入れる時間考えてる? まさか、頭に入れられないまま発表してバレたらいいと思ってないよね?」

ぶっ叩かれた肩の痛みに顔を顰めていると、「何その顔? なんか文句あるわけ?」と睨まれる。

「フリルさん……いえ……そんなこと」

「家名で呼んでくださる!? あんたみたいな平民とは違ってあたしには家名があるんだから」

 

 彼女はフリル・ラブランス男爵令嬢。父親が事業で大成功して爵位を得た成り上がり貴族だ。

 

 私の方が爵位が高いのだが会社では平民として働いているので、こうして当たり前のように彼女の仕事を肩代わりし、ストレスのはけ口にされる。

 面倒ではあったが今更貴族ぶっても信じてもらえるか分からないのでそのままにしていた。私は社交界にも出ないので彼女が知る機会はおそらくない。

 

「はぁーほんと気分悪い。せっかく白虎様が近くにいるってのに」

「白虎様?」

 思わず口から出た疑問に、フリルさんは目を丸くして私を凝視してくる。

「あんた――ほっんと!信じられない!これだから芋女は……疎いんだから」

 フリルさんの企画書をまとめるので忙しく、そこまで興味なかったのだが、フリルさんは丁寧に説明してきた。

「この国には四人の王宮魔導師様がいるじゃない?あんたでもそれくらいは知ってるでしょ?」

「ああ……はい」

「その御四方が四神の特徴にそっくりだから巷ではそれになぞらえて呼んでるのよ」

「へぇ……」

赤い長髪を炎が揺らめくように靡かせている炎の魔術師を朱雀、全身の魔術刻印がまるで蛇の鱗のように見える植物の魔導師を玄武、目が覚めるような青い瞳を持つ水の魔導師を青龍――そして、白髪で光の魔術師である会長を白虎と呼んでいるらしい。

 フリルさん曰く、最年少で王宮魔導師になった白虎様は四人の中でも最大の魔力量を誇る天才で主要都市にある大結界は白虎様が開発したらしい。

 そしてなんといっても最大の特徴はイケメンだということ。どこに行ってもキャーキャー持て囃されてまさにアイドル的存在――なんだとか。

 

「少し前に夜会でお会いしたんだけどホントにもうカッコイイ〜!」

「あーそうなんですね」

気持ちよさそうに喋りだして止まりやしない。

仕事を急かしてきたのはフリルさんなのに邪魔するのもフリルさんとはこれいかようか。

私はバレない程度にから返事をし、必死にキーボードを叩く。

 

「だから、研究開発部にいく用事があったら絶対あたしに言って。抜け駆けなんて許さないから」

「はぁ……抜け駆け?」

よく分からないことを言われ、私は顔をあげる。

何故か私も白虎様のファンということになっているようだ。

 先程白虎様のファンでない女などいないと豪語していたので、フリルさんの頭の中では、女=白虎様のファンという方程式が成り立っているのだろう。

 

「まっあんたじゃ無理か! だってすっごいブスなんだもん」フリルさんはアハハハと高らかに笑う。

 

「なぁに、その馬鹿みたいに分厚いメガネは? 芋臭いおさげ頭は? 同じ空気吸ってたらこっちまで芋になっちゃいそ〜」

 私は顔を上げたことを後悔した。フリルさんの馬鹿にするような視線が私の顔を無遠慮に這っていくのを感じ、再び企画書へと向き合う。

 

 言われなくても分かっている。私は容姿が良くない。

 幼い頃、四人の兄弟全員に「マナは顔を隠すべきだ」と言われたのだから。なんでも顔を見られると大変なことになるらしく、それほど私の顔は酷いのかと昔は酷く落ち込んだ。

 母は昔、傾国の歌姫と呼ばれていた絶世の美女で、兄弟全員かなり美形なのだが、何の因果か私だけこの有様だった。


「ぷっ、そんなに落ち込まないでよ。あんたにもいい人現れるって!」

「だといいですけどね」

 私はフリルさんの印鑑を探しながらから返事をする。私のデスクにはフリルさんの印鑑が常備してあった。

 見つけて手に取り向きを確かめていると、フリルさんが

「へぇ?あんた恋愛に興味あったんだ?」と面白いものを見つけたかのようにニヤニヤと笑っていた。

 

 しまった返答をミスってしまった。

 婚活をすることを知られたら馬鹿にされるに違いない。だが、変に誤魔化しても余計怒らせるだけだろう。どうせ言わなければならない事だ。この際言ってしまおうと口を開く。

「興味……ではないですがそろそろ結婚適齢期もいい所なので家に帰って探そうかと。上司には話を通してますが、私、今月末で退職するんです」

「はぁ!?今月末!? それってもうすぐじゃないのよ!! 」

 

 意外にも婚活に触れられることはなかった。

フリルさんにとっては退職の方がインパクトがデカくて私の婚活を気にする暇もなかったらしい。

 フリルさんは甲高い声を上げて私のデスクに乗っていた卓上カレンダーをひったくる。指でいちにいさんと残り日数を数えると「早く言いなさいよこのウスノロが!」と激しく怒り出した。


「えっと……すみません」

「この仕事誰が引き継ぐのよ!!」フリルさんは私が手に持っていた企画書をひったくりデスクへバシバシと叩きつける。私が押し付けられていたフリルさんの企画書だ。

 

 ――えっと……貴女ですよ?


 脳内には確かにその言葉があったはずなのに、フリルさんの顔を見ていると不思議と霞んでいく。戦意喪失。


「引き継ぎも出来ないなんてほんっっっとカス!」

 フリルさんはそう吐き捨てると、企画書を持ったまま離れていった。

 嵐が去ってほっとする。これで関わるのも最後だろう。

 

 遠くの方で「へスティンく〜ん♡ あのね? この企画なんだけど〜」という猫なで声が聞こえる。

 

 

 ***



 仕事はあっさりと止められた。

 特に惜しまれることもなく、送別会を開かれることもなく、まるで明日も来るかのような軽い感じで皆「お疲れ様でした」と声をかけてきた。

 フリルさんはもう私のことなど眼中にないようで、へスティンくんに仕事を押し付けようと媚び売りに勤しんでいた。

 あまりにも何も出来ていないフリルさんにお節介を焼いたのがいけなかったか――フリルさんの成長の機会を奪ってしまっていたことに今更気づいた。


 だから、ルイに対してもお節介を焼きすぎるのを止めようと思った。

 

 私はもぬけの殻の部屋を見渡した後、外に出て鍵を閉める。隣をチラリと見て、一歩足を伸ばす。

 相変わらず気配のしない部屋だ。良く耳をすましても物音がしないので、恐らく今日も居ないだろう。

 一回バッタリと鉢合わせたが、美しい顔に擦り傷を作っていて何やら物騒ごとに首を突っ込んでいるらしかった。

 

 やはり反社――距離を取るべき相手なのだ。

 自分にそう言い聞かせてルイの部屋の前から立ち去る。

 

 ルイは私に部屋を片付けて貰わなくても大丈夫だし、夕飯を作ってもらわなくても大丈夫だ。

 私がこの部屋から引っ越したらもう接点はなくなる。それでいい。そうしなくてはならない。


 冷静な頭とは裏腹に痛む胸を無視して――でもやっぱり無視しきれなくて、じわじわと溜まる涙をこらえることが出来なかった。

 引っ越す日は事前に言っていたのに、ルイは会いに来てもくれない。


 

***


 

 実家に帰った私はそれはそれは大層甘やかされた。祖父母にはもちろん、年の離れた末っ子だからか父も母も私をまだ子供だと思っているに違いない。

 私には二人の兄と二人の姉がいて、全員結婚しているので、今家にいるのは長男のシュタレイとその嫁アメリアちゃんと子供。

 ――そう、その子供、今年15歳になるメロウにさえも甘やかされているのだから本当に救いがない。


「マナお姉ちゃん、ほらあーんして?」

「あはは……はい、あーん」

おねだりに負けて、メロウが持つスプーンからスープを飲む。

 食べさせてもらわなくて大丈夫なんだけどなとなんとも言えない気持ちでいると、兄が「マナ全然食べてないじゃないか。少し痩せたか?」と私の好きなパンをこちらに寄せてきた。

「いや、コルセットが……」

 兄が「ああ」と納得した顔になり、隣のアメリアちゃんへ視線を送る。

するとアメリアちゃんが「お母様〜!コルセットのせいでマナちゃんご飯食べられないって!」と母に声を掛ける。

 母が侍女へ声を掛けそうになったところで、すかさず割って入る。

「あ、いや、大丈夫。食べれるから!」

 私のしょうもないことが伝言ゲームになるのを阻止出来、ふぅと椅子に背をつける。

 

 いつもこうなのだ。私が何をしていただの、何が好きだの、どこに行きたがっているだの、何を見て笑っただの――本当にしょうもないことがこの屋敷中を駆け回るのだ。

 そして家族使用人全員に甘やかされる。

 これだから実家は嫌なのだ。自立したくて一人暮らしを始めたことを思い出した。

 そもそもどちらかと言うと世話を焼く方が性に合っている気がする。


 そんなことを考えて紅茶を飲んでいると、目の前の席のメロウと目が合った。

「本当に可愛い。お姫様みたい」

 メロウの形の良い翡翠の双眸がうっとりと細められ、口角が上がる。

 確かに今の私はお姫様みたいなドレスを着せられているが、断じて私自身がお姫様ではない。

 ラメが輝く淡い水色のドレスに、毛先だけ緩く巻かれた金の髪。大ぶりの花のイヤリングにネックレス、メガネも取られてメイクまでしっかりされている。

 家の中でこんなに着飾る必要性を感じないのだが、久しぶりに帰ってきた私に着せるのが嬉しいのか、母が手ずからコーディネートするのだ。父もどんどん新しいドレスやアクセサリーを調達してくるので着なくちゃ勿体ないし、されるがままになっている。

 

「……お世辞をありがとう。メロウはちょっと会わないうちに凄い大人になったね」

「え〜? お世辞なんかじゃないよ? 俺本当のことしか言えないし」

「ははは……またまた」


 いったいメロウは誰に似たのだろう。私はシュタレイ兄様の方をチラリと見る。

 兄はThe堅物の真面目人間だ。こんな歯が浮くようなセリフを言えるタイプでは無い。見た目はいいのに怖いんだから損をしている、そんなタイプだ。幼なじみのアメリアちゃんがいなければどうなっていたことか。

 メロウは兄の見た目そのままに、甘い言葉を吐くのだからさぞかしモテるに違いない。


「ねぇ、結婚するってホント? 俺達五歳しか変わらないし俺にしない? 卒業するまで待ってよ?」

「え!?」

 

 メロウからの突然の求婚に目を白黒させていると、アメリアちゃんが助け舟を出す。

 

「コラ! 何言ってんのメロウ!マナちゃんは従兄弟じゃなくて叔母なのよ?結婚出来ないでしょう!」

「でも歴史上、東方の王族とかは姪と結婚してた事実もあるしさ」

「また、わけの分からない屁理屈を……とにかく!それは王族の話でしょ! うちは無理よ」

「おじい様が王様に言えばいけると思うんだけど……」

 

 メロウの言うおじい様は私の父のこと。何でも、父と王様は学生時代からの親友で仲がいいらしいが、いくらなんでもこんな馬鹿げたことを頼めるはずもない。

 

「あ!カトレア叔母様でもいいじゃん!王太子妃なんだから。ね、マナちゃんやっぱり俺と結婚しようよ」

 メロウは机に身を乗り出して上目遣いでこちらを見つめてくる。追い打ちをかけるように「ね?」と首を傾げると、耳に掛けていた長めの金髪がサラリと揺れた。


「あ、いやその……」

 なんて断ればいいのか口ごもっていると、それまで黙っていた父が口を開く。

「お前のような未熟者にマナをやれるわけなかろう」

 

「はぁー!?!? 大器晩成型なの俺は! これからビックな男になる予定だから!」

「とにかくお前にはやれん」

「じゃあどんな人とならいいのさ!」


「……そうだな」

 父は顎に手を当て視線を上に向ける。

「まずは、家柄……いや、包容力……」

「もーう!あなたったら!何も決まってないんじゃない!」

 母が困ったように頬に手を当てる。

「でも本当に自分で相手を決めなくていいの? うちはみんな恋愛結婚でしょう?家のためになんて考えなくていいのよ?」

 私を気遣う母の言葉がグサッと刺さる。クリーンヒットだ。兄や姉達のように恋愛が出来たら苦労しない。

 

 長男のシュタレイ兄様は幼なじみのアメリアちゃんと幼い頃から純愛を育んだし、次男のオウル兄様は若干遊んだ時期もあったものの、同じ医療魔術師の子リス系男爵令嬢と職場恋愛の末に結婚。

 長女のカトレア姉様は剣聖のプリンセスと呼ばれるほどの剣客で、学園内で王太子殿下の護衛をしていてそのままゴールイン。

 次女のミルキィ姉様は当家の執事と恋に落ちて駆け落ちしかけたが普通に認めてもらい結婚――。

 

 は? 皆物語の主人公か?? 羨ましすぎるんだが。


 私もルイと――と一瞬意識が飛びかけたが何とか戻ってくる。あれは地雷だ。せっかく離れたのだから忘れるべきだと思い直す。

 

私にはいい人がいないからそっちで進めていいと言うと、じゃああの方とか、いやあっちの家のだとか盛り上がり出す。

 ひとしきり唸った父が、「この国で一番の英雄じゃなければマナはやれん!」と言い何故かみんなが賛同した。

 華やかな姉達と違って、私なんてもらってもらえるかも分からないというのに親バカが過ぎる。

 お姫様みたいと言われても勘違いしない程度には自分を客観視出来ている。このままでは私は高望みしていないのに、両親のせいで高望み勘違い女に仕立てあげられてしまう。

 

「恥ずかしいからやめてよ……普通の人でいいから……」

「じゃあ俺で良くない?」「コラ、メロウ!」

 コントのようなやり取りに小さく笑っていると、父が衝撃的な一言を放った。

「ゴホンッ。とにかく今度開く夜会でいい人がいたらすぐ言うんだぞ。パパがなんとかしてみせるから」


 ――はい? 夜会? 聞いてないんですけど!?


 

***



「ねぇ、聞いた? アインフォード家のお姫様がとうとう社交界に出るそうよ」

「ええ、招待状が来たわ。しかもあれだけブロックしていた婚姻の申し出を解禁してるって言うじゃない」

「公爵家の嫡男が、今の婚約者と婚約破棄したって言うじゃない? あれお姫様狙いらしいわよ」

「あぁ〜本当? 大波乱ね。でもアレでしょ?婚約者の条件って——」

 二人の令嬢は顔を見合せると息を揃えて言った。

「「国一番の英雄!!」」


 

 ――へぇ……。


 情報を集め終わった男は、目が覚めるような青い瞳を眼帯をつけて封じる。


「ラタ様、シェンルイ様がお戻りです」

 使用人に声をかけられて振り向くと、白髪の男、シェンルイが大きなため息と共に部屋に入ってきた。

 

「よぉ! シェンルイ」

 ラタがシェンルイの肩を叩くが、シェンルイは相手にすることなく外套を脱ぐと、すぐに魔導書や魔道具の散らかった机に向かい合う。

 

「何? 僕忙しいんだけど」

「つれないなぁ〜最近やたら張り切ってるらしいじゃないか、どういう風の吹き回しだい?」

「別に」

「今月のデカイ魔物討伐、全部シェンルイが引き受けたんだって? 縛られたくないからって受けなかった叙爵の件も受けるって言うじゃないか」

「ああ」

 ラタは目の前のこの男をどうやってからかおうか、あらゆる方向から算段をつけてはニンマリと笑みを作る。

 

「何で急に気が変わったんだい? ん?」


「別に何でもいいだろ! 気が散るから出てけよ!」


ラタは、シェンルイの鋭い睥睨をじっくり受け止めて、溢れ出る感情そのままに口角を釣り上げた。

 

「ハッハッハ! 確かに何でもいいか! じゃあな! 未来の国一番の英雄殿!」


 シェンルイはその言葉にバッと顔を上げ扉の方を見たが、ラタは既に姿を消していた。


「チッ……青トカゲが! 分かってるなら邪魔すんじゃねぇ!!」

 

 すると遠くの方から声が聞こえた。

「ハハハッ! 可愛い白猫の鳴き声が聞こえるな!」

 

 シェンルイが怒りにまかせてあとを追おうとすると、またラタがふざけた声音を響かせる。

「あ、そうそう。お姫様の夜会、開かれるの今月末だよ」

「は!?」

「間に合うといいね、英雄様♡ クッハハハ! じゃあな!」

 


***



「いやはや、本当にお美しい。良縁に恵まれますことを心より願っております」

「レバン大公、ありがとうございます」


 ……えーただいま、超スーパーお世辞大会の真っ最中です。

 アインフォード子爵家で開くかと思ったら、王家主催なんだもの。そりゃあの手この手で褒めまくりますよね……。


「こりゃ、姉さんめちゃくちゃ張り切ったな」

久しぶりに会った次男のオウル兄様が、そう呟いて私の肩を叩く。隣にはお嫁さんのハンナちゃんもいて、私達はぺこりと頭を下げ合った。

 

「オウル兄様……私もう恥ずかしくてたまらない……」

「確かにちょっとシスコンが過ぎるかな」


 オウル兄様が会場を見渡して呆れたように笑う。私も乾いた笑い声をあげそうになるのを必死にこらえた。

 

 どこがちょっとなのだ。どう頑張ってもちょっとに収まる範疇じゃない。


 王太子の生誕祭に使う、王家のメイン舞踏会場。シャンデリア、空調、広さ、何を見てもこの国一番の会場だろう。そして、詰めかけている客人は、この国の主要な家ほぼ全部。護衛も多いし、食事も一流だし、あきからに格が違う。

 表向きには王妃様の庭園の夏の花宴となっているが、みんな知っている。

 

 これは私の婚活会場だと!!

 

 だってそもそも、花宴なんて春しかやってなかったもの!!

 誰だっていきなり夏の花宴もやるって聞いたら何事だと思うだろう。しかも花宴の参加者は例年女性が多かったというのに、なんで夏の花宴は男性が多いんですか?

 それはもちろん私の婚活会場だから……。


 心の中でセルフ回答しつつ、自嘲気味にドリンクを飲み干す。

 ただでさえ恥ずかしいのに、私はもう二十歳。他の令嬢なら学生時代に婚約者がいて当たり前なのに、この歳になって王太子妃のカトレアお姉様に世話をしてもらっている始末。

 周りの突き刺さる視線、ヒソヒソと交わされる密談。

 その全てが私の心に大ダメージを与える。

 

「あの、オウル兄様。私少し席を外すね……」

「え? 大丈夫か? 人酔いした? コルセット? ヒールが痛いのか?」

「あわわ、た、大変……! 私ハイヒールかけましょうか!」

「兄様も、ハンナちゃんも心配し過ぎだよ! ちょっと一人になりたいだけ!」


 なおも付いてこようとする兄様夫妻を振り切って、人気のない方へ歩く。

 一応主役だから長くは席を外せない。だが戻りたくもなかった。心を落ち着かせようと懐に忍ばせておいたメガネを掛けると、椅子に座ってぼんやりと思考の沼に沈んだ。


 お母様も、カトレアお姉様も、とにかく沢山の人と顔を合わせて少しでもいいと思う人がいたらと教えてと言っていたが、いまいちピンと来ない。

 来る人来る人皆、高位貴族で、歳も丁度よく、誰であってもいいと思うべき人達なのだろう。

 

 でも正直、ルイ以外の人なら誰だって同じだ。


 条件のいい人と結婚して絆を育めば、いつしか愛が芽生えるのだろうか。美味しいと言われるだけで胸がいっぱいになったり、何気ない仕草にときめいたり、そんな思いが本当に別の人でも出来るのだろうか……。それで本当に——ルイを忘れられるのだろうか。


 家のために結婚するなんて言っておきながら、結局、自分がルイを忘れるために結婚しようとしていただけ。全部自分のため。

 ——どうしたって私はルイが好きなのだ。


 こんな調子じゃ、婚約者になった人にもきっと迷惑をかけてしまう、やっぱり結婚の意思を取り下げようかと考えていたら、あの甲高い声が耳に飛び込んできた。


「え〜!? アンタこんな所で何してんの?」


 ピンクのドレス。ふんだんにあしらわれたフリル。

 そう、彼女こそ、フリル・ラブランス男爵令嬢である。


「なに、アンタ、結婚するって言って辞めてったけど、まさかここで探そうとしてないわよね? え! うっそ〜! なんて身の程知らずなのぉ〜!」

 フリルさんは私の座っていた長椅子に腰掛けると、押し出すようにグッと身を寄せてくる。濃い香水の香りが漂ってきたので素直に端に寄る。

「ていうか、どうやって忍び込んだわけ? どこかの侍女にでもなったの? でも流石に貴族様と結婚っていうのは図々しすぎるんじゃないかしら?」

「えっと……あの、カトレアお姉様が——」


 バシン!


 突然熱を持った頬に驚いて指先を伸ばす。目の前にはフリルさんの手が伸びており、すぐに平手打ちされたのだと分かった。


「王太子妃様をお姉様呼びですってぇ!? アンタ本当に身の程を知らないようね!」

 フリルさんのあまりの形相に絶句し、下を向いたまま固まる。

 どうしてこんなふうになってしまったのだろう。

 はじめはここまで酷くなかった。今のフリルさんは私のことをこんな扱いをしてもいい相手と信じてやまないようで、心の底からの正義感で満ちている。

 何もかも許して、従って、やってあげて……それが一番いいってわけじゃないんだな……。


 私は意を決して、フリルさんを見る。

「私、実は貴族で。アインフォード子爵家の三女なんです。だから本当に王太子妃がお姉様で……」

「はんっ! 何その妄想。アンタ病気なのぉ!?」

「いや、だから本当なの。フリルさん、これ以上騒いで見つかると本当にまずいですよ。今日は私の家族ほとんど全員来てますし、フリルさんの方が爵位が低いんですから……」

 その言葉がカンに障ったのかフリルさんがキッと目尻を釣り上げて怒鳴る。

「アンタみたいなブスがアインフォードのお姫様なわけないでしょ!! どれだけ着飾って真似ようとしたって……あら? それって、リリーミルキィーのドレス? でもそんなの見た事ないわよ? ぷっふふ、偽物じゃなくって?」

「これは、ミルキィーお姉様がオーダーメイ——」


 パシン!


 衝撃に耐えられなかったメガネがカシャンと音を立てて床を滑る。

「まだ目が覚めてないの!? この国を代表するハイブランド『リリーミルキィー』も自分のものだって言いいわけ!? この恥知らずが!!」


 ダメだ。何を言ってもフリルさんの思考を変えられない。

 両頬を抑えたまま俯いていると、結局フリルさんは私を不法侵入した不審者だと決めつけてしまい、私の腕を無理矢理引っ張ろうとしてきた。

 このままじゃマズイと助けを呼ぼうとした時、男性の足音が近づいてくる。


「フリル・ラブランス男爵令嬢」

「え!? シェンルイ会長! 私の事ご存知なんですかぁ〜?」

「ああ、よく知っている」

「えっうれし〜♡」

 

 一瞬で猫なで声になったフリルさん。男女の歓談を邪魔したら烈火のごとく怒り出すことを察知した私は、そのまま身をちじめて気配を薄くするよう努めた。


「よく知っているから言うけど——」

 急に周囲の温度が下がった気がして私はゆっくり頭をあげた。


「俺から言わせれば、恥知らずなのは君の方だ」

 

 ——え!?


 突然湧いてきた味方に驚いて顔を上げる。

 シャンデリアの光を受けて艶やかに輝く白髪。怒気を帯びた目元から覗く黄金の瞳。普段、私をからかって笑っていた口元は、真一文字に結ばれている。


 ——ルイだ。


 突然のルイの登場に驚いて固まってしまう。

 なぜならルイは、金の刺繍が施された真っ白なマントに、大魔導師の証である紋章をあしらったブローチをつけていたから——。

 

 突然全てが繋がる。

 フリルさんがルイを会長と呼んだこと。会長は国に四人しか居ない大魔導師の一人で、その見た目から白虎様と呼ばれていること。その白虎様は結界術の使い手で、最近まで雲隠れをしていたこと。初めてルイの部屋に押し入った時に口にしていたお尋ね者らしき不審な言葉の数々。多くの傷跡や、刺青、爆発音、異臭の正体——。


 ルイは、大魔導師のシェンルイ・ランスロット伯爵なんだ!!


 大魔導師として数々の魔物討伐をしていたら、傷跡が多くて当たり前! 家でも魔道具の研究をしていたら爆発も異臭もあるのかもしれない。ただの刺青と勘違いしたそれも、大魔導師だとすると魔術刻印に違いない。

 あの部屋に住んでいたのは、雲隠れ中の大魔導師シェンルイ様だったのた。

 恐らく家は結界で見え無くしていたのに、私が押し入ったから慌てふためいていたのだと、何となく悟る。私は昔から魔術の構造を理解するのが得意だから、無意識に看破していたのだろう。

 

 まだ目を見開いたままでいる私に、ルイがスっと手を差し伸べる。

「ルイ……」

「黙っててすみません」


 手を取り合った私達を見て、フリルさんは発狂したように騒ぎ出す。

「え! 有り得ない!! 恥知らずが私!? 会長! どうしてこんな女の手を取ってるんですか!?」


「そりゃあ、ここは、未来ある男女が仲を深める社交の場だから踊っていただこうかと」

「はぁ!? こんな女じゃなくて私と——」

「黙れ。さっきから無礼だぞ。彼女の身分を知らないのか?」

「……は?」

 ルイは心底軽蔑するように瞳の炎を燃やして、フリルさんを睨みつけて口を開く。

 

「彼女は、マナ・アインフォード子爵令嬢。医療と魔術の発展に代々携わる名家で、権力に興味が無いから陞爵を受けないだけで本来は侯爵クラスの家格。父君は国王の親友、姉君は王太子妃、甥は王太子……まだ言うか?」


「そ、そんなわけ……」

 落ち着きなく視線を揺らしていたフリルさんは、私の顔を見ると途端に動きを止めた。メガネを外してからの私の顔を初めて見たのか、驚愕に目を見開いている。

「え? うそ。なんで?」

 それっきり何も言わなくなってしまったフリルさんを、ルイが会場護衛の騎士に視線をやって引き取らせた。

 

 二人きりになったところで、突然抱きしめられる。

「助けるの遅くなってすみません」

「え! ううん。大丈夫、ありがとう……」

「俺、今帰ってきたばかりなんです。西方の魔界との裂け目に結界張ってきて……」

 そう言われてよく見ると、ルイは社交の場だと言うのに魔術師らしい戦闘服のままだった。

「その前日は、論文書いてたし……そのまた前日は、ヒュドラの討伐があって……あ! まだ、結婚相手決めてないよね?」

「う、うん」

「良かった……あーもう、ほんと焦った……。釣書を一、二年見てろって言ったじゃん。めちゃくちゃ無理したんですけど」

 

 ルイが抱き寄せていた体を離し、私と目を合わせる。いつか見た、覚悟を決めた表情を浮かべたルイが熱い視線を向けて語りかけてくる。

「俺、今年十八歳です。二歳しか変わらない」

「えっ、うん」

「王宮魔術師で王都に住んでるし、見た目も悪くない」

「え!? そりゃ、そうだね」

「伯爵にもなったし……ここ最近の討伐実績は英雄としか言いようがないですよね」

 ルイが何を言いたいのかだんだん見えてきた。今、ルイが言っていたのは私達が最後に一緒にご飯を食べた時に言った、結婚相手に求める条件と、お父様が言っていた条件だ。

 ——ルイが立候補してくれている。

 自分の妄想じゃないかと信じられない気持ちになる。私が意図に気づいたことを察したのか、ルイの目元が赤く染まっていく。

「だから! その、つまりだな……!」

 しばし逡巡するように目を閉じていたルイが、勢いよく目を開けてその黄金の瞳を解放した。


 

「俺はずっとマナが好きでした。俺と結婚してくれませんか?」

 


 乾いていた心に泉が湧いたように暖かな波が広がる。

 諦めようと、自分の心に蓋をしていて苦しかった胸が、まるで今日の夏空のようにスッキリと晴れ渡っていく。雲が風に押し流され、雲ひとつない晴天になっていくのを、私ははっきり感じ取っていた。

 ルイは私の返事を今か今かと待っている。いつまでも嘘みたいな現実に戸惑っていられないと、私も覚悟を決めて口を開いた。


「私もルイが好き……こちらこそよろしくお願いします!」


 いつの間に注目を集めていたのか周囲からワッと歓声が湧く。私が恥ずかしさで俯いていると、ルイが手を取って中央ホールへ進み出した。

 カトレアお姉様に王妃様、お父様、お母様に、オウルお兄様夫妻、シュタレイお兄様夫妻にメロウ——沢山の人達が祝福の声をあげて私達を囲む。

 窓の外の庭園に咲く、こちらを向いた向日葵のひとつひとつまでもが私たちに笑みを投げかけているような気がした。



***



 ——数年後。

 

「はぁ!? マナ、俺の事裏社会の人間だと思って諦めようとしてたわけ!?」

「いや〜あはは……まぁまぁ、昔のことじゃない」

「ほんとバカだよね、マナは。なんでそんな突飛な早とちりしちゃうかなぁ」

 家族団欒の夕食。相変わらず食事は使用人に手伝ってもらいはするが、私が作ることにしていた。ルイが慣れ親しんだスープを飲み干して、からかいの表情を浮かべる。

「しかも自分が絶世の美女だって知らなかったんでしょう? 誘拐されるから顔を隠せって言っただけの家族の言葉を勘違いしてたんだっけ? くっははは! めちゃくちゃウケるなそれ」

「ルイだって、自分が子供の時、美形だって気づいてなかったでしょう?」

「いや、俺は小さい時から自分がイケメンだって気づいてたよ。普通気づくよなぁ、ルオミン?」

「うん! 母上ちょっと変だよ〜!」

 長男のルオミンが可愛らしい声で明るい笑い声をあげる。ルオミンは、ルイと私の遺伝子を最大限に引き継いだ玉のような男の子だ。ルオミンが笑うだけで、周囲の人々はたちまちに笑顔になってしまう。

「ルオミンも、マナがかけてた魔道具のメガネかけるか? あれをかければたちまちに地味になれる。あれさえあれば誘拐されないぞ〜」

「僕には父上がいるもん! 父上は最強の大魔導師なんだから僕を守ってくれるよね?」

「ははっそうだな、ルオミンには要らないか。俺が守るからな」

「うん! それにイケメンの方がキャルロットちゃんと仲良くなれる」

 私たちは互いに顔を見合わせる。

「おいおい……勘弁してくれよ、メロウに影響受けすぎじゃないか?」

「余計なこと吹き込むなって言っておくわ……」

 キョトンとして真ん丸なお目目を向けてくるルオミンの頭をひとなでして、双子の女の子がすやすやと眠っているベビーベッドへ向かう。


 あの時、ルイが行動を起こしてくれなくて勘違いしたままだったら、この子達は産まれていない。

 なにはともあれ、この子達が伸び伸びと育ってくれたらそれでいい。この子達と何気ない日々を過ごしていけたなら——それが一番の幸せなのだ。


フリルさん可哀想w 多分どこかで元気にやってるよ……。

女にざまぁかけるの珍しいのでは?って書き終わって思いました。フリルに男に取られて振られてもいいのでは?と思いましたが、両片想いは外せん! 異物除去じゃ!と思いまして……。


ミルキィお姉様だけ居なかったけど海外にいる設定。

ラタ様はオッドアイで、青い目というイメージが先行しているから、それさえ眼帯で隠したら割と普通に街中に紛れ込んで遊んでる設定。

メガネ外したら美人設定って令和でも生きてますか?

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