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騎士団長に目をつけられた

「おい、なんだ今の光は。王都の魔力計が弾け飛んだぞ」


「これは…時期的に最近聖女になったという、伯爵家のお嬢様のものですかね?」


「ふむ…調べてみるか」


「ええ?そんなこと言って仕事をサボらないでくださいよ?」


「わかってる、ちょっと調べるだけだ」












数日後、我が伯爵家に訪れたのは…王国最強と名高い騎士団長、アルトゥーロ公爵子息だった。


冷たい印象の美貌と魔力に対する鋭さ、魔力への感受性を持つ男。


「あ、あら、騎士団長様。わざわざ辺境の伯爵家まで、何のご用かしら?」


レナが「聖女スマイル」で応対する。


私はその斜め後ろで目を伏せ、完全に気配を消していた。


アルトゥーロ様は鋭い眼光でレナを上から下まで眺め、訝しげな表情をする。


「君が『新聖女』か。…なるほど、確かに華やかさはある。だが、先日の光……あの密度、あの神聖な魔力は、君一人の魔力容量を超えているように見えるが?」


『おっと、鋭すぎるわね…噂に違わぬ魔力への感受性ね』


私は心の中で舌打ちつつ、袖の中で手を組み祈る。


私の魔力をレナの体内に、コーティングするように流し込む。


これで、レナ自身の魔力が膨れ上がっているように偽装できる。


「失礼ね! 私の祈りが神様に届きすぎちゃっただけだわ。ほら、見てなさい!」


レナが私の魔力を感じたようで、それを合図にするように両手を広げる。


「神よ、ご加護を!」


私はレナに、一気に魔力を流し込む。


レナを触媒に、加護が領内に行き渡る。


その加護の力に呼応して、庭のまだ咲く時期じゃない木まで花を咲かせた。


「…っ!?」


アルトゥーロ様が思わず剣の柄に手をかける。


あまりのことに、一瞬混乱したらしい。


斬りかかられなくてよかった。


「どう? 私の力、分かったかしら?」


レナがふんぞり返る。


実際にはあまりの力に怯んで彼女の膝はガクガク震えているのだが、そこは気合いでカバーしていた。


ナイス妹。


アルトゥーロ様は呆然と咲き誇る花を見つめ、それからレナを見つめ…最後にその後ろに控える私に視線を向けた。


私はわざとらしく震えて見せる。


「ひっ…騎士様、怖いお顔をなさらないでくださいませ……」


「…すまない。あまりの出力に、つい警戒した。確かに、君が『聖女』であることに疑いの余地はないようだ。だが」


彼は私から視線を外さず、一歩近づいてきた。


「…イサベル嬢。君から、妙な既視感を感じる。……いつだか、世話になったことはないか?」


『…マズいわ。聖女の力に目覚めたばかりのこの間、彼がうちの領地の付近で大怪我をして行き倒れていたのをこっそり完治させて放置した時のことを覚えてる!?彼は意識が朦朧としていたはずなのに!』


「まあ、騎士様。私はただの、妹の付き添いの姉ですわ。人違いでは?」


私は最高に無害な、おっとりとして見える微笑みを返した。


アルトゥーロ様は釈然としないような顔をしながらも、レナの〝圧倒的な魔力〟に押し切られ、調査報告書に『聖女レイナの能力は規格外。即戦力。』と書き込むしかなかった。


そして去っていく。


「…ふぅ。お姉様、あの騎士様怖かったわぁ……」


彼が去った後、レナがその場にへたり込む。


「お疲れ様、レナ。そしてありがとう。これで、当分は誰も疑わないわ。…ただあの騎士団長様、また来そうな気がするけれど」


「ええっ!? もう勘弁してよぉ!」


妹の悲鳴をよそに、私は確信していた。


私の〝聖女の姉〟としての平穏な生活を守るためには、もっと巧妙に〝妹の聖女演出〟をしなければならないと。

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