29話 赤い姿
山田はモモモの首を引っ掴み、そして──
腕の力だけで首の骨を折った。
生々しく、骨の砕ける音が周囲に響く。
「あぁ……! モモモ! おい山田! やめてくれ!」
モモモがやられて、カズサは動揺しまくる。だが山田はなお首の骨を折り続け、そして、動かなくなったモモモを地面に投げ捨てた。
「おぉおおぉおおァアアあぁああああァアアァァアアァアアァァアアオオオ!!!」
カズサはその様子を見て、発狂した。
モモモがあんな目に合っているのが耐えられない。カズサはもう正気を保てる精神状態ではない。(いつも正気じゃないけど)
「カズサ! 大丈夫か! おい落ち着け!」
「……。」
ホンが心配して耳元で叫ぶが、カズサはもう何も聞いていなかった。
すると徐々に、カズサの身体が赤くなっていく。
「……! そうか、身体が赤くなる条件は……」
ホンは考え至る。
赤くなる条件、それは『カズサの精神状態の異常』!!
モモモが死んだという事象が、カズサの精神をおかしくしたのである。
「何だ、身体が赤く……」
バスターナイト山田も、カズサの姿の変化に釘付けになる。
そして! ついに全身が赤一色に包まれた!
「こ、これは一体、どうなっちゃうんだ〜〜〜〜ッッ!?!?」
*
気がついた頃には、身体が赤くなっていた。
『元々の』赤色だ。
ヘッドホンシング本来の、赤色の硬皮。それが今完全に元に戻った。
自分の手を触ってみて、そしてグーパーしてみる。
間違いない。
「……俺に身体があるッッ!?」
と言ったのは、カズサの身体を乗っ取ったホンだった。
「……まさか、ヘッドホンシングか……?」
あんま動じないバスターナイト山田も、流石に驚いている。
何を隠そう、こんな事象はバトロワが始まって以来一度もない。シングが人間の身体を乗っ取るなんて、十六体の誰も考えなかったことだ。
それをホンがやってのけた。
今カズサの身体にいるのはホンである。
「フフフフハハハハ!!! なるほどな! カズサが正気じゃなくなると、この身体は負荷に耐えられずオーバーヒートしちゃうのか。そんで身体が完全に赤くなると、別のデータに差し替えられる。つまり、俺の脳にすげかわるってワケだ!!」
ホンはなんか長文で自己解決している。
「おいモモモ! 聞こえてるか!」
次にホンは全身バキバキに割れて倒れているモモモに声をかける。当然返事はない。
「シングってのは頭を完全に破壊されなきゃ死なねえ。人間程度の回復力もあるから、もうちょい回復したら炎で自分を治せ。」
「……。」
伝わってるか分からないが、とりあえずこれだけ言っておいて、山田に向き直った。
「倒れている敵をこのまま見過ごすとでも?」
一方山田は、モモモにトドメを刺そうとした。このままほっといて回復されたらたまったものじゃない。再びカカト落としで、モモモの頭を潰そうとする。
だが!!
ホンは驚異的な速さでモモモを回収した!!
(ッ! 速い!?)
カズサを相手にしているときとは比べ物にならないスピード。
ホンはモモモを遠くの安全なとこに降ろして、そして次は自分の頭をガンガン叩いた。
「おいカズサ! お前そこにいるんだろ、さっさと目覚ませ!」
今はホンがカズサの身体にいる。意識が入れ替わっているのだ。つまり、カズサの意識は。
「ん〜、んん? ん゛ん゛!?」
カズサは目を覚ましてすぐに驚いた。
自分の身体がヘッドホンになってたらそりゃ驚く。
ホンがカズサの身体に、そしてカズサはホンがいたヘッドホンに意識が移ってるのである!
「詳しい情報は後で話す。とりあえず三つだけ言うぜ。赤い姿になって俺とカズサの意識が入れ替わった! モモモは無事! 山田は俺が倒す! 以上!」
「とても分かりやすいねくぉれね。」
だがカズサは、一旦ちょい真面目トーンになってホンに言う。
「お前、俺の身体乗っ取って悪さしないよな。」
「あ? しないしない。俺は人間好きだからな。」
「バスターナイト山田のこと、殺すなよ。」
「しないしない。」
「……でも。」
今のカズサに拳はないが、拳を握りしめてる感じで言う。
「死なない程度に痛めつけろッッ!!」
「分かったぜ!!!!」
モモモの仇撃ち。ホンとバスターナイト山田の戦いが幕開けるぜ!!
今めっちゃアツいな。いやめっちゃアツい。




