三分咲き
「ん…朝か。」
カーテンの隙間から朝日が差し込み、僕の顔を照らす。
彼が寝た後に家の中を確認してみたが、怪しいものは見当たらなかった。まだ疑問は残るが、本当に彼は純粋な好意で僕の手伝いをしようをしてくれていたのだろうか?警戒するのは当然のこととはいえ、彼には悪いことをしてしまったかもしれない。
…朝食は美味しいものを作っておこう。
「んん…おはよう…。」
なんとも気の抜けた声だ。眠そうな目をこすり、髪も寝癖でボサボサ。昨日会ったばかりなのに、そんな姿に何処か旧知の仲のような安心感を覚えてしまう。
「あぁ、おはよう。よく眠れたようで何よりだよ。朝食を用意するから顔を洗ってくるといい。」
彼はまた眠たそうに返事をして洗面所へと向かう。その間に朝食の準備をしておく。
今日の朝食は白米、豆腐とジャガイモの味噌汁、鮭の塩焼きだ。和食ほど身体に馴染むものはないと勝手に思い込んでいる。
そういえば、彼は食べられないものはあるのだろうか。先に確認しておくべきだったが、作ってしまったものは仕方がない。次回に活かすことにしよう。
そうこうしているうちに彼も顔を洗い終えて戻ってきたようだ。
「目は覚めたかい。朝食の準備は済んでいるんだが、苦手なものはあるかい?」
「なんでも食べれるよぉ。うわぁ、美味しそう!これ近衛が作ったの?すごいね!」
無邪気な笑顔を見ていると彼の年齢が分からなくなる。むしろ本当に同じくらいの年齢なんだろうか。謎が増えていくな。しかし素直に褒めてくれているのは伝わるし、僕としてもそのことが嬉しい。
「ありがとう。さぁ、冷めないうちに食べよう。」
こうして誰かと朝食を食べるのは久しぶりだ。一人でいることに慣れてしまっていたからなのか、それとも彼の不思議な雰囲気のせいなのか分からないが、どこか懐かしく、どこか恥ずかしい気持ちにもなっている。そして目の前で美味しそうに朝食を頬張る彼を見ているとなんとなく安心する。僕は自分で気付いていなかっただけで、心のどこかでこういう相手を求めていたのかもしれない。
昨日出会ったばかりなのにこんな気持ちになるだなんて…頭では理解できないが、今という時間を彼と共に出来ていることを少しだけ『幸せ』だと感じている。