前へ目次 次へ 8/9 8・星の記憶2 「そろそろ、おわかれじゃな」 「うん……」 クジラは海のその香りに、遠い昔のことを思い出すかのように、まるで甘えているかのようにそっと、すり寄せる。 手乗りの鳥程の大きさになってしまったクジラを、青に色づいた海に静かにひたす。 ――ぼくは、クジラをそうっと波の流れるほうに離した。 「きれいな海を、ありがとう。小さなぼうや」 クジラはあっという間に、海の作る白い波に、泡に運ばれ、命のともし火が消えていくように、青く深い夕暮れに溶けて見えなくなってしまった。