7・星の記憶1
「泣かないで、ぼうや」
クジラはやさしく言いきかせる。
でも、しばらくの間、泣いていた。
涙が止まらなかった。
クジラは、落ち着くまで、黙ったまま、やさしく見つめていた。
「この星の海がきれいだから……言っていたよね」
泣きつかれ、そして落ち着いてき、やっと言葉が出る。
お別れは、さびしいけれど、だからといって、困らせたいわけではないのだ。
短い間だったけれど、大切な友人なのだ。
「……ぼく、もっときれいな海知っているよ」
ここから、列車に乗っていける場所。
列車の終着駅。
昔見た、あの海へ。
「連れて行ってあげる」
クジラを大事に抱き《いだき》、海水を汲んだバケツに移す。
――そう、もう、その時には、この青いバケツに入るくらいその体は縮んでいた。
海の上を走る列車は、空と海の青を映している。
列車に揺られて、景色を眺めていた。
「列車には初めて乗ったが、ずいぶん速く走るものじゃな」
電気を使って動くその乗り物に感嘆の声をあげている。
「ここから見える景色も、きれいなんだけれど、向こうの海はもっといい場所なんだよ」
「それは、楽しみじゃな」
そして、終点の駅に降り立った。
目の前には、美しく青に染まった海が広がっていた。