6/9
6・海が見る憧憬2
夏の終わり。
あることに気がついてしまった。
出会った頃は、背中に乗れるくらい大きかったクジラの体が、小さくなっているような気がしたのだ。
最初は、気のせいかと思ったのだが、最近になって、日に日に、小さくなっていくのが分かるくらい、その縮んでいく速さは見て取れるようになってきた。
そして、1週間もすると、とうとうクジラは、両手で簡単に抱えられるくらいの大きさになってしまった。
「どういうこと?」
クジラに尋ねた。
「そういう、運命なのじゃ」
手乗りクジラは言う。
旅するクジラは、常に旅をする。
自分の運ぶ種を埋める場所を探すために。
そして、クジラは、旅の終わりに青くきれいな星を見つけ……種を植えるのは、ここと決めた。
そこで、自分の種を埋め……つまり、一部になりたいと。そう思っていた。
「悲しむことは無い」
クジラは、小さな声でやさしく囁きます。
「海と言う生命のスープに溶けて、あらたに産まれ来る者たちの源になるのだから」
「そういう、運命なのじゃ」
クジラは、ふたたびそう言うだけでした。