4・流星の帰郷4
星全体が塩水でできている星から来た、そうクジラは言った。
それは、クジラのしっぽの形をした星雲の中にある星らしい。
その星で産まれたクジラは大人になると、宇宙を旅する。
胎内に宿る種を運ぶために。
そのクジラは、もう何万年も旅をしてきたらしい。
「旅の途中で、流星群が来たんじゃ。その星のひとつにつかまって、旅していた。わたしのつかまった流星はどうやら、君の住む銀河系の引力に引っ張られていたようじゃ」
宇宙は、闇に色を溶かし込んでいる。
美しくも鮮やかな混沌の色。生命の塵。
時がたつのも忘れて、その夢のような幻想宇宙の話を聞いていた。
遠くで、列車の汽笛の音がする。
その音に現実に意識が戻る。
海から吹く風が、髪をそっと撫でていく。
「くしゅん」
夏の夜とはいえ、海辺に吹く風は体に冷える。
あんまり長くいると風邪を引いてしまう。
「おやおや、今日はもうお帰り。帰るべき温かな家へ」
「うん、また明日ね」
「おやすみ、小さなぼうや」
クジラと出会った夜は、深く夜の底に落ちていく。
あ、今、気がついた。
月が、ありえない方に輝きを持っている……まぁいいや。