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3・流星の帰郷3
「くじらだ」
目の前にいるのは、間違いなくクジラだった。
青い瞳。
夜空と同じ色の皮膚。
淡い桜色の斑点模様がある。
「君は、宇宙人……いや、宇宙クジラだったりして」
思い切って聞いてみた。
クジラは青い目をぱちくりさせた。
「宇宙クジラと言うのは、あまりいい響きではないのう」
クジラは低い声でそう言った。
見た目にはわからないけれど、このクジラは、ずいぶんおじいさんらしい。
「わたしは、宙を旅して種を運ぶモノ。ほれ覗いてごらん」
クジラは、その大きな口を開けた。
そのおおきなクジラの口のなかをのぞきこむ。
口の中には闇色に輝く水が貯まっていた。
「奥のほうに、輝きが見えるじゃろう?」
暗がりの奥のほうで、煌く種の鼓動をみた。
「きれいだね……」
「わたしらは、長い時間をかけて、この種を体内で創るんじゃよ」とそのクジラは言った。
「きれいなこのほしの海に、この種を蒔こうと思うたのじゃ。それが、星をわたるわたしたちの生きる目的……」