現実世界に本当にダンジョンが出来たらどうなるかAIに聞いてみた
キュムキュム
「せんぼんざくらーきみがよはー」
「シャイニングスターハッピバースデー」
「あーあ、この世界にダンジョンが発生したらなー」
帰り道、二人で著作権フリーメドレーを歌ってると、突然テツコがアホな事を言い出した。
「テツコどした?生理来ないのなら、早めに産婦人科行った方が良いよ?」
「あたしは彼氏いない暦=年齢だっての!そーじゃなくて、…いや、それも関係あるかも」
「本当にどした?」
「ほら、あたしって勉強も運動も恋愛もアキコに負けてるじゃない」
「そんな事ないよ。テツコはそもそも勝負のリングにすら上がってない。せめて、私と比較出来るぐらいに努力してから勝ち負けを語ってよ」
私が慰めの言葉をかけると、何故かテツコは顔を真っ赤にして包丁を振り上げた。今日の四限目は家庭科実習で親子丼を作ったんだった。
「キシャー!」
「もちつけ」
私もマイ包丁を出して、テツコの攻撃をパリィし、そのまま組み伏せ、脇腹の肉をモミモミして無力化する。
「テツコ、本当にどした?私じゃ無かったら警察沙汰で施設送りだよ?テツコの将来考えたらそれも良いかもだけど」
「それな!あたしって人生ほぼ詰んでるじゃない。だから、日本そのものが異世界化されて、神様からスキル貰いーのダンジョン配信バズりーのするぐらいしか人生逆転の目が無い訳よ」
「そんな妄想する時間があるなら、勉強か筋トレしなさい」
「したわよ!やったけど授業についていけない!もう、あたしがこの先生きのこるには、日本そのものをリセットするしかないの!」
うっわぁ、今回のテツコめんどくせぇタイプだ。
この『アキコとテツコ』シリーズは毎回パラレル設定の短編ギャグ。全部の話が同一世界で繋がってる『聖剣とアホ勇者』シリーズのキタノ達と違って、王太子や近鉄みたいに同じ名前の別人設定を採用している。
だから、私とテツコの設定は無自覚チートな私とガチ劣等生のテツコという基本構造以外はランダムなんだけど、結構な割合てテツコが私に嫉妬してめんどくせぇ展開になる。そう、こんな感じにだ。
「キシャー!キシャー!」
んで、こんな風になったテツコに正論で引導を渡すのが私の物語上での役割なのだろう。このままだと、私以外の人に包丁を向けるかもしれんし、その前にやるならやらねば、生生生生ダウンタウン。
「テツコ、良く聞いて。仮に日本にダンジョンが発生しても、テツコに幸せな未来は来ないと断言出来る」
「キシャ?ソースは?それってあんたの感想ですよねぇ?」
「ソースはここにあるよ。今の時代、AIに質問すれば何でも答えてくれるんだから、自分のスマホでダンジョンが現れた日本がどうなるか聞いてみれば?」
キュムキュムキュムキュム
テツコは無言で包丁を閉まって、スマホを取り出した。そして暫くは無言て歩いていたが、意を決して無料で質問とか出来るAIのサイトを開いた。
『無料AI魔法少女ちゃんのサイトへようこそなんだよ!質問に答えたり絵を書いたり小説書いたり出来るんだよ!でも、商業目的で使うなだよ!』
「無料AIて調べたら一番上に出てきたから、コイツで良いか。もし、日本にダンジョンが現れたらどうなるの?っと」
キュムキュムキュムキュム
待つ事数秒、テツコのスマホ画面にAIの返答が表示される。
『とてもユニークな質問たよ!もし、日本にダンジョンが現れたら以下の様な事になると魔法少女ちゃんは考えたんだよ!』
1.トイレが壊滅する。
『ダンジョンが発生するのは大体地下だよね?だったら、ダンジョン出現と同時にそこにあった下水道はグシャグシャに潰れるか等価交換で異世界に送られるかダンジョンの一部と融合するんだよ!そうなったら、近隣家庭のトイレ壊滅、ウンコ逆流阿鼻叫喚なんだよ!それと、ダンジョンの発生場所によってはデパ地下や地下鉄や原発が壊滅する可能性もあるんだよ!』
2.冒険者ギルドが生まれるが、受けられる仕事は下水道関係が殆ど。
『ダンジョン出現に伴い冒険者ギルドが現れるけど、ぶっちゃけハローワークなんだよ!平成になって職業安定所がハローワークと呼ばれる様になっていった様に、冒険者ギルドはダンジョン発生後のハロワの新名称なんだよ。で、そこてどんな仕事を受けられるかと言うと、そうだよ、一番需要のある下水道のお仕事なんだよ。皆がまた安心してウンコ出来る場所を作る大事なお仕事かつ、健康な暇人なら出来るお仕事なんだよ!ダンジョン配信?日本政府が許す訳ねーんだよ』
3.スキル貰えたとしても、一億人に一人の幸運てチート主人公にならないと幸せにはなれない。
『気になってるであろうスキルの話をするんだよ。現代ダンジョンもの作品のテンプレに沿うなら、君もスキルを何か貰えるけど、そのテンプレに従うなら、ダンジョンが現れた後の世界でのんびり生きられるのは主人公ぐらいなんだよ。一億人に一人の存在にならないと平和な時代より幸福には絶対なれないんだよ』
4.政界も大混乱になる。
『最後に政治の話もするんだよ。ここまでの話を聞いて、ダンジョン出現は全国規模で地震や地盤沈下が起きたに等しいと理解はしてる前提で話すんだよ。そうなると、政治家も全取っ替えになる可能性が高いんだよ。宮崎の時やウクライナの時やドイツの時みたいに、新しい時代を作らんとする政治家が台頭して日本ほ大きく変わって行くのは間違い無いんだよ。世間はこの政変に夢中て、ダンジョンそのものは一般人には入れないしだんだんどうでもよくなっていくんだよ』
AIが出した未来予想図IIを見て、テツコは酷くがっくりとし、それを見た私も流石に可哀想だなと思った。AIならテツコに現実を教えてくれると思ったけど、これは夢が無さすぎだ。
「きしゃ〜」
「テツコ、大丈夫?」
「あんま大丈夫じゃないわよ。でも、考えてみたらダンジョンがガチて出現したなら、まず最初に心配しなきゃいけないのは、地面に埋まってる水道とかよね」
そう、私達の生活は地下に張り巡らされた様々なインフラがあってこそなのだ。日本にダンジョンが出現した時、ダンジョンはわざわざ地下インフラを迂回してくれるだろうか?それは99パーあり得ない。
あのAIの出した答えは極端ではあるが、真理に近い。ダンジョンが出現したら、元からそこにあった物はただでは済まない。そして、元からそこにあった物こそが、私達にとって本当に必要な物であり、仮にダンジョンから素晴らしいアイテムが見つかったり大当たりスキルが手に入ったとしても以前の様な便利な生活は簡単には取り戻せない。
キュムキュムキュムキュム
「アタシのママさー、今デパ地下て働いてるのよ。もし、日本にダンジョン現れたら、仕事無くなっちゃうかもなんだね」
「死んだり異世界送りになる事もあり得るね。さっきのAIの話通りになったら。それでも日本にダンジョン出現して欲しい?」
「やだ!ダンジョン探索や配信も無理そうだし、今の社会でアタシ頑張る!取り敢えず、アキコ以外の友達作って、勉強も毎日やって」
「友達…?」
私は首を傾げながらクラウチングスタートの姿勢へ移行。テツコも私のマネしてクラウチングスタートの姿勢へ。
「ゴー!」
「あっ、待てー!ずるいずるいー!」
テツコがしゃがんだタイミングて私は走り出し、全力帰宅したのだった。
ハローワールド。人物紹介の時間だよ。
・テツコ
今回は異世界にすら行かなかったあたしだよ。普通の人生目指して頑張ってくつもり。
・アキコ
あたしの友達なんだけど、すげえ天才チート。多分日本にダンジョン現れてもこいつは平然とスローライフする。
・AI魔法少女ちゃん
あたしがたまたま開いたサイトのAIのイメージキャラクター。魔王を倒す勇者候補で、得意魔法はゴリラと他の存在の位置を入れ替えるゴリチェンジ、弱点はお尻の穴など凝ったプロフィールが用意されている。