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私的哲学

人と接することから逃げている

作者: 羅志

 子供の頃から人付き合いが苦手だった。

 人からの注目が怖くて、恥ずかしくて、人前に出ることが苦手だった。学生のころの当番の仕事で教壇のところに立って挨拶したり、そういうことも苦手だった。

 恥ずかしさで顔が真っ赤になっていることには、自覚があった。一度、それが男子生徒と一緒だったからと嫌がらせの手紙を受けて、よりいっそう、そういう状況や立場が苦手になった。

 恥ずかしさのあまり、笑ってしまうこともあった。運動会で応援の声に恥ずかしくなって笑ってしまって、へらへらせずもっと一生懸命やれと怒られたこともある。今となっては、これは赤面症というやつなのかもしれないと思うけれど、当時は、そんな自分が大嫌いで仕方なかった。正直今でも、自分のことなど嫌いで仕方がないけれど。


 歳を経ても、自分の人付き合いの苦手さは変わらない。むしろ、学校という強制的に周囲と関係を構築する場がなくなったことで、より悪化しているように感じる。

 確たる証拠のように、学生時代仲良くしていた同級生たちとは、もう何年も連絡を取っていない。仕事中に周りがするような世間話をすることもないし、そもそも家族とすら、あまり話をしていないように思う。

 ネットでさえ、うまく関係の構築ができない。できたと思っていてもそれは一時的な話で、瞬きの間に何かがズレて、うまくいかなくなる。少し離れただけで、元から私なぞ要らない、存在しないというように、私が混ざれるような隙間はなくなる。一緒に遊ぼうと約束していた輪から、確認の連絡もなしに切り捨てられていた時には、非常にショックだった。血の気が引いて、気持ち悪くて仕方なかった。


 人の目が怖い。視線が怖い。注目が怖い。自分を認識されることも、把握されることも。理解されることも、怖い。人が怖いし、人は怖い。

 そのくせ、一人では寂しくて、寒くて、生きられないから。人といたい。ありたい。誰かにそばにいてほしいし、自分を必要としてほしい。私を認めてほしい。

 生き辛いと、つくづく思う。ここしばらく、ずっと喉が苦しい。締められているような苦しさは落ち着いたけれど、何かがつかえているような、そんな苦しさは消えない。人と関わる環境や状態にあると、ずっとそうだ。飲食には問題ないし、特定の状況や環境で悪化しているのだから、きっと精神的な理由だろう。ヒステリー球というやつかもしれない。

 けれど、私の生き辛さなんて、軽いものだと思う。世の中にはもっと苦しんでいる人がたくさんいる。私如きよりも優先されるべき、救われるべき人たちは大勢いるのだから。私如きには、悲鳴を上げて、助けてもらうだけの価値はない。

 そんなふうに考えて、人が怖いと逃げている。

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― 新着の感想 ―
こんにちは。 人が怖い。 自分が嫌い。 わかります。 もし、転生なんてものがあるなら、「人間だけは止めてくれ」と私は訴えるつもりです。 ……まあ、そもそも、転生自体したくないですが。
伝えたい事は沢山在りますが、上手く言葉に出来ません。 ただ一言にするならば、「生まれてきてくださり、ありがとうございます」です。
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