7話 意思なき物 - 後編
結衣の自宅に、突如として現れたサヤ。その瞳が捉えたのは、奇抜で華美な装備――「魔導婚礼装甲・改」をまとった結衣の姿だった
「何かが足りない」――違和感を覚える結衣に、サヤは静かに告げる。「物には “意思” が込められてこそ、本物となる」と。
「本物」を見たいと願う結衣は、「懐古遺殿」へと導かれる。そこに並ぶのは、過去の戦場を生きた者たちの遺品。そのひとつ、紫黒のローブに手を触れた瞬間――結衣の意識は戦場へと飛ぶ。
「紗耶」の身体となり、仲間と共に戦う結衣。
「守りたい」――その想いが、ローブを光と変え、仲間を包み込む障壁となる。
やがて意識が引き戻されると、サヤが問う。「紗耶は何と言っていた?」
結衣はローブを抱きしめる。「分からない。でも……笑ってた」
冷たい静寂が、特別展示室を包み込んでいた。
結衣は紫黒のローブを見つめたまま、しばらく動けなかった。
――あれは、「紗耶」のものだ。
脳裏に焼き付いた記憶――自分がその存在を体験し、見たはずの光景。
黄昏の光。異世界の荒廃した街並み。異様な高層ビル、襲いかかる自立型無人兵器の群れ。
それらすべてを、紗耶の “意思” として結衣は確かに経験した。
ではなぜ、「サヤ」と出会ったとき、彼女は白銀の鎧をまとっていたのか?
——自身のローブではなく、白銀の鎧を。
ローブの持ち主は確かに紗耶だった。ならば、白銀の鎧の男は誰なのか?
結衣は目の前の鎧に目を移した。
滑らかな白銀の光沢を放つ全身鎧。それに、黄金の紋章が輝く赤いマント。
少女がまとうため作られもの――明らかに大柄な男のものではない。
疑問が次々と浮かび、考えが絡まり合う。
「サヤちゃん……あなた、いったい――誰なの?」
かすれた声が、特別展示室の隅々まで染み込むように響いた。
サヤは少しだけ目を細め、まるでローブの中での出来事を見透かすような表情を見せる。
「儂だ」
その答えに、結衣の思考が止まる。
「……え? ……ど、どういう意味?」
——わかるようで、わからない。
サヤは変わらぬ静かな声で続ける。
「白銀の鎧を纏っていた男……あれは、儂だ」
……冗談?
一瞬そう思ったが、サヤの表情は冗談を言うものではなかった。結衣は思わず笑いながら頭を振る。
「いやいやいやいや? 何? 何言いだすの?」
——内なる声たちが騒ぎ出す。
興奮——(まてまてまてまて……なんでやねん!!)
不安——(えぇ……それは……つまり……男から女へ?)
欲望——(もしかして……それって結衣の大好物の……!? これはフルチャンあるで!! 攻めろ攻めろ結衣!! 流れきてるぞ!!)
サヤは淡々とした声で繰り返した。
「戦場で指揮を執っていた男。あれは儂だ」
結衣の中で、「まさか」という感覚がじわじわと広がっていく。
——サヤちゃんが、この鎧を着てた男の人……?
結衣は目の前の鎧を指差した。
「……この鎧の持ち主が……サヤちゃん? つまり……サヤちゃんが、この鎧を着てた男の人? 男の人は、サヤちゃん?」
「うむ」
「いやいやいやいや……」
脳が混乱しすぎて、逆に落ち着こうとする結衣。ふと、ローブに視線が戻る。
「じゃ……このローブは?」
サヤは少し視線を落とし、淡々と言う。
「……紗耶のものだ」
「紗耶……サヤ……さや……?」
「儂の…… “妻” の遺品だ」
——妻!? つま!? ワイフ!?
結衣は思わず息を呑む。
ローブの持ち主が「紗耶」なら、それは「サヤ」のものではない。ならば……いや待て。
「サヤちゃんは男だった……で、紗耶さんが……妻? そして、サヤちゃんと紗耶は婚姻関係にあった? で、白銀の鎧の男はサヤちゃん?」
……あれ?
一気に情報が入りすぎて、脳が出力エラーを起こす。
「ちょちょちょちょ、ちょ……っと整理させてね……」
結衣は混乱し、端にあったソファに倒れ込む。
——内なる声たちが最大加速され、一斉に声をあげる。
興奮——(ささささサヤちゃんは昔は、おおおお男で……?)
不安——(年齢とせせせせっ性別を……魔法でなんとかして、女の子になった?)
葛藤――(ほんで、「紗耶」さんとけけけけ結婚?)
欲望——(出ました! 異世界TS百合ショタ結婚合法の判決が出ました! これは歴史的瞬間です!)
正義感――(まてまて! おおおお落ち着け! まずは話聞くくくくんんんんや!)
つまり――
ふたりは「女同士のカップル」だった?
結衣の口が、自動的に無難な言葉を吐き出す。
「そっか……素敵だね……」
サヤがふっと微笑む。
「ありがとう……」
その言葉が、妙に自然に胸に落ちた。
結衣の中で、幾つもの言葉が浮かんでは消えていく。
――情報が多すぎる。
サヤという存在。紗耶という女性。二人の関係。
結衣は全身に震えを感じ、そこでようやく汗をかいていたことに気づいた。
「とりあえず、家帰ってシャワー浴びたい……」
ぽつりとつぶやくと、サヤが少し目を細めた。
「うむ」
レデウスは何も言わず、尻尾をゆっくり揺らす。
三人は静かに展示室を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇
シャワーの音がかすかに響く中、サヤは結衣の部屋のソファに腰を下ろしていた。
城の玉座のような威圧感はない。だが、しっくりとくる座り心地だった。
窓の外には、太陽の光を反射するビル群と、行き交う車の流れ。異世界の戦場とはあまりにも違う、静かな都市の景色。
サヤは視線を巡らせ、キャットタワーの上で目を閉じるレデウスに目をとめる。
彼は時折、耳をピクリと動かしながら、何かと通信しているようだった。
「……どういうことだ」
サヤは独り言のように呟いた。
心の中に、どうしても消えない違和感があった。
――紗耶、なぜだ?
——なぜ、あんな記憶を結衣に見せた?
——なぜ、儂は今までローブに触れることができなかったのか?
——なぜ、結衣にはそれが可能だったのか?
そして――
——結衣に、何を伝えようとした?
結衣が体験したローブに宿る “意思” の世界。
彼女はそこで「紗耶」として戦い、何かを感じた。
だが、サヤにはわからない。
「なぜ、儂を拒む……」
記憶の中の彼女は、聡明で強く、笑顔を絶やさないながらも、どこか儚げだった。
ともに歩み、戦い、そして——。
彼女は最後に何を思い、何を遺したのか。
それを、儂は知らない。
サヤはふっと目を閉じ、ソファに深く背を預けた。
なぜ、こうも胸がざわつくのか。
それは、少年時代の憧れや嫉妬に似た、青臭い感情のように思えた。
——そんなことがあるのだろうか?
「意地の悪いやつめ……」
ふと気づくと、口角がわずかに上がっていた。
思わず口元を抑える。
「ふん……次、会うときは言ってやらねばな……」
小さな疑問が胸の奥に沈んでいく。
儂はとっくに紗耶の全てを知っていたつもりだった。
だが、違ったようだ。
とうに忘れかけていた、もどかしい気持ちが込み上げてくる。
そうしている間にも、バスルームからシャワーの音が止まる気配はなかった。
——その時、サヤはまだ気づいていなかった。
“結衣が何を思いながら、そのシャワーを浴びているのか” を。
◇◆◇◆◇◆◇
熱い湯が肩を流れ落ちる。
結衣はシャワーの水流をぼんやりと眺めながら考えていた。
——ローブを触った時、わたしは「紗耶」になった。
——そしてわたしは、「ローブ」にもなった。
——「本物」とは誰かの “意思” が込められた物……。
——じゃあ、コスプレ衣装だって “装備” なりうるのかも……?
湯気の中、結衣はふと自分の身体を見下ろす。
――「魔導婚礼装甲・改」
今は脱衣所の隅に置かれてあるが、あれもまた、装備としての可能性を秘めているのだろうか。
「でも、今はまだ、ただの衣装……」
戦場ではローブが、ただの布ではなく、紗耶の “装備” として機能していた。
「そう考えると……」
結衣の思考が少しずつまとまり始める。
——着ただけでは “装備” にはならない。
——けど、戦うための “意思” が必要になった瞬間、それは “装備” になる。
——だったら……?
次の瞬間、結衣の中で何かがひらめいた。
「っし……試してみよう」
シャワーの温度を少し下げ、頭から水を浴びる。
赤い鉄を冷ますように。
――ガチャッ
結衣はバスタオルを巻きつけたままバスルームを出た。
「サヤちゃん、一剣手合わせしない?」
予想外の言葉に、ソファに座っていたサヤが微かに眉を動かす。
「……は?」
レデウスの尻尾が、ゆっくりと揺れる。
「ちょっと、答え合わせがしたいの」
「……なに?」
「わたしがさっき見たもの、本物かどうか!」
その言葉に込められた意図を、サヤはまだ理解していなかった。
◇◆◇◆◇◆◇
特別展示室に再び静寂が満ちる。
レデウスを中央に挟み、結衣とサヤが向かい合う。
「……ほんとに……ほんとにコレで大丈夫なんだよね?」
結衣がヘッドドレスを確認しながら問いかけると、サヤは木剣をくるりと回し、肩をすくめた。
「さっき試しただろう。怪我はせぬ――ただ、響きはするかもしれんがな」
「てことは、普通に痛いんだ……」
「多少な」
結衣はもう一度だけ魔導婚礼装甲・改の「フル装備」を確認する。
強力ストレッチ素材のボディスーツ、厚みたっぷりのバッスルスカート、各種装甲パーツに装飾品、腰にはデフォルト武器の銃。
着慣れた剣道防具は、ない。
「まぁ……そういうもんだから、そういうもんだよね」
手にした木刀をぐっと握り直し、一度深呼吸する結衣。
サヤの眉がわずかに動いた。
「もう一度聞くが……本当にいいんだな?」
「これでもわたし、剣道五段だからね??」
その言葉に、サヤが皮肉っぽく答えた。
「つまり…… “競技者” だな」
結衣は肩をすくめた。
「ま、こっちはこっちで『本物』よ」
「ほう……」
サヤが小さく笑う。
レデウスが二人を交互に見渡し、ゆっくりと口を開いた。
「それでは……始めます」
空気が張り詰める。
「——はじめ」
結衣は木刀を左手に持ち、腰を落としながら正眼の構えを取った。
木刀の切っ先が、サヤの喉元へとまっすぐ伸びる。木刀を握る手には力みはなく。呼吸も深く、動作の流れも自然だ。
サヤは短い木剣を片手で持ち、特に構えをとることもなく、ただ相手の動きを観察している。
対峙する二人の間合いは、長いようで短い。
結衣はじりじりと足を運ぶ。
摺り足で、一歩ずつ前へ。
呼吸を深く整えながら、攻め込む機会を探る。
しかし、サヤはまったく動かない。それどころか、木剣を片手でぶらりと下げたまま、微動だにしない。
(……「愚者の構え」? いつでも来い……てこと?)
相手が動かないなら、こちらが動くしかない。
結衣は一気に間合いを詰め、木刀を振り上げた。
次の瞬間、踏み込む。
「——面ッ!!」
鋭く打ち下ろされた一撃。
だが——
サヤはほんのわずかに左へ身をずらしただけで、それを避けた。
(避けた!?)
振り下ろした瞬間、目の前のサヤが消えたように見えた。
(消え――違う、「バインド」ッ!?)
結衣の木刀が空を切った瞬間、サヤは剣の軌道を誘導するように剣を当てて流し、逆の足で踏み込んでいた。
「——遅い」
サヤの木剣が、結衣の横腹へと鋭く突き込まれる——直前、結衣は瞬時に体をひねり、間一髪で回避した。
(うそでしょ……あれ、子供用の木剣でしょ!?)
間髪入れず、結衣は左足を前に踏み込み、体を開くようにして剣を横に振る。
「——胴ッ!!」
「フッ……」サヤが鼻を鳴らした。
「まずは」
サヤの木剣が、弧を描くように動いた。
「思考する時間を減らせ」
結衣の木刀とサヤの木剣がぶつかり、互いに火花を散らすような衝撃が走る。
(か、硬ったぁ!!)
サヤの握力は、片手とは思えないほど強い。結衣の木刀が押される。
「はっ……!」
結衣は咄嗟に木刀を引き、サヤとの距離を取る。
(すご……ほんとに強い……いや、強すぎでしょ!?)
サヤはほとんど動かない。まるで、結衣がどう動くか、未来が分かっているかのように。
結衣は一度力を緩め、木刀を握り直すと、眉間に力をこめた。
(なら――出鼻で!)
一歩深く踏み込み、剣先を下げる。
だが、サヤはそれも読んでいた。
結衣の攻撃が届く直前、サヤの体が鋭く跳ねる。
そして、木剣が正確に結衣の足元を狙う。
「——しまっ――」
刹那、結衣の足が払われ、視界がぐるりと回る。
(そっか……これ「剣道」じゃない!?)
次の瞬間、結衣は本能的に木刀を手放し、無意識に体をひねった。
——回る。
「かけもち体操部員」だった記憶が蘇る。
回転しながら、足を地面に向ける。
そして——ハイヒールでの着地もなんとか成功。
「おわ! ……っ……とと……」
結衣は息を整えながら、サヤを見据えた。
サヤの木剣が、すんでのところで止まっていた。
「……ほう」
サヤの唇がわずかに上がる。
「今のは……悪くなかったな」
結衣は肩で息をしながら、床に転がった木刀を拾い上げる。
「ちょっと分かってきたかも」
サヤが眉を上げた。
「……何がだ?」
結衣は魔導婚礼装甲・改を見下ろす。
「この “装備” での戦い方」
サヤの顔がわずかにほころんだように見えた。
「ふむ……」
結衣は腕を軽く回しながら、ふっと笑った。
「——もう一本、お願い」
静寂が満ちる。
レデウスがゆっくりと尻尾を揺らした。
「サヤ様……よろしいでしょうか?」
「もちろんだ」
サヤが木剣を宙に放り投げ、別の手で受ける。
そして、軽く構えた。
「すこし、楽しくなってきた」
——魔導婚礼装甲・改は、まだ結衣の “装備” ではない。
だが、もはや ”コスプレ衣装” でもなくなりつつあった——
◇◆◇◆◇◆◇
——結衣の動きが変わる。
先ほどまでの「剣道」の構えではない。
魔導婚礼装甲・改をまとった一人の剣士が、新たな「道」を歩みだした。
サヤがすぐに察する。
「……ほう」
彼女はいたずらっぽく木剣を振り、間合いを図る。
「今度はどうする?」
結衣はニヤリと笑った。
「さぁ、どうしようかな?」
レデウスの尻尾がゆっくりと揺れ、宣言する。
「——はじめ」
次の瞬間、結衣は一気に踏み込んだ。
ふわり、と。
まるでウェディングドレスの裾が広がるように、軽やかに足を踏み出す。
木刀を構えながら、しかし前方へ突撃するのではなく、ゆるい円を描くように動く。
右足を軸に、バッスルスカートの装甲が薄く空気を切る。
サヤがすぐに察する。
「む……?」
結衣は一歩、軽やかに跳ねる。
スカートの裾が広がり、装甲の重みが遠心力へと変わった。
(この “重さ” だって、利用できる——!)
サヤがはじめて間合いを詰めてくる。
結衣もまた、跳ねるように後退する。
——そして、フリルが宙を舞う。
(ここだ!)
結衣は瞬間、足を強く踏み込み、サヤの右側に回り込むように動いた。
「——ッ!」
サヤの木剣が瞬く間に振るわれる。
しかし結衣は体をそらし、ボディスーツの伸縮性を活かしてバックステップ——ギュッと身体を締め付けるような音。
さらに——ニーハイブーツの接地面を最小にして、素早く旋回。
「ほう……」
サヤの口元が少しだけ、愉快そうに歪む。
木刀と木剣が、交錯する。
結衣は攻撃の合間に、ジャケットをひるがえしながら、一瞬の死角を生み出す。
サヤが再び木剣を振るうが——結衣はその場でターンしながら、それをいなす。
「稚拙だが――光るものを感じる」
結衣の胸が高鳴る。
剣道では、相手の剣筋を読むことが重要だった――けど、この戦いではそれだけじゃ足りない。
(これは、剣道ルールの試合じゃない)
(実戦なら、使えるものはきっと全部使う)
呼吸を整え、さらに跳ねるようなシェネターンで旋回しながら、木刀の柄を持ち直す。
裾の装甲が遠心力で広がる。
体をひねる勢いを利用し、回転の最後に木刀を横へと薙ぐ――が、木刀を振るのではなく、先に「フェイント」として体を傾けた。
「——ふッ!」
サヤがそれに即応し、木剣を跳ね上げ——結衣の木刀が、サヤの胸元を掠める。
刹那、サヤの足が素早く動いた。
「甘い」
サヤは一歩踏み込み、木剣を斜めに構えたまま、結衣の足元へと突き込んだ。
(ダメだ……っ!!)
結衣は即座に反応するが、もう身体を引き戻す余裕はない。
(では——「跳ぼう」)
魔導婚礼装甲・改がささやく。
脚が、頭よりも先に動いた。
右足を引き、左足を蹴り上げる。
スカートが、ジャケットが、装甲が、ふわりと舞い、結衣は空中で一回転するように跳躍した。
——ジャンプターン。
サヤの木剣が、それを迎え撃つ。
——しかし、結衣はすでに次の動きへと移っていた。
全装備の広がりを利用し、空中で重心を変え、回転しながら腰に手を伸ばす。
アーマージャケットのすき間から現れた「収束銃花」が、サヤの額を捉える。
サヤの瞳が、銃口を興味深そうに見つめた。
「……ほう」
——しかし、次の瞬間。
木剣が、銃口を横へ叩き落とした。
「ッ!」
銃が床に転がる。
結衣はそのままスカートの裾を翻しながら着地。
だが、結衣はその流れを読んでいた。
——ドレスが舞い、剣が閃く。
結衣はサヤの右側へ回り込むようにステップを刻み、瞬時に低い姿勢から剣を振り上げる。
「せめて、あと五手は欲しいな」
サヤの木剣が、結衣の木刀を軽く弾く。
切っ先は結衣の脇腹に添えられている。
——結衣は確信した。
(迫れた……!)
魔導婚礼装甲・改は、確かに重い。
ピチピチのボディスーツは防具としては何の役にも立たず、デコラティブな装飾品や装甲は「剣道」の妨げにしかならない。
だが、それすらも忘れてしまう高揚感。
(これが……「装備する」ってこと?)
結衣は体をひねる勢いを利用して、サヤの木剣を流し、すぐに二回転するようにステップを刻む。
スカートが舞い、空気が裂ける。
まるでドレスの裾が剣の軌跡を描いているかのようだった。
木剣が、結衣の木刀を軽く弾く。
「おぉ」サヤが満足そうに微笑む。
「なかなか良いぞ――」
結衣は肩で息をしながら、笑った。
「ちょっと分かってきたかも」
「……何がだ?」
うれしそうに返すサヤ。
結衣は魔導婚礼装甲・改を見下ろした。
「この “装備” での戦い方」
サヤはしばし結衣を見つめ、ふっと笑った。
「ではもう『本物』だ……それは」
レデウスが、静かに拍手するかのように前足を揃えた。
「いかがなされますか?」
結衣は木刀を構え直し、サヤに向かって言った。
「——もう一本、お願い」
サヤの笑みが深まる。
「仕方がない……付き合ってやろう」
カッ、カンッ――!
特別展示室に、二人の息遣いが響く。
※魔法メモ
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【 リアクション・ブクマ・コメント・ください! 】
種別:生活魔法
作用:作者のやる気を引き出す
反作用:なし
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