6話 意思なき物 - 前編
物に宿る「本物感」とは何だろう?
先ほど届いた「シン・コミケ用」コスプレ衣装を着用し、結衣は鏡の前に立っていた。
「これどう思う、レデウス?」
「とてもお似合いです、結衣様」
「えぇー……それだけー?」
レデウスは軽く尻尾を揺らし、キャットタワーに飛び乗った。
「元デザインをただ模倣するだけでなく、現実的な構造的解釈とアレンジが加えられ、フィッティングも完璧。すばらしい衣装です」
「いやー、それは分かってるんだけどー……うーん……」
結衣の質問の意図が分からず、混乱するレデウス。ネットに答えを求めるも、彼女の納得しそうな答えは見つからない。
「少しお待ち下さい、結衣様。もう一度検討いたします」
レデウスは前脚をしまい、目を瞑った。
――コン、コココン、コン
6月末、梅雨の晴れ間。午前10時を少し過ぎた頃。結衣の自宅マンションに小さなノック音が響いた。
しかし、ホームAI「ベル」は玄関「扉」の来客に反応することなく、沈黙を保っている。
「サヤ様がお越しになられたようです」
キャットタワーにいたレデウスが耳をピクリと動かし、顔を上げた。
「……え? サヤちゃん来てるの? 今? 玄関?」
結衣はソファから身を起こした瞬間――
空間に揺らぎが生じ、その中から現れた白い手が、リビングの「扉」を開いた。
「おお、結衣。入ってもよいかー?」
次の瞬間、光の中から滲み出るようにサヤが現れた。
「わぁぁっ! もうっ! なんで急に入ってくるの!?」
結衣は飛び起き、思わず手に持っていたスマホを取り落とす。
それはサヤの来訪による驚きもあったが、むしろ彼女の「男姫系制服ファッション」に目を奪われたからでもあった。
興奮――(うわっ! なななな、なにその格好!?)
欲望――(サヤちゃんそれ! 流行っているけど、元ネタ知ってて着てんの!? 発祥はドエグい18禁VRゲームやんねぞ!?)
「次来るときは、ちゃんと “玄関ノックしてから” って言ったじゃん!?」
「ノックしたろう?」
「してたけど! もし “何か” してたらどうするのよ!?」
不安――(サヤちゃんだって、人のプレジャータイムとか見たないやろ……)
欲望――(いや、むしろそのシチュ……ルート入ってるやん……)
サヤは不思議な顔をする。
「“何か” とは? もしかして――」
そして部屋を見回した後、結衣の姿をじっと見つめた。
「……その奇妙な格好と関係しているのか?」
「ん? あ、これ?」
結衣は自分の姿を見下ろす。
光沢のある白のボディスーツに、魔導バッスルスカート、背中に発光エフェクトが付いたアーマージャケット――ニーハイブーツから覗く太ももには、封印解除ベルトが取り付けられている。
彼女が着ていたのは、SFファンタジーゲームのヒロインが装備する「魔導婚礼装甲・改」だった。
「これ、いちおう最強の魔導ドレス」
結衣は堂々と胸を張る。
「もちろん本物じゃないよ? コスプレ衣装だからね?」
「だろうな……」
「あ、コスプレってわかるよね? こないだ『儂は今、舞台関係の仕事をしている(キリッ)』って言ってたし」
「たしかに言ったが……」眉をひそめるサヤ。
結衣の「最強の魔導ドレス」は、自身が知るどの装備よりも、斬新で奇抜だった。それはつまり、「実際の異世界」よりも非現実感をともなっているということだ。
スカートの装甲めくりながら、結衣が続ける――
「舞台関係者から見て、これってどんな感じに見える? いちおう夏の『シン・コミケ』用なんだけど……」
「どうと聞かれても……」サヤは腕を組み、キャットタワーの上をちらりと見るサヤ。
大あくびの後、顔を伏せる猫。
「なんというか……素材は悪くない。装飾も精巧。サイズも完璧だ」
「うんうん……で?」
「露出については、儂がなにか言うまでもあるまい……」
「からの~?」結衣は目を瞬かせながら、サヤに歩み寄る。
「まてまて! 何を言わせようとしているのだ!?」
「なんかこう、違和感があるというか……物足りない気がするんだよね……」
結衣はため息をつきながら、自分のスカートの装甲を指で弾いた。硬質な音が軽く響く。
「そりゃ本物じゃないんだけど……」
衣の脳裏に、以前見たサヤの鎧や武器がよみがえる。
金属のひんやりした質感、魔力が滲むような鈍い輝き。重量感のある造形。
それは単なる「良い素材」や「良い技術」ではなく、何か別のものが込められていた――まるで持ち主の影が残っているように。
「簡単な話だ」サヤは、真剣な表情で結衣を見つめる。
「物はただ存在するだけでは意味を持たぬ。誰かの “意思” が込められて初めて、それは本物になる」
「意思……?」
「お主の装備には、それが込められておらん。ただそれだけの差だ」
「ううん……?」
結衣は鏡越しに自分の姿を見つめ直す。
魔導ドレスのスカートは美しく広がり、胸に取り付けられた真っ赤な「結婚核」がキラキラと輝いている。
それなのに――妙に頼りなく感じられた。
結衣はゴクリと喉を鳴らす。
「ダメだったらいいんだけど……もう一度、サヤちゃんの鎧と武器を見せて――」
「ダメだ――と言っても譲らんだろう……お主らは強引な血筋だからな」
彼女は呟きながら静かに片手を前に伸ばす。
その手がかすかに光を帯びた瞬間、空間全体が揺らぎ始めた。
「本当に見るだけだぞ」
結衣が嬉しそうに手を合わせるのを横目で見ながら、サヤは低い声で呟いた。
「『懐古遺殿』――」
その言葉が発せられると同時に、空間全体が波打つように揺らぎ始めた。
周囲の空気が一瞬にして変化し、冷たい風の流れが結衣の髪を揺らす。
◇◆◇◆◇◆◇
結衣が目を開けると、広大なエントランスホールの中央に立っていた。
「魔導婚礼装甲・改」をまとったままで――
視界の端には巨大な石造りの柱がそびえ立ち、巨大なドーム型の天井を支えている。壁面に施された幾何学的彫刻や図像は、まるで魔法陣のように淡く光を放っている。
そして、静寂。
「わあ……博物館みたい……」
その声はずっと遠くへ吸い込まれていく。
「――結衣様? ご気分は?」
足元から聞こえた声に、結衣は「ここは……?」と我に返った。寄り添うように立つレデウスが彼女を見上げている。
「時間の流れがとても遅い……どうやら別次元に作られた、『閉じた空間』のようです」
「へ、へぇ……別次元……」
もはや呆然と辺りを見回すしかない二人を後に、サヤは淀みなく歩き出す。
「ほれ、行くぞ」
「あ、ちょっと……」
象牙色の床に刻まれた幾何学模様が、誰かを導くように規則的に淡い光を放っていた。
淡い光が舞う通路の両側には、さまざまな「アイテム」が並んでいる。
使い込まれた旅行バッグ、ボロボロの学生服、カビた革の鎧、凹んだステンレス水筒、傷だらけの盾。
それは、ただ並べられているのではなく、まるで意志を持っているかのように空中を漂っていた。
そして、ときおり、かすかに震える。
結衣は、一瞬、何かの視線を感じた。
(……誰かいる?)
ふと、古びた盾の前で足を止める。
何の変哲もない傷だらけの盾。しかし、結衣が目を向けた途端、周囲の空気が微かにざわめいた。
まるで、それが彼女に「話しかけたい」とでも言うかのように――
「これって……誰かが使ってたやつ?」
無意識のつぶやきに、サヤは振り返ることなく答える。
「その通り。ここにある物は、全て誰かの “意思” を宿したものだ」
サヤは、近くの光を指差して言う。「それに触ってみろ」
「……え、これ?」
結衣が光に触れると、その周囲が一瞬だけ揺らめいた。彼女の視界にホログラムのような映像が浮かび上がった。
(……記憶……?)
焚き火の明かりが揺れる洞窟のような場所――火を囲むように十人ほどの人影が見える。
薄暗い空間には、煙と焦げた木の匂い。
結衣は盾にもたれかかりながら、隣に座る少年を見下ろしていた。
「本当に幸運だったなお前ら! もし俺らがいなきゃ、今ごろとっくに魔物の腹ん中だぞ!」
「ほんとすんません……」
少年に亡き息子の面影を重ねながら、結衣は豪快に笑う。
「がはは! まだ若ぇんだから無理すんな? 逃げるが勝ちだぞ! がはは!」
「あざっす……ちょっと休んだら撤退します……」
うなだれる少年を見つめていると、結衣の心に後悔と自責の念が流れ込んでくる。それを振り払うように、結衣は心を奮い立たせた。
「そうだ! 戦略的撤退は冒険者の必須スキルだぞ! "少年組合” には上手く言っと――」
言葉が途切れ、視界が地面と垂直になった。
焚き火の明かりが横向きに揺れ、血の匂いが鼻を刺激する。
剣戟がどこからともなく響き、そして映像は途切れた。
恐怖が結衣の背筋を撫で、胃から酸いたものが逆流してくる。
「――っぷ! (ゴクン)……うえぇ……何……これ!? ホログラム!? とかじゃないよね!?」
微かに震える声で叫ぶ結衣に対し、サヤは淡々と答えた。
「それは、記憶……あるいは "意思” だ」
結衣が盾に近づくと、そこには黒いシミが飛び散っており、「あの時」なにが起きたのかを物語っているようだった。
そして、無意識に表面に手を伸ばす――
(パチッ)
「え……?」
まるで見えない壁に阻まれたように、指先が弾かれる。
もう一度試してみるが、結果は変わらない。指先に伝わるのは、冷たく硬い抵抗感。
(触れない……)
サヤが静かに口を開く。
「 ”隔離” してある。時間と状態を孤立させ、許可なき者を拒絶するのだ」
「許可って……サヤちゃんの?」
「ちがう」
「じゃ、誰の……」
「モノの、意思」
結衣は盾をじっと見つめたまま手を握りしめた。その視線には、自分自身への問いかけのような色が浮かんでいた。
(物の意思?……者の意思?……どういうこと……?)
◇◆◇◆◇◆◇
目の前にそそり立つ重厚な扉。その荘厳さに、結衣は思わず息を呑んだ。
「ここは……?」
「冒険の終着地点……特別展示室のようなものだ」
そう静かに呟くと、結衣の背筋を震わせるような重い沈黙が辺りを包む。
サヤは無言で頷き、そっと扉に手をかざした。
――スゥ……
淡い光がサヤの掌から広がり、扉の表面に無数の光の粒子が舞い上がり扉が開く。
「――気の済むまで見るがいい」サヤが静かに言い放つ。
結衣は静かな特別展示室へと足を踏み入れた。
どこか鉄のような冷たさと、血のような錆びた匂い。
まるで脈打つ音すら吸収されてしまいそうな静けさ。結衣は自分の呼吸音さえ、大きく響くように思えた。
静寂を超えた無音。
空気はどこか硬質で、まるで時間すら凍りついたかのように張り詰めている。
円形に並ぶ――五つの台座。
そこに並ぶのは、仲間の遺した最期の装備。
ただ並んでいるだけではない。彼らはこちらを “見ている”’
白銀の鎧と剣。
朱黒の甲冑と刀。
黄金の重装鎧と槍。
緑灰の軽装鎧と弓。
そして――
紫黒のローブと、杖。
紫黒の生地が、展示室の淡い光を吸い込むように沈み、僅かにきらめく。まるで結衣を待っていたかのように、裾がわずかに揺れた気がした。
「言っておくが……」後ろからサヤが呼びかける。
「ここには、さっきのような―― ”体感記録” はない」
彼女は淡々と言い放つと、端に置かれたソファに腰を下ろした。
「……終わったら言ってくれ」
そして、いつの間にか手にしていた分厚い辞書のような本を開き、そのまま静かにページをめくり始める。
結衣はふと、自分の装備を見下ろした。
「魔導婚礼装甲・改」
最新の3Dプリント技術による緻密な造形と装飾、素材感と質感を追求し、本物さながらの特殊塗装を施された、最高級のコスプレ衣装。
完璧なデザイン、フィッティング。
細部までこだわり抜かれたディテール。
――なのに。
(……やっぱ全然ちがう……)
目の前にある遺品たちと、コスプレ衣装は、やはり何かが決定的に違う。しかもしれは、ただの「素材」や「技術」といった、次元の話ではない。
結衣は小さくため息をつき、視線を上げた。
紫黒のローブが、結衣を誘う。
意識せずに足が前へ出る。
「――触れんぞ」
サヤの鋭い言葉に、結衣は驚いて手を引っ込める。しかし、誘われるように手が伸びる――
その瞬間。
「――っ!!?」
結衣の体が引きずられるように揺らいだ。視界が歪み、空間がねじれる。
ドク……ドクン…
心臓の鼓動が、異様に大きく響く。
◇◆◇◆◇◆◇
結衣の視界がゆっくりと戻ってくる。
目の前には、黄昏の光に照らされた廃墟が広がっていた。
(あれ……?)
沈みかけの太陽が、赤く染まった雲の合間から覗いている。
(サヤちゃん『ホログラムはない」って言ってたはずのに……)
手をかざし夕日を遮ると――そこには、紫黒のローブの袖が広がっていた。
結衣は思わず息を呑む。
(さっきのローブ……)
確かに触れたはずのローブが、今は自分の体を包んでいる。
足元には足元には剥き出しの石畳。背中には折れた大きな石柱。かつて人々が暮らしていた痕跡が、そこかしこに残っていた。
崩れた家屋の隅に、布を巻かれたままの赤ん坊の人形。石畳の隙間に埋もれた、小さな靴。日常の名残は、静かに、しかし確かにそこにある。
だが、その背後にそびえる「高層ビル」だけは、異様なまでに冷たい光を反射していた。
黒いガラスの表面が沈む夕日を反射し、まるで異世界に存在しないはずのものが無理やり押し込まれたような違和感を醸し出している。
(え……ビル?……異世界に……?)
違和感を覚えるも、それに構う余裕はなかった。
遠くで轟音が響く。ビルの上層が歪み、その中から「何か」が吐き出される。
――様々な形をした「人造魂ノ者」
人型、獣型、魔物型、幾何形体――異世界にはありえない「魂なき魔物」のような存在。彼らはビルの破損した部分から次々と這い出し、地上へ降下していく。
関節のすき間から漏れ出た ”侵霧” が、まるでのろ|しのように立ち上がる。
「来るぞ! 戦闘開始!」
誰かが叫んだ。
「紗耶! 後ろは頼んだぞ!」
「まかせて!」
ローブの持ち主が答える。
(え!? 、「紗耶」!? わたしがサヤちゃん!?
結衣は反射的に振り向く。
そこには、剣を振り上げる、白銀の鎧をまとった男の姿があった。
(――あれは、「あの時」の鎧!? でも……なんで男の人が……?)
だが、思考する暇はない。
巨大な盾と槍を構えた黄金の騎士が先頭に立ち、一瞬の間に突撃する。
耳元で魔法の詠唱が響き、鼓膜を揺らす。周囲に潜んでいた味方部隊も、一斉に動き出した。
結衣の身体――紗耶が自然と動く。
「――『超電導共振》』!」
彼女が杖をかざすと、空間に魔法陣が描かれる。次の瞬間、低く唸るような雷音が響き渡り、巨大な人型ゴーレムの体が内部から砕け散る。
「今日の後衛は、安心感が違うぜ。今回の『生産工場』は楽勝っぽいな」
緑灰の軽装鎧をまとった射手が息をつきながら笑う。
「ちょっと! 真面目にやりなさい! 戦闘中よ!」
「はいはい、お嬢様」
男が光り輝く矢を射ると、それは数十個に分裂し、飛翔する小型ゴーレムを次々に破壊した。
ローブの持ち主の口元が、微かに笑みを浮かべる。
結衣は驚く――まるで、自分が本当にこの世界にいたかのように、感情が流れ込んでくる。
興奮、不安、恐怖――そして、絶対的な信頼。
(これが……戦争の記憶……)
戦場の空気、身も凍るような恐怖と不安、仲間への信頼、命を繋ぐための魔法――
すべてが「生きた」ものとして感じられる。
その時、上のほうで弾ける音がした。
ビル上層から吐き出された小さな瓦礫が、空中で形を変える。それは鋭利な鉄筆へと変形し、部隊全体に雨のように降り注ぐ。
「――貫通自爆型だ! 誰か、後衛を守れ!」
「俺が行く……」
朱黒の甲冑を着た「侍」が地面を蹴り、大きく後ろに跳ね上がった。彼が宙で印を結ぶと、背後に無数の刀が現れる。
刀はまるで意思をもったかのうように、鉄筆の先端だけを正確に断ち落としていく。
前方にいた緑灰の軽装鎧の男が叫ぶ。
「すまん、全部は無理だ!」
「え!? ちょっと、それって――もうっ!」
結衣の口から、自然に声が出た。
その瞬間、結衣を試しているかのように、ローブが重くなる。思考が加速し、膨大な「意思」が流れ込んでくる。
――愛する者を守りたい。
――仲間たちを生かしたい。
――この戦場で、何一つ失わせたくない。
――この世界を救い、還りたい。
その瞬間、ローブがざわめいた。
いや――ざわめいたのは、結衣の「中」
(……これが……『意志』……)
そして、次の瞬間、ローブは結衣の鼓動に呼応するように脈打ち、光を孕みながら、仲間たちを覆う魔法障壁へと変化していく。
まるで結衣の「想い」が形になるかのように。
「お願い――」
その感覚が頂点に達した瞬間――
爆風が襲い掛かる。
閃光。
衝撃。
そして、結衣の視界が暗転する。
「――っ!」
視界が歪み、感覚が遠のいていく。最後に聞こえたのは、誰かの優しい声だった。
「驚いた。まさかここに誰か来るなんて、思ってもみなかったわ……」
「え,aあなたは……誰?」
「ふふ、分かってるでしょ? jyあ、『あの人』にn□yr■▶■rk□って伝えておいt……」
戦場の喧騒が遠ざかる。
戦士たちの声も、爆発音も、金属が同士がぶつかる音も――全てが吸い込まれていく。
(あ……戻る……)
意識が暗転する直前、年を重ねたサヤのような女性が見えた。
そして――
――バサッ!
特別展示室の床に倒れ込む。
結衣は床に倒れ込んだまま、ローブを強く握りしめる。
レデウスが駆け寄る。
「結衣様!?」
結衣は、胸の奥に残る紗耶の「意志」の余韻を感じながら、ただ唇を噛みしめた。
「――っぷ!」
サヤが結衣の顔を覗き込む。
「結衣!? どうした!? なぜそれに触れた!? ――紗耶に、紗耶に会ったのか!? 」
「っ……はぁっ! はぁっ! ……っぷ……」
結衣はゆっくりと目を閉じる。
「……戦場に “わたし” がいた……ローブをまとって、みんなと一緒に戦っていた……」
彼女はローブをぎゅっと抱きしめる。
「あの人の想いを――感じた……」
彼女の中に残るのは、戦場のざわめき、仲間の声、信頼、使命感、そして――
“この世界を救い、還りたい” という、紗耶の切実な願い。
サヤがじっと結衣を見つめる。
「『紗耶』は……紗耶は何と言っていた?」
結衣は微かに首を横に振る。
「……分からない。でも――笑ってた」
サヤはしばらく結衣を見つめたあと、ふっと目を細める。
「そうか」
そう呟いたサヤの目は、どこか遠い何かを見つめていた。
※魔法メモ
/* - - - - - - - - - - - - - - - - /*
【 懐古遺殿 】
種別:収納空間魔法
作用:アイテムを保存する
反作用:なし
/* - - - - - - - - - - - - - - - - /*
【 超電導共振 】
種別:雷魔法
作用:超電導状態を作り出し、雷の振動で周囲の物質を共振させる。
反作用:巻き込み注意
/* - - - - - - - - - - - - - - - - /*
【 イイネ・ブクマ・コメント・ください 】
種別:生活魔法
作用:作者のやる気を引き出す
反作用:なし
/* - - - - - - - - - - - - - - - - /*