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想いは淡雪のように

図書館に併設されたカフェへ向かう途中、私のスマホが何度も震えた。


着信履歴を開くと母親からのものだった。あらかた、予定時刻を過ぎても一向に到着しない私への心配であるのは一目瞭然だった。


すぐに返信をして、用事で遅くなることを伝えれば済むことなのだけれども、この後、あやと2人っきりで話す事を考えると胃のあたりがひどく重く感じ、自然と足が止まっていた。



あや、ごめん。」



何気なく呼び止めただけだったのに、あやはとても切なそうな表情で私を見つめた。



「母親から連絡で。早く家に帰らないと行けなくなった。」


「……そっか。」



上着を手渡し、あやの横を足早に通り過ぎようとすると急に手を掴まれた。驚いて振り向くと、俯きしゃがみ込むあやの姿があった。



「……いかんで。……もう少しだけ。」


「だ、大丈夫!? 体調悪い? 寒かった?」



思わずあやの目の前にしゃがみ込み、顔をのぞくと至近距離で視線がぶつかった。急に体温が上昇したのがわかる。前髪の隙間から見える瞳は、まっすぐであの頃とかわらず綺麗なままだった。



「……何か言って……。あと、手……離して。」



私はにらめっこに耐えきれず視線をそらした。恥ずかしさで言葉がうまく出てこない。その間も、あやの手はカイロのようにポカポカと感じた。



「大丈夫、体調悪くない。寒くもない。」


「じゃ、手……」


「もう少しだけ。」



ふりほどこうと思えばふりほどけるくらい優しい手からは、あやの迷いが伝わってきた。……私は何を試されてるの?


あやに奥さん(彼女)らしき人がいるのを知っていて流されるかどうか? とか? まだあやのことを忘れてないか? とか? 考え始めたらよくわかんなくなってきた。



「……ふふ。」



今、あやに笑われた? 恐るおそるあやに向き直ると出会った頃の柔らかいはにかむ笑顔がそこにあった。



「ごめん、ちょっと意地悪した。さっき、俺のこと知らない人みたいに接した罰。」


「もう、いろいろ心配したじゃん!」


「でも、……咲夏さなともう少し一緒にいたかったのはほんと。」



あやは私の手を少しだけ優しく撫でると、そのまま解放した。撫でられた手はぞわぞわと痺れる。咄嗟に手を引っ込めポケットに突っ込んだ。



「そうだ、これ。」



あやの手のひらには、キラキラと輝く雪の結晶のキーホルダーがのっていた。何であやがこれを持ってるの?



「……ようやく渡せた。」



そう言って、私の手をポケットから引っ張り出すと手のひらにキーホルダーをのせた。

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