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初雪

「ねぇ、来年も一緒に初雪はつゆき見れたらいいね……。」

「……そうだね……。」


あの時にはもう、あやの中に私という存在はなかったのかもしれない。



今年も12月に入り、気温がぐんと下がり来週の降雪予報がいよいよ現実味を帯びてきた。気温とは裏腹に、街中はクリスマス一色、煌びやかに彩られている。


「俺、来週部活で帰り遅くなりそうだから先帰っていいよ。だいぶ寒くなってきたし、咲夏さなの体調も心配だから。」

「わかった。じゃ、今日は一緒に帰れる?」

「いいよ。久しぶりに家まで送る。」 


家まで……。いつぶりだろう? 私の方が一つ先の停留所なのに、一人じゃ心配だからとよく家まで送ってくれていた。あの頃のあやはよく私に笑いかけてくれていた。


少し照れながら笑うその表情が何よりも大好きだった。付き合って1年と少し、もう2人の間に感じられる愛情なんてほとんどなく、惰性のまま付き合っているのと変わらなかった。


あや……。」


停留所でバスを降りると、私の先を行こうとするあやを呼び止めた。ずっと前から考えていた。あやは優しいから、自分からは言い出さないことはわかっていた。


「ありがと。ここで大丈夫。それと……私たちもう別れよう。」


そう言って、あやの横を通り過ぎた。


咲夏さな……。待って……。」


あやが消え入るような声で引き止めようとしたが、聞こえないふりをしてその場を後にした。その夜、何度もあやからの着信があった。今、あやの優しさに甘えたら、これまでと何も変わらない。ただ、私だけが好きで、やり場のない「好き」は私の心を締め付けるだけだった。


ふと、窓の外を見ると予報よりも早く雪が空を白く染めていた。


それから間も無くして、あやは親の転勤で四国のどこかの県に引っ越したと聞いた。そんな大切なことも話してもらえない仲だったとは……。


「はぁ……。」


口からでた息は空中で白く変化した。足元はすっかり雪道で、いつかこの雪が溶けるみたいに、あやへの気持ちも消えて無ってくれればいいのに! と未練がましい私はただただ時間が過ぎるのを待つしかできなかった。

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