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トラブル ロバート・クリフトンSide

 私はぐっすり寝ていたところを叩き起こされた。

 ふかふかのベッドから体を引きずるようにして、激しく叩かれるドアの方にフラフラ歩み寄った。この状況では、非常に困った問題が起きたらしい。


 ドアを開けると、テリーが立っていた。腹心の友でもあり、ウィルソン子爵家の子息のテリー・ウィルソンとは、スティーブン王子と私を含める3人で同じ学校に通う学友だった頃からの付き合いだ。


 サラサラのブロンドヘアをかきあげ、テリーは眉間に皺を寄せて、状況を書き留めた紙を私に渡してきた。テリーによると、ハンルソン・コート宮殿と呼ばれるブルク家で何か問題が起きたようだ。


「どうした?」

「まずいことが起きたようだぞ。スティーブン王子が発表した結婚相手の聖女に言いがかりのようだ」

「まぁ、放火もされたし、我こそはと王子の結婚相手の座を狙っていた貴族令嬢とその親にとっては、目障りなんだろうな」


「そんな呑気なことを言っている場合じゃなさそうだ。ブルク家のゾフィー令嬢が置き手紙を残して失踪した。その置き手紙の内容が問題だ。第二聖女のフランソワーズ嬢が王子に媚薬を盛ってたぶらかしたと告発する内容のようだ。治安判事が既にハンルソン・コート宮殿に呼ばれた」


 私はハッとしてテリーの顔を見た。


 ――薬を盛った?確か昨日、王子は薬を盛られたはずだ。


「犯人は別だ。確かに薬を昨日盛られたが、解毒したのがフランソワーズ嬢だ」

「それだともう一つ疑問点が残る。媚薬が下手に効いて、誤ってそばにいた聖女に恋をしたと王子が勘違いをした可能性はないだろうか?あまりに突然の結婚発表で俺たちも驚いただろ?」


 テリーの言葉に私も沈黙した。


 ――確かに一理ある。第一聖女だったヴィラ嬢に恋をしていたはずのスティーブン王子が、今まで見向きもしなかった第二聖女フランソワーズ嬢と結婚を発表した理由が、私ですらいまいちわからなかったのだから。


『我が国の王子を薬の力で不正に我が物にしようとする悪女フランソワーズの横暴を暴いてくださいませ』


 紙に書き写したらしい置き手紙の内容をテリーは読み上げた。


「穏やかじゃないぜ。ゾフィー令嬢は死を持って抗議するとして、告発をしている」


「まさか……ゾフィー令嬢は死んだのか?」


 ――頼む。生きていれくれっ!こんな勘違いで死なれたら末代まで呪われそうだ。そもそもフランソワーズ嬢は自ら薬を盛るような女性ではない。


「まだ分からない」

「なんと……」


 私は絶句した。


「ブルク家側は一人娘を失ったのだから、しつこく公平な裁判を要求するだろう」

「聖女が法廷に引きずり出されるということか?」

「そうなるね」


「治安判事はまたもブルク家だな?」

「残念ながら、そうだ」


「第二聖女を亡き者にしようとしているんだな」

「そうなる」


 私は途方に暮れた。フランソワーズ嬢が無実なのは知っている。


「いずれにしてもスティーブン王子にすぐに知らせなければならない」

「そうだな」


 私とテリーはニーズベリー城に向かって矢のように馬を駆けさせた。




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