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最後の真実

作者: 龗香

子爵令嬢リュイーズは出先の茶店で伯爵家嫡男ジャックと出会った。


ふわりと揺れる前髪は艶やかに、屈託の無い笑顔と細身の身体から伸ばされた剣タコの指は、つまずいてバランスを崩したリュイーズの肩をそっと支えてくれた。


出会いは運命的で、結婚は政略なストーリーが上書きされていった。


豪商ディオモンの名を持つ祖父の影響力を欲した伯爵家嫡男ジャックの婚約者にと根回しがされ、社交界で挨拶回り、共同事業のプロットで幾つか握手が交わされてやっと二人は教会の鐘を鳴らしたのだった。


〜ある晴れた日の午後〜

遊びにいらっしゃいな。

義母のセリフである。

リュイーズには、そろそろまたいじめたくなっちゃった☆と聞こえている。


ジャックとリュイーズの間には可愛い女の子ミシェルが生まれていた。


ジャックの実家ですやすやと眠るミシェルと、添い寝するリュイーズ。

「母さん毛布出してやってよ。」

「え?なあに?」

「だから毛布。俺が出すよ。どこ?」

「ああはいはい。」


ジャックは実家に帰るといつも泥酔するまで酒を飲む。 

なので今回はほどほどにしてよね、と言いつけておいた。


けれどもやっぱりフラフラとした足取りでそろそろ帰ろうか、とやっっっと言い出してくれた。


リュイーズが毛布を畳んでいると、

「まあ、そんなことしなくていいのよ。そんなことわざわざしていただいて申し訳ないわ〜。」


「……。」

何だか腑に落ちないが上手く言葉にならないので黙っていると、ジャックがフラフラと義母に近付く。

「すいません。」

「いいのよ〜(貴方も大変ねという顔でジャックを見る義母)」


「すいません。(ニッコリ)」

毛布を義母に渡しながらリュイーズは違和感の真実に思いつく。

「いいのいいの。」

にやにやとする義母の顔は見ずに、リュイーズはジャックに向けてニッコリと微笑む。


今の見たか。気付いたか?気付いてないんだろうけどね?

今のガッツリ嫁いびりだからな?

いいかよく聞け?

使った毛布畳むのって人として当たり前だからな?

当たり前のことして、当たり前のことするなって言われたの気付いてんのか?

悠長に畳んでないで早く、毛布貸していただいてありがとうございますって言えよって催促してる義母に「すいません」って何?

親子ごっこ?貴方達の親子ごっこの為に私利用するのやめてくれる?

それ無駄に見せつけられてるこっちの気持ちくらい察して?

いいか。正しい流れはこうだ。


①毛布畳む。

②ありがとうございましたと言うリュイーズ。

③いいのよと言う義母。

④すいませんと言うジャック。


②が抜けてるのわかる?

ありがとう言う前にありがとうの催促するのマジないわ。

言い方もわざとへりくだった言葉使いだし、気持ち悪い。

天然のフリしてる義母気持ち悪い。

バカなんだろうな。天然のフリは男には利いても女にはバレバレなのわかんないのかな。わかっててやってるならタチ悪いわー。


と。いう笑顔でリュイーズはジャックに微笑む。

フラフラするジャックはよくわかんないけどニッコリと微笑み返す。

「……。」

夫婦ごっこを見させられている義母が無言でたたずんでいた。

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