夢が現実に。
今朝はカーテンから差し込んできた日差しで目が覚めた。
ドタドタと階段を駆け上がる足音が聞こえた。
足音が止まるとガチャリと音を立ててドアが開いた。
中学生ぐらいの女の子が入ってきた。
「ママおはよ!今日はパパも休みだから皆でお出かけだよ!」
「そうだったね。」
「もう、朝ごはんできてるよ」
「うん。おはよ、咲良」
「おはよ!」
そう言って咲良は私の腕に抱きついた。ちなみに咲良は中学2年生で、莉久のとこの次男である伊澄くんと同い年だ。
リビングに行くと真白が朝ごはんを作ってくれていた。
「咲久、おはよう」
「おはよう」
「ご飯できてるから座って」
「うん」
全員座って朝ご飯を食べ始めた。
「お出かけするとは言ったけどどこ行きたい?」
「俺はどこでも」
高校1年生の長男、白斗はそう言ってオムレツを口に運んだ。
「俺は遊園地!」
小学6年生末っ子、楓真は嬉しそうに手を挙げて言った。
「私も!」
咲良はパアッと笑って言った。
「じゃあ白斗も遊園地でいい?」
「ああ」
「分かった。真白、遊園地の帰りに莉久の所寄ってくれる?もうすぐ伊澄の誕生日だからプレゼント渡しに行こうと思って」
「うん、いいよ」
それから、朝ごはんの片付けをして着替えて遊園地に向かった。
「遊園地とか超久しぶり!」
咲良が鼻歌を歌っていた。
「俺はこの前友達と来たけどな。」
「お兄ちゃんずるい!」
「そうだぞ!兄貴ばっかずるい!」
「いや、卒業記念にクラスの奴らと行って咲良と楓真にもお土産買ってきただろ?」
「あ、そういえば」
「そんなこともあったような」
ホント仲良しだな。とくに咲良と楓真は好きな物の傾向も似ていて漫画やアニメをよく観ては良さを私達3人に語ってくれる。
「そろそろ着くよ」
真白がそう言うと咲良と楓真は目を輝かせた。
「テンション上がってきた!」
「ね!お兄ちゃんは、いつも通りだね」
「周りを見ると冷静になるもんなんだよ」
白斗はそう言うとフッと笑った。昔は真白にそっくりだった白斗だが少しずつ私にも似てきて真白と瓜二つまでとはいかなくなった。
ちなみに、楓真は昔の真白そっくりだ。
「着いたよ。ゲート前で写真撮るからちょっと待って」
「分かった!」
そう言うと咲良と楓真はゲート前まで競争をしていた。
「白斗は競争しないの?」
「咲良達が俺に勝てるわけないだろ?結果が分かってんだから競争する意味なんてないよ」
「そんなこと言ってるとそのうち咲良に負けるかもね。私と真白と一緒に朝走ることもあるし。」
「でも俺の方が脚長い」
「まあ、それはそうだね。身長179cmだもんね。もう私より14cmも高くなったからね」
「まあな。でも、母さんも父さんも背が高いのに咲良はあんまり高くないよな?」
「私も中2の途中から伸び始めたから咲良ももう少ししたらめちゃくちゃ伸びたりするんじゃない?」
私がそう言うと真白が私と白斗と肩を組んだ。
「早くしないと咲良と楓真がキレるよ」
「そうだね」
「もう手遅れかも」
私達は笑って2人の元に行った。
それからゲート前で写真を撮ってそれぞれカチューシャを購入した。
「私もママとお揃いのキャロットちゃんにすれば良かったな~」
「交換する?」
「ママとお揃いがいいからそれだと意味ないよ。パパ、お揃い代わって」
「可愛くおねだりされてもダメ。咲久とのお揃いは譲れない」
「ちぇ、ケチ」
咲良はそう言って笑った。言葉と言動が全く合ってないな。
「じゃあまずはジェットコースター!」
咲良は皆の先頭に立って人気アトラクションに並んだ。
ジェットコースターを降りて、次々へとアトラクションに乗っていた。
「私、ちょっと休憩」
私は近くのベンチに座った。
「じゃあ俺も。3人とも好きなのに乗ってきていいよ」
真白も隣に座って言った。
「分かった!終わったらレストラン集合ね」
そう言って咲良達は走っていった。
「咲久、何か飲み物買ってくるね」
「ありがとう」
真白は自販機に向かった。
「お姉さん、1人?」
近くで誰かナンパされてるな。でも誰に話しかけてるんだろう?
「ねえ、お姉さん。聞いてる?もしかして傷心中?」
「え、私?」
「そうだよ。他に誰がいるの」
お姉さんなんて久しぶりに言われたな。
「何ですか?私、何か落としてました?」
「そうじゃなくて俺達と一緒にまわらない?」
「は?ごめん、聞き間違えたかも。もう一回言って」
「だから、俺らと一緒にまわらない?」
……!ナンパ!?今年で41歳だよ!?
「私、」
「俺の奥さんになんか用?」
「既婚者!?」
「まあ。というか君達何歳?」
「21歳ですけど。」
「私の息子との方が歳近いよ。私、君達と一回り以上離れてるから。今年でもう41歳だし」
「冗談っすよね?」
「まさか。ほら、これが息子2人と娘の写真」
「え、マジすか!まだ20代後半かと思いました。」
「ありがとう。でもそういうわけだからごめんね」
「いえいえ。こちらこそ失礼しました。」
そう言うと男の子達はその場を去った。
「ナンパがまさか自分にされてるなんて途中まで気付かなかった」
「咲久は未だにきれいだからね」
真白はそう言っ手をを繋いだ。
「せっかくだし白斗達と合流する前にデートしない?」
「いいよ。」
私はそう言って立ち上がった。
それからお昼を食べて数時間、遊園地をまわってパレードを見てお土産を買った。
「伊澄の誕プレ渡しに行くんだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ私、星奈にお土産買ってく」
「そうだね」
それから莉久の家に向かった。
「咲久姉!久しぶり!」
「久しぶり」
「伊澄~!咲久姉来たよ!」
莉久は玄関から叫んで伊澄を呼んだ。
「伊澄、ちょっと早いけど誕生日おめでとう」
「ありがとう。開けていい?」
「もちろん」
伊澄は箱を受け取って包みを取って開けた。
「腕時計だ!しかも防水の!」
「いいでしょ。翔のおすすめのブランドにしたから使いやすいと思うよ」
「マジで!?ありがとう!」
「喜んでもらえてよかった」
そう言うと伊澄は頷いて笑った。
「星奈、今日ね、遊園地行ったからお土産。星奈、マカロンちゃん好きでしょ?」
咲良はそう言ってマカロンちゃんの飾りのついたヘアゴムを星奈に渡した。
「可愛い!咲良ちゃん、ありがとう。大好き」
「私も~!」
星奈は相変わらず咲良を虜にしていた。将来、アイドルにでもなったら咲良はファンクラブ会長になるだろうな。
「じゃあまたね」
「うん。ありがとう、咲久姉。」
莉久は大きく手を振って言った。
それから家に帰った。
夜ご飯を食べてお風呂に入って皆でアイスを食べていた。
「今日さ、久しぶりに咲久がナンパされてた」
真白がそう言うと3人とも咳き込んだ。
「ゴホッ、え、マジ?」
最初に口を開いたのは白斗だった。
「うん。で、私が年齢言ったら疑われたの。ひどいよね。でもホントに驚いた。お姉さんとか言われたの久しぶりすぎて」
「まあ、ママなら疑われても仕方ないよ。私もホントの年齢知らなかったらもっと若く思うだろうし」
「確かに」
楓真が咲良の言葉に頷いた。
「嬉しいな~。でも、お父さんとお母さんも若見えするから遺伝かな?」
「確かに!お祖父ちゃんとお祖母ちゃんも結構若く見える。ひいお祖父ちゃんとひいお祖母ちゃんも。なんなら大お祖母ちゃんも」
ちなみに咲良の言う大お祖母ちゃんとは私にとってのひいお祖母ちゃんで咲良達にとってのひいひいお祖母ちゃんである。現在もご存命で今は96歳だ。ちなみに私にとってのお祖母ちゃんはまだ80歳だ。
「もう家系なんじゃない?真白も若見えするから咲良達もそうかもね」
私がそう言うと咲良はやったと笑った。
翌日も続けて休みだった。早く起きたのでリビングの本棚の一番上の段に置いてあった。アルバムを見ていた。
「お母さん、おはよう。何見てるの?」
「おはよう、楓真。アルバム見てるの。一緒に見る?」
「うん」
それから楓真とアルバムを見ていると真白が起きてきた。
「おはよう~。朝からアルバム鑑賞?」
「うん。楓真がまだ産まれる前ぐらいの写真」
「ホントだ。まだ家が建つ前だね。咲久のお腹が大きくなってくる前だね」
「うん。楓真のときはさ、上に2人いたから入院前に泣きつかれて大変だったんだよ」
楓真はその光景を想像して笑った。
「姉ちゃんは分かるけど兄貴は意外」
「でしょ?昔はママ、ママってずっとべったりだったんだよ。あまりにも私にくっつきすぎて真白がヤキモチ妬いてたし」
私が笑うと楓真は「想像できる」と言って一緒に笑った。
それから30分ほど経って白斗と咲良も起きてきた。
「そろそろ朝ごはんの準備するね」
「うん!」
「母さん、手伝うよ。何したらいい?」
「ありがとう、白斗。じゃあお米がそのうち炊けるからそれをよそって、夜作っておいたおひたしもお皿に移して」
「分かった」
それから朝ごはんを作って皆で食べた。
「思ってたんだけどさ、この家アルバム多くない?」
咲良が本棚を指して言った。
「そうだね。高校のときから1年に1冊ぐらいあるから24か5冊ぐらいあると思うよ。楓真が産まれてからは動画も増えたけどね」
私がそう言うと咲良はお箸をおいた。
「え!動画は見たことない!後で見ようよ!」
「いいけど普通の動画だよ」
「それでもいいの」
それから朝ごはんの片付けをしてDVDを再生した。まだ小学校低学年の咲良のおままごとの様子のビデオだった。
『楓真!遊ぼ!』
『咲良、楓真は寝てるからしーだよ。代わりにママと遊ぼう』
『じゃあおままごとしよ!』
『うん』
『咲良がお母さん役でママがお父さん役ね』
『分かった』
『お帰り~あなた。ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?』
動画の中で咲良がそう言うと動画の中と外の両方で笑いが起こった。
『咲良、どこでそんな言葉覚えてきたの?』
笑い混じりの真白の声が聞こえた。
『前に花村が言ってた!しんこんさんはこういうんだって。ママはパパに言わないの?』
『もう新婚じゃないし。って、普通に言ったことないし!』
『あれ?なかったっけ?あったような気がするんだけど』
『最後の選択肢は絶対なかった!』
『う~ん、うるさ~い』
『あ、楓真。ごめんね、起こしちゃったね。咲良、パパと遊んでて』
『分かった~。パパ、咲良、結婚します』
『え、誰と?』
『ママと♡』
『残念。ママはパパと結婚してるからもう無理だよ。』
『咲良の方がママのこと好きだもん!』
『いや、パパの方がママのこと好きだよ』
『じゃあママを可愛くした方が勝ち。』
『あ、ママ来た!ママ~!ウエディングドレス着てお化粧して!』
『なんで?』
『ママのこと大好きだから可愛くするの。パパと勝負なの』
『いいよ。着替えてくるから待ってて』
それから画面が切り替わってウエディングドレスの私が映った。
「恥ずかしい。リモコン貸して」
真白の方に手を向けると何故か手を握られた。動画の内容を思い出してしまった。
『ママ可愛い!ほら、絶対に咲良の勝ち』
『白斗、ゲーム終わったならカメラ代わって』
真白はそう言って私に近づいてキスをした。
『な、急に、』
『ほらね、今の咲久が一番可愛いでしょ?』
『ずるい!咲良もちゅーする!』
『咲久の唇にキスしていいのは俺だけって決まってるからダメ』
『なんで決まってるの?』
『そりゃあ俺は咲久の旦那さんだからね』
その声で動画が終わった。
「思春期のくせに、よく親のキスシーンを平然と見れるね」
私が顔を手で覆った。すると白斗が呆れたように溜め息をついた。
「今でも普通にしてるからな。」
その言葉に咲良と楓真が頷いた。
結婚17年目。もう年齢は結婚当初のお母さん達に近づいている。私は未だに真白に恋をしているのだろう。
これは私が、幼馴染みのお兄ちゃんに恋をした物語。
最終回です。最後はあまりまとまってないかもしれませんがこれまで読んでいただきありがとうございました。