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幸せ


 咲久(さく)と付き合い始めてもう8年が経った。記念日は家でケーキを食べていつも以上に咲久(さく)に甘えた。


 今日は6時から2時間、liveをする。今日は重大報告がある。


 そしてつい最近、莉久(りく)ちゃんと(みなと)くんが婚約をした。


真白(ましろ)、卒業試験中なのにlive大丈夫?私だけでしようか?」


咲久(さく)のサポートのお陰でなんとか。家事とか全部代わってもらっちゃってごめんね」


「いいよ。洗濯は乾燥機だしお皿洗いも食洗機だし掃除機も自動だし私1人でも全然楽なように設備調えてくれたし。それに、分担したら真白(ましろ)が無理して身体を壊しちゃうかもしれないからね」


咲久(さく)はそう言って俺の机にコーヒーを置いて部屋を出ていった。


咲久(さく)の言った通り今は卒業試験の最中だ。医師の国家試験を受けることができない。


なので、家事は咲久(さく)が代わってくれている。



 それから7時間後、liveが始まった。


「皆、こんばんは~。こうして真白(ましろ)と一緒にliveなんてもう1年半ぶりだね」


咲久(さく)が楽しそうに笑った。


「そうだね。最近は写真の投稿とか俺は声だけとかが多かったからこうしてちゃんと話すのは久しぶり」


俺が笑って言うと咲久(さく)が何故かどや顔をした。


「私は毎日会ってるけどね」


そう言って咲久(さく)が俺の顔を見上げて笑った。


『可愛いっ!ホント、勉強で疲れてるとさらに癒されるな。』


「ん?いいなぁって?そりゃあもちろん彼女の特権だもん。誰にも譲らないからね」


咲久(さく)と付き合いたいって言ってる人達全員に伝えます。こんなに可愛い彼女と付き合えるのは俺だけだから諦めろ」


咲久(さく)の肩に腕をまわして抱きよせると少し恥ずかしそうに咲久(さく)が俺を見上げた。


『まあ、咲久(さく)と付き合いたいって思うのは当然だな。』


「じゃあ早速質問タイム!まずは真白(ましろ)への質問のコメントから言うね。『咲久(さく)ちゃんに治してほしいところはありますか?』だって」


「あんまりないけど強いて言えば、アタックされてるのに気付かないで着いていっちゃったりするのをやめてほしいです。あと、告白してきた奴の告白を告白として受け取らずに褒め言葉として受け取ったり勘違いしないでください。あと、」


「ストップ!私、そんなことしてた?」


「うん。俺が知る限りは10回以上」


「え!そうなの!?じゃあ、これからは気を付ける」


咲久(さく)は驚いた顔でそう言った。


「じゃあ次も真白(ましろ)への質問。『咲久(さく)ちゃんの一番好きなところはどこですか?』だって」


「やっぱりさりげなく気配りをして相手にできるだけ負担を掛けないようにしてるところかな。じゃあ次は咲久(さく)への質問。『真白(ましろ)と別れて俺と付き合わない?』だって」


「え!無理!」


咲久(さく)はすぐに答えた。


「即答だね。なんで?」


「え、だって。そもそも真白(ましろ)と別れたくないし。知らない人にそんなこと言われたくないし」


「だって。残念、諦めてね。じゃあ2つ目の質問。『真白(ましろ)くんと玲音(れおん)くんではどっちが王子さまっぽいですか?』だって。そりゃもちろんね、」


玲音(れおん)くん!」


咲久(さく)?」


「だって真白(ましろ)は王子様じゃなくて王様って感じじゃん。」


「なんだ。そう言うことか」


俺はため息を着いてスマホをスクロールした。


「あ、咲久(さく)。もう一つ質問。『ファーストキスはどんな感じでしたか?』だって」


「思い出すだけでも恥ずかしい。もう、心臓が破裂しそうなぐらいバクバクで真白(ましろ)の顔をまともに見られなかった」


「俺は逆に咲久(さく)以外見えなかった」


「そうなんだ。あ、でもね。ある事実が発覚したの。私のファーストキスって相手は真白(ましろ)なんだけど5歳のときにもうしてたんだって」


「え!そうなの!?」


「うん。というか、真白(ましろ)とおままごとしたときの動画があってその中で何回かしてた。」


「ホントに!?全然覚えてない」


「私も」


そう言って咲久(さく)と顔を見合って笑った。


「次はリクエストコーナー。咲久(さく)にリクエスト。今流行ってる歌を歌ってだって」


「私に!?私、めっちゃ下手だよ?それでもいいの?」


「尚更聴いてみたいって」


そう言うと咲久(さく)は歌い始めた。綺麗な声なんだけど音程がズレちゃうんだよね。まあ、可愛いんだけど。


 コメントは『音痴だけど可愛い!』とか『音痴なのがいい!』とか『声は綺麗!』等ときていた。


「だから言ったじゃん!下手だってば。音痴音痴言わないでよ」


そう言って咲久(さく)が俺の胸に飛び込んだ。


俺はこっそり皆にグッドサインを送った。するとコメントではどういたしましてとたくさんきていた。


 でもそろそろ我慢できなくなりそうなんだけどな。


咲久(さく)、離れなくてもいいけど今離れなかったら嫌な思いをするのは咲久(さく)の方だよ」


そう小さい声で咲久(さく)の耳元で囁いても咲久(さく)は離れなかった。


真白(ましろ)は私を傷付けたりしないじゃん。だから嫌な思いなんてしないよ」


咲久(さく)はそう囁くと俺を抱きしめた。


「liveのこと忘れてない?」


「ホントだ。忘れてた。皆ごめんね~。でもね、仕方ないの。真白(ましろ)を抱きしめると落ち着くんだよ。私以外は無理だけど皆も大切な人を抱きしめてると落ち着くでしょ?最初はドキドキしすぎて落ち着かないんだけどね」


「そう言うわりには一瞬で寝落ちしたりしてるけどね」


「寝てないもん。寝てるフリをしてるだけだから」


「え、じゃあもしかして、この前も起きてたの?ドラマを観てたとき」


「ドラマを観てたときは途中から記憶がないから多分普通に寝てた」


『良かった。』


「じゃあ、次のリクエストは俺にだね」


「うん。『咲久(さく)ちゃんが上目遣いをして甘えたら真白(ましろ)くんはどれぐらいキスをするのを耐えれますか?』だって。やってみる?」


「え、無理無理。絶対に耐えられない。」


「じゃあ耐えられたら今日1日、好きなだけキスしていいよ。あ、もちろんliveが終わったらね。で、耐えられなかったら今日はもうダメ。じゃあ皆、真白(ましろ)がギリギリ耐えれなさそうな秒数言って。一番多かったのを参考にするから」


咲久(さく)がそう言うとたくさんコメントがきた。


「3秒が一番多いんだけど。さすがにそれは耐えられるでしょ。ってことで10秒」


「え、3秒でも無理そうなのに」


「じゃあ無条件で真白(ましろ)の負けでもいいよ」


「いや、やる」


そう言って咲久(さく)の顔を見た。ヤバい、1秒で限界。


「よ~い、スタート!」


咲久(さく)はそう言って俺の顔を見上げた。


真白(ましろ)、大好きだよ。 ギュッってしてもいい? キスして。」


俺は無意識に咲久(さく)の顔に顔を近づけていた。


『ヤバッ。今日、キスできなくなるところだった。』


 それから、たったの10秒が永遠に感じた。そしてやっとタイマーが鳴った。


「10秒たっ」


咲久(さく)の言葉を遮るように俺は咲久(さく)にキスをした。


「まし、」


もう一度キスをすると咲久(さく)が俺の口を手で押さえた。


「live終わってからならいいけどlive中はあんまりやめてね」


「うん。でも冗談抜きで10秒が永遠に感じた」


「そう?でも大丈夫だったし今度は1分とかやってみる?」


「それは無理。」


「皆頑張れって言ってるよ」


「応援されても無理なものは無理だから」


 それから30分ほど話してカメラを切ってliveを繋げたまま、外に出ることにした。


 車に乗り込んで咲久(さく)にひざ掛けを渡した。


「ありがとう。ところでどこに行くの?」


「着いてからのお楽しみ。」


 それから咲久(さく)はファンの子達と話していた。


真白(ましろ)の実家?なんで?」


「内緒。咲久(さく)、アイマスク着けて」


「うん」


咲久(さく)がアイマスクを着けたのを確認して俺は咲久(さく)を抱き上げた。


 そして、家の中に入ってリビングに向かって咲久(さく)をおろした。


咲久(さく)、アイマスク外していいよ」


咲久(さく)はアイマスクを外すと辺りを見渡した。

 俺はスマホのカメラをオンにして壁に固定した。そのとなりには録画用のカメラも。


咲久(さく)、カーテンを開けて」


そう言うと咲久(さく)はザァーッとカーテンを開けた。その瞬間、その場に泣き崩れた。


 そこには、アルファベットの風船でこう飾られている。


『Please be my family(俺の家族になって)』


 俺は咲久(さく)の隣に並んで咲久(さく)をソファに座らせた。そして、咲久(さく)の前に膝まずいてリングケースを開いた。


小鳥遊(たかなし)咲久(さく)さん。いつも支えてくれてありがとう。今は忙しくてたくさん負担を掛けてると思う。でも、こんな今だからこそ言える。俺は、生涯あなたを愛し続けられる。あなたが忙しいときは力になりたい。感謝の気持ちを込めてこれまではなんてことない普通の1日だった今日をあなたと俺の記念日にさせてください。あなたを世界で一番愛しています。俺と、結婚してください」


そう言うと咲久(さく)から大粒の涙がこぼれ落ちた。


「……これ、夢?」


「夢じゃないよ。咲久(さく)の気持ち、教えてくれる?」


「っ!はいっ!私でよければ!」


俺は咲久(さく)の涙を拭いて唇を重ねた。


咲久(さく)がいいんだよ」


そう言ってもう一度キスをした。


 それから、ちょうどliveの終わる時間がきた。


「この度、咲久(さく)と結婚することになりました」


そう言うとたくさんのコメントがきた。


『理想のプロポーズ』『次は理想のカップルから理想の夫婦だね』『真白(ましろ)くんのプロポーズ感動した!見てて泣ける』


「ありがとう。いやあ、でも緊張した。」


「私。今、世界一幸せ。」


「俺も。幸せすぎてニヤける。じゃあ皆、またね」


そう言ってliveを切った。


 すると、咲久(さく)が背伸びをして俺にキスをしたと同時にガチャリとドアが開いた。


「師匠、この展開好きなのか?」


(しゅん)はそう言ってリビングに入ってきた。


「今回は咲久(さく)からのキスだったし。」


「やるわね、咲久(さく)ちゃん」


友里(ゆり)さん!?」


咲久(さく)ちゃんNice!真白(ましろ)の面白い顔見れたよ」


「ゆずちゃんも!?」


咲久(さく)~!婚約おめでとう!」


葉山(はやま)さんが走ってきて咲久(さく)に抱きついた。


千花(ちか)!ありがとう。千花(ちか)真白(ましろ)に協力してくれたの?」


葉山(はやま)さんが頷くと俺は付け足した。


「結構大勢がね。この後、お祝いパーティーもするから。紫輝(しき)とソフィアもいるし(あおい)ちゃん、(かける)(はやて)もいるし、莉久(りく)ちゃんと(みなと)くんもいるし蒼空(そら)ももう来るし。それに、海斗(かいと)さんと美久(みく)さんもくるよ」


「え!お父さんとお母さんも!?」


「うん。すでに了承を得たから。」


「早っ!でも確かに、この部屋全部の飾り付けは10人ぐらいいないと大変だね」


咲久(さく)は頷きながら言った。


「サク!マシロ!congratulations on your engagement!(婚約おめでとう)」


ソフィアが俺と咲久(さく)に抱きついて言った。


「Thanks」


咲久(さく)はそう言って嬉しそうに笑った。


咲久姉(さくねえ)真白兄(ましろにい)!おめでとう!」


「ありがとう。(かける)




 * * *





 それからたくさんの人達に祝われてパーティーを終えて今日は真白(ましろ)の実家に泊めさせてもらった。


「おはよう、真白(ましろ)


「おはよう。今何時?」


「8:32。私はもう着替えたから友里(ゆり)さんの手伝いしてくるね」


「そんなに気を遣わなくてもいいのに」


友里(ゆり)さんとお喋りするだけだから全然気を遣ったりしないよ」


私はリビングに降りると友里(ゆり)さんと幸一(こういち)さんとゆずちゃんと亮介(りょうすけ)くんと海里(かいり)くんと愛理(あいり)ちゃんがいた。


咲久(さく)お姉ちゃん!おはよ~!」


「おはよう!愛理(あいり)ちゃん。朝来たの?」


「うん!パパがさぷらいずでケーキを持っていったらよろこぶって言ってたから」


「ケーキ!」


愛理(あいり)、サプライズって言うのは内緒にする事だよ。だから咲久(さく)ちゃんに言ったらサプライズじゃなくなっちゃうよ」


「そうなの?咲久(さく)お姉ちゃん、しーだよ。」


愛理(あいり)ちゃんは人差し指を口に当てた。


「じゃあ真白(ましろ)には内緒にしておくね」


私は愛理(あいり)ちゃんの真似をして微笑むと愛理(あいり)ちゃんも笑顔で頷いた。


 すると、後ろから足音が聞こえた。


愛理(あいり)、何がしーなの?」


「ナイショ!咲久(さく)お姉ちゃんとやくそくした!」


愛理(あいり)ちゃんがそう言うと真白(ましろ)は水を飲みにキッチンに向かった。


咲久(さく)お姉ちゃん、あいり、ナイショできたよ」


愛理(あいり)ちゃんは小さい声でそう言って顔を上げた。


愛理(あいり)ちゃん、偉いね。真白(ましろ)、喜んでくれると思うからもう少しナイショにしようね」


愛理(あいり)ちゃんの頭を撫でると愛理(あいり)ちゃんは私の足に抱きついた。


愛理(あいり)、パパが抱っこしてあげるよ」


亮介(りょうすけ)くんが手を広げると亮介(りょうすけ)くんを通りすぎて幸一(こういち)さんの方に行った。


「じいじ~!抱っこして!」


「いいぞ。」


嬉しそうな幸一(こういち)さんと対照的に落ち込んでいる亮介(りょうすけ)くんはゆずちゃんに励まされていた。


 それから朝食をとってゆずちゃんがケーキの準備をしてくれた。


海里(かいり)くんと愛理(あいり)ちゃんがせーのと声を合わせてお祝いしてくれた。


「「咲久(さく)(お姉ちゃん)、真白(ましろ)(お兄ちゃん)、こんやくおめでとう!」」


「「ありがとう(!)」」


咲久(さく)ちゃんはどれがいい?」


「私はやっぱりイチゴタルト」


「だと思った」


そう言ってゆずちゃんがイチゴタルトの乗ったお皿を渡してくれた。


 その後は皆でケーキを食べて私と真白(ましろ)は役場に婚姻届をもらいに行って友里(ゆり)さん達やお母さん達にも記入してもらって翌朝、婚姻届を出しに行った。



 それから2週間。最近、体調を崩していて仕事も休むほどだ。


真白(ましろ)、インフルとかだったら移すと悪いからしばらく実家に帰るね」


咲久(さく)、今、体がダルくて熱っぽくてふらふらしたり眠くなったりするんだよね?」


「うん」


「生理、遅れてる?」


「うん」


「もしかして……」


 それから検査薬を試してみると妊娠が分かった。


真白(ましろ)!私、妊娠した!これからは真白(ましろ)パパだね!」


そう言って真白(ましろ)の顔を見上げると真白(ましろ)は嬉しそうに笑いながら泣いた。


咲久(さく)!ホントに幸せ!俺、いい父親になれるかな?」


真白(ましろ)なら大丈夫だよ」


「俺、明日からも卒業試験頑張る。合格する!でも、それまでは実家に戻ろう。咲久(さく)はまず病院に行かないと。」


「そうだね。」


 それから、3日後。私は実家に戻ろうかと思ったけどお母さん達は仕事で忙しいのでお祖母ちゃんの家にしばらく泊まることになった。真白(ましろ)友里(ゆり)さんと幸一(こういち)さんはほとんど家にいないのでお祖母ちゃんが空いている部屋に泊めると言ってくれた。


「今日はゆずちゃんと病院に行ってくるね」


「行ってらっしゃい」


 私は仁科(にしな)総合病院に着いて産婦人科に行った。


 担当の先生はゆずちゃんの叔母(真白(ましろ)紫輝(しき)の叔母にも当たる人)でとても親切な人だった。


「妊娠4週間ね。おめでとう、仁科(にしな)さん」


咲久(さく)でいいですよ。真白(ましろ)の妻なので義理の姪ですし」


「あら、真白(ましろ)の奥さんなの?結婚したのは聴いたけど。柚希(ゆずき)、大事なことは言いなさいよ。」


「驚くかなって。ねえ、咲久(さく)ちゃん。真也(まや)ちゃんね、こうみえて43歳なんだよ。」


「え!ホントですか!?30代ぐらいかと思いました。お母さんと2歳しか変わらないなんて」


そう言うとゆずちゃんが笑った。


美久(みく)さんも若見えだけどね~」


そう言っていいな~と笑っていた。



 それから、家に戻って学校から帰ってきた真白(ましろ)にエコー写真を見せると抱きしめられた。


「4週目だって」


「男の子でも女の子でも絶対に可愛いね」


「エコー写真で分かるの?」


「うん。もうめちゃくちゃわかる。すでに可愛い」


真白(ましろ)がそう言うとお祖父ちゃんも頷いた。


「お祖父ちゃんまで。2人とも絶対に甘やかす未来しか見えない」


私がそう言うとお祖母ちゃんもそうねと笑った。


「卒業試験、今日で全部終わったから後は結果だけ。合格したらすぐに教える」


「ありがとう」


「後は国家試験か。ちゃんと勉強はするけどさ、1ついい?」


「なに?」


「今年が2人で過ごせる最後のクリスマスじゃん?まあ、もっと大人になったらまた2人で過ごせるかもしれないけど」


「今年は2人でいたいね。」


「うん。あ、もちろんいつものクリスマスパーティーは参加するよ」


真白(ましろ)はそう言ってまた、私を抱きしめた。


 それから、12月に入って真白(ましろ)が卒業試験に合格して、お祖母ちゃん達と一緒にお祝いした。


「お祖母ちゃん、泊めてくれてありがとう」


「どういたしまして」


咲久(さく)真白(ましろ)、もう少し泊まって行かないのか?」


お祖父ちゃんが少し寂しそうに言った。


「お正月はお母さんとお父さんも仕事がないから実家に泊まるから。でも、真白(ましろ)の国試が近づいてきたらまた泊まらせてもらうかも」


「そうか。大歓迎だ」


そうして、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんと別れた。


 それから、荷物をそのまま実家に置いて真白(ましろ)とデートに出掛けた。


「そういえば、まだ決めてなかったね。どこ行く?」


「イルミネーション!」


咲久(さく)、寒いの苦手じゃん。」


「大丈夫だよ。マフラーあるし」


「身体冷やしたらダメでしょ」


「じゃあ映画」


「それならいいよ」


そう言って真白(ましろ)は車を進めた。


 それから、ショッピングモールに着いて映画を観た。


 途中、私は真白(ましろ)の肩にもたれ掛かって寝てしまっていた。


咲久(さく)、映画終わったよ」


「ありがとう。」


私は寝起きのせいか足がふらついた。


「おっと、セーフ。大丈夫?怪我とかしてない?」


「うん。大丈夫。ありがとう」


「うん」


真白(ましろ)ホッとしたように笑った。


 シアターから出て、真白(ましろ)に飲み物を買いに行ってもらった。


「お姉さん、クリスマスなのに1人?俺らと遊ばねえ?」


顔をあげると変な髪型をした男性3人が目の前に立っていた。


「すみません、無理です」


「いいじゃん。俺ら、ちょうどお姉さんみたいな美人と遊びたかったんだよね」


そう言ってその男性はジロジロと私を下から上まで見た。


「へ~」


真白(ましろ)!早くきて!この人達、なんか嫌!』


「おい、何うちの嫁を変な目でみてんだ?」


「え!嫁!?既婚者!?」


「え、あ。はい!」


左手を見せると3人は青ざめて行った。


「すみませんでした~!」


そう言って3人は走っていった。


咲久(さく)の胸ばっかりジロジロみて。せめて顔にしろよ」


「そこ重要?」


「うん。あ、ココア買ってきたよ」


「ありがとう」


 ココアを飲んでランチを食べてクリスマスプレゼントでお揃いのウェザーのキーホルダーを作って車に乗った。


 私は眠くてまた寝てしまった。


咲久(さく)、そろそろ着くよ。起きて」


「ん?もう家?」


私が目を開けるとキラキラした光が窓から入ってきた。


「イルミネーション?」


「うん。ドライブでも綺麗に見られるところを調べたらすぐ近くだったから。クリスマスツリーの前で写真を撮るだけなら大丈夫かなって」 


真白(ましろ)~!好き!愛してる!」


「ありがとう。俺も愛してるよ。咲久(さく)


真白(ましろ)はそう言って車を停めた。ホントサラッというくせに照れ屋だな。耳が真っ赤だ。


「ましさくですか?」


「はい」


「フォローしてます!」


「ありがとう。もしよかったらカメラマンになってくれる?ツリーの前で写真撮ってほしいんだ。咲久(さく)と撮りたいって思ってたから」


「もちろんです!」


 それからツリーの前に立ってその子に写真を撮ってもらった。


「ありがとう!すごく綺麗に写ってる」


「どういたしまして。あの、咲久(さく)ちゃん。握手してください!」


「うん、いいよ」


 そして、その子と別れて少しだけ歩いた。


咲久(さく)、大丈夫?」


「うん。真白(ましろ)とくっついてるし全然寒くないよ」


そう言うと真白(ましろ)はキスをした。


「あんまり可愛いこと言ってるともっと好きになるんだけど」


「もっと好きになってもいいよ。この子のこともね」


「もちろん」


そう言って真白(ましろ)は額にキスをした。


 翌日、家で毎年恒例のクリスマスパーティーをした。


咲久姉(さくねえ)!エコー写真見せて!」


「うん。ちょっと待ってて」


私は荷物の中からエコー写真を出して(あおい)に見せた。


「小さい!可愛い!女の子でも男の子でも絶対に可愛いね!」


真白(ましろ)とお祖父ちゃんも言ってたけどエコー写真でわかるものなの?」


「うん!もうすでに可愛いもん!」


(あおい)の頭を撫でてそうだねと言うと(あおい)はうんうんと頷いた。


 そして、久しぶりにカフェ・スリールに行こうとしたら蒼空(そら)が車を出してくれた。


「ここ、昨日、(あおい)と初めて来た」


「私はよく来てたよ。まあ、最後に来たのは3カ月前だけど」


そう言って玄関を開けた。


「いらっしゃいませ。咲久(さく)ちゃん!久しぶり!」


「うん、久しぶり。忙しくて言えてなかったんだけど私、2ヶ月前に結婚したんだ。それとこの前妊娠も発覚した!」


そう言うとヒナちゃん達は少し間を開けてええ!と叫んだ。


「おめでとう!」


「ありがとう。」


「お祝いに今日は好きなのを食べていって」


「あ、ううん。報告しに来ただけだから。今日は皆とクリスマスパーティーするの」


「そうなんだ。じゃあクッキー持っていって」


「ありがとう」


「ところで、さっきから気になってたんだけど。後ろのイケメンは誰?昨日、来てたきがするんだけど」


「うちの弟。昨日、幼馴染みと来たんだって」


「そうなんだ。咲久(さく)ちゃんの友達のヒナです」


小鳥遊(たかなし)蒼空(そら)です」


蒼空(そら)くん。また、来てね。」


 私はヒナちゃんに手を振って車に戻った。


「そういえば言ってなかったけど、ヒナちゃんってハルくんの彼女だよ」


「え!マジで!?」


「うん。私をここに送ってくれたことがあってその時にハルくんが一目惚れしたんだって」


「へ~、ハルくん彼女できたんだ。ずっと彼女できないって言ってたけど優しそうな人が見つかって良かったな」


「そうだね」


 それから、家に帰って皆で料理やケーキを食べてトランプをした。


咲久姉(さくねえ)真白兄(ましろにい)って結婚式挙げねえの?」


(かける)が首を傾げて訊いてきた。


「まあね。真白(ましろ)は2月に国家試験があるからそれどころじゃないし。」


「結婚式に憧れとかない方なの?」


(あおい)も身を乗り出して訊いてきた。


「なくはないけど。ウエディングドレスは着たかったしやっぱり式には憧れはあったよ。でも、マタニティフォトは撮るし、今は真白(ましろ)には夢を叶えてほしいし」


「そっか。じゃあ咲久姉(さくねえ)の理想の結婚式教えてよ!きいてみたい!」


「え~、そうだな~。ドレスはプリンセスラインとかじゃなくてマーメイドがいいかな。昔、映画でみてずっと憧れてたから。レースが着いててスリットが入っててすごく綺麗だったの。あ、でも飾りはこの前みたいに手作り感があった方が嬉しい。まあ、ドレスと全然合わないけど」


「いつか私がその式をプレゼントするね」


(あおい)はとびきりの笑顔で言った。


「ありがとう、楽しみにしてるね」


私が笑いながら頭を撫でると(あおい)は頷いた。


 元旦は、皆で神社にお参りをして家でおせちを食べた。



 それから、約3ヶ月後。真白(ましろ)は無事、国家試験に合格した。


 久しぶりに真白(ましろ)と一緒に定期検診に行った。


「多分男の子だね」


「ホント!?咲久(さく)、これで名前考えられるね」


「そうだね~」


真白(ましろ)がこんなにはしゃいだ姿を見るのは実に十数年ぶりだ。


 それから、安産祈願をして家に戻った。


「最近お腹が大きくなってきたんだ。なんかお腹触ってるとさ『私、お母さんになるんだ』って実感が湧くんだよね。真白(ましろ)も触ってみる?」


「うん」


そう言って真白(ましろ)が手をおいた。


「早く会いたいな。でも、もう少し咲久(さく)と新婚生活味わいたいからいい感じのタイミングでよろしく」


「注文が多いパパだね」


私は真白(ましろ)の手に自分の手を重ねて言った。


私は早く会いたいな。



 それから5ヶ月後。予定日はもう2日後に迫っている。私は産休を取って今はもう真夏だ。


「暑いね~。パパはまだ寝てるね。今日と明日はお休み取ったから忙しそうだったもんね~」


そう言って真白(ましろ)の隣に座って体をゆすった。


「おはよう。もう10時になるよ~」


「あ、ホント?じゃあもう起きないとね。咲久(さく)白斗(はくと)。おはよう」


真白(ましろ)はそう言って私の額とお腹にキスをした。


 それから着替えて軽食を食べて2人で手作りのアルバムを見返していた。


「なんか、写真の中でもいちゃついてばっかりだね。キスしたりハグしたり見つめ合ってたり。白斗(はくと)には恥ずかしくて見せられないね」


「そう?俺はいっぱい自慢するつもりだったけど」


「絶対やめてよ。……っ、」


咲久(さく)?」


「なんか水みたいなのが出てきた。これって破水?」


「病院に連絡するね。咲久(さく)は清潔なナプキンを当てて細菌が入らないようにして」


 それから入院セットを持って病院に着いた。


 検査をしてまだ生まれなさそうということで病室でゆっくりすることになった。わざわざ個室まで用意してもらった。


 しばらく話して気を紛らわすために一緒にスマホで映画を観ているとお腹に痛みを感じた。


真白(ましろ)。なんかお腹痛くなってきた。」


「間隔が10分ぐらいになるまではまだ生まれないよ」


「手、握ってもいい?」


「うん。背中さすらなくても大丈夫?」


「うん。まだ耐えられる」


それから、段々と痛みの持続時間が伸び痛みも強くなっていった。


真白(ましろ)、背中さすって。痛い」


「うん。咲久(さく)、この辺?」


「うん。ちょっとマシ。」


 それから陣痛がさらに強くなって分娩室に移動した。


咲久(さく)、ゆっくり呼吸して」


真也(まや)さんがそう言って私はゆっくりと息を吸って吐いた。


「うん」


「じゃあいきんで」


「ふんっ、」


真白(ましろ)のマッサージのお陰で少し痛みは楽だった。


 そして、その繰り返しで約1時間半後。


咲久(さく)、おめでとう。お疲れ様」


「うん。白斗(はくと)、初めまして。あなたのママとパパだよ。」


 それからしばらくその場で真白(ましろ)と話した。


真白(ましろ)、お祖母ちゃんに連絡して。1番に伝えたい。もちろんお母さん達にも」


「うん」


そう言って真白(ましろ)はメッセージを送ってくれた。


咲久(さく)他になにかない?」


「写真撮って。3人で家族写真」


「うん」


真白(ましろ)は3人の写真を撮ると私と白斗(はくと)だけの写真も撮った。


そして、写真を皆に送った。


 それから病室まで歩いて戻った。


「疲れた。もう夜だね。寝るね。」


「うん、お休み。咲久(さく)、愛してるよ」


真白(ましろ)はそう言って額にキスをした。


 翌日、目が覚めると花瓶に綺麗なお花が刺さっていた。


咲久(さく)、おはよう」


「おはよう。わざわざ買ってきてくれたの?」


咲久(さく)が好きそうだなって思って」


「ありがとう。すごく綺麗」


咲久(さく)はその何千倍も綺麗だけどね」


真白(ましろ)フィルターがかかればね」


そう言って私が笑うと真白(ましろ)は笑った。


「これからは3人家族だね。よろしく」


「うん。これからは咲久(さく)だけじゃなく白斗(はくと)のことも守るからね」

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