咲久の浮気!?
咲久と一緒に暮らし初めてもう半年が経った。咲久は家具メーカーTAKANASHIの開発部で働き始めた。俺は医学部の3年生になった。
莉久ちゃんと湊くんも専門学校と大学にそれぞれ進学。葵ちゃん、颯くん、翔は桜川高校に進学。紫輝はプロとして色々な大会に出場して入賞している。
そして、もうすぐ付き合って5年記念日がやってくる。プレゼントもすでに選んでいる。喜んでくれるといいんだけど。
朝、起きてリビングに行くと咲久の話し声が聞こえた。
「え~、うん。いや、言うわけないよ。てか、真白に言ったらダメだし。別に迎えに来なくてもいいよ。10時にショッピングモール近くの広場集合ね。うん。分かった」
それと同時に話し声は聞こえなくなった。というか俺に言ったらダメって何?まさか……。
俺がリビングに入ると咲久はスマホをポケットに直した。
「咲久、おはよう」
「おはよう。私、今日友達と買い物行ってくるね」
「うん」
「……ご飯できてるし一緒に食べよ」
咲久はそう言ってイスに座った。すると咲久のスマホに通知が着た。
「私、着替えてくるから真白は先に食べてて」
そう言って咲久はスマホを持って外に出た。
嘘が下手なのは相変わらずだな。それよりやっぱり咲久は浮気してる?でも、休日は大体一緒にいるし平日は仕事があるから浮気する時間なんて。まさか、会社の同僚!?
それから数時間後。
「じゃあそろそろ出掛けてくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
咲久を見送って俺は車で広場に先回りをした。それにしても今日着てた服、この前買ったばかりで俺とのデートのときはまだ一度も着てないやつだったし、ヘアアレンジもメイクも気合いが入っていたような。
広場に着いて、時計の辺りを見張っていると近くにいた男に咲久が声を掛けた。てか俺、彼女をつけるとかヤバい彼氏だな。でも、咲久が無理して俺と付き合ってるなら別れた方がいいし浮気相手と付き合う方が幸せだけど浮気相手がヒモだったらダメだしな。
心の中で言い訳をたくさんしながら咲久達の後を追いかけた。
2人はショッピングモールに入っていって最初に雑貨屋に入った。
ここ、俺が好きな雑貨屋なのに。別の男とのデート場所になってるとかムカつく。
それから次に入ったのは最近できたファッションブランドの店で俺が密かに行ってみたいと思っていた場所だ。
「玲音、こっちは?」
「いや、俺的にはこっちの方が」
男は玲音という名前のようだ。咲久の好きな谷本玲音と名前が似ていた。
次に入ったのはメガネ屋だ。ここも、俺が好きな店だ。
それから、2人はカップルに人気のカフェに入った。やっぱり一緒に暮らし初めてずっと一緒にいるようになったから俺に飽きてきたのかな?
次に2人はシアターに入って行った。咲久達の観た映画は今度ツーが公開される映画のワンで大感動作だ。咲久は大号泣だろうな。
後ろから肩を叩かれて振り返ると翔がいた。
「よう、真白兄。久しぶり」
「翔、久しぶり」
「何やってんだ?」
俺は翔をベンチに座らせて小声で話した。
「え!咲久姉が!?うゎ、」
俺は慌てて翔の口を手でふさいだ。
「静かに。目立つから。それにまだ浮気とは決まってないから今確かめてるところ。もし、浮気だったら慰めてくれない?」
「いいけど。でも、咲久姉に限って信じらんねえけどな」
それから約2時間後に外に出てきた。案の定、咲久は大号泣だった。
玲音は咲久にハンカチを渡して咲久はそれを受けっとて泣きながら微笑んでいた。
「ほら、怪しくない?」
「え、めっちゃ怪しい」
「翔、移動するよ」
そう言ってベンチから立ち上がった。
それから2人はショッピングモールから出て男の車に乗った。
俺と翔は車に乗ってその車を追った。
着いた場所は大きくておしゃれな建物が建っていた。
「2人、入っていったぜ」
翔が入り口を指して言った。俺と翔は建物の中に入っていった。
中にはたくさんの本があった。しかも3階まで吹き抜けでびっしりと本が並べられていた。
「ここ、図書館兼本屋らしいぜ。借りた本とか買った本をここで読めるんだって。しかもカフェつき」
「そうなんだ。結構好きかも」
見渡していると咲久と玲音を見つけた。
バレないように静かに階段を登っていると歩きながら本を読んでいた人が咲久にぶつかって咲久が階段から足を滑らせた。
「咲久!」
急いで階段を登って受け止めようとすると目の前で玲音が咲久を抱きしめて受け止めていた。
「ありがとう、玲音。死ぬかと思った。」
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ。うわ!」
俺は玲音から咲久を引き剥がした。
「真白?なんでここにいるの?しかも翔まで」
「話は外でするから着いてきて。あと、玲音も」
「俺?まあ、いいけど」
咲久の腕を引いて翔と玲音と建物の外に出た。
「話って何?」
「咲久。俺達、別れよ」
そう言うと咲久は泣き出して俺に抱きついた。
「なんで!?私、真白と別れたくないよ!真白、他に好きな子できたの?それとも一緒に住んでみて価値観が合わなかったの?」
「好きなやつができたのは咲久の方だろ!?咲久が好きな人ができてもSNSとかやってるから別れるって言い辛いと思って代わりに。玲音が好きなんだろ?谷本玲音に名前も似てるし」
そう言うと玲音は目をパチパチとした。
「俺、咲久の従兄弟だけど。あ、改めて自己紹介します。小鳥遊玲音です。21歳です」
そう言って玲音が笑った。
「いと、こ?」
俺が言葉に詰まっていると翔がどこか納得したように頷いた。
「だから仲良さそうだったのか!」
「そうそう。それに俺、彼女いるし」
「じゃあ、咲久はなんでコソコソ連絡取り合ってたの?俺には言えないって言って」
「え、起きてたの?」
「うん」
俺が頷くと咲久は視線を逸らした。
「もう言ったれよ。彼氏が可哀想に見えてくるから」
玲音がそう言うと咲久は紙袋を俺に渡した。
「5年記念日ってキリがいいからサプライズでプレゼント用意しようと思ってたのに。玲音と真白の好みって結構似てるから玲音に選ぶのを手伝ってもらったの。出掛ける場所とかも真白が好きそうなところを1人じゃ行きづらいから一緒に来てもらっただけ」
「疑ったりしてごめん。」
「いいよ。私がややこしい話し方してたからっていうのもあるし。元は蒼空も一緒の予定だったけどレストランが忙しすぎて無理になっちゃったから。言っておくけど他に頼んでも予定が合う人がいなかったから2人だけだったんだよ」
「うん。」
「これからは絶対に3人以上になるようにするから安心して」
「もう大丈夫だよ。玲音もごめん。勝手に呼び捨てにしてるのも」
「別に気にしてねえよ。それに呼び捨ての方がいい。誰かさんみたいにちゃん付けとか気色悪いことされるよりはマシ」
そう言って玲音は俺の肩に手をおいた。そして耳元でこう囁いた。
『咲久のこと頼むぞ』
俺が頷くと玲音は笑って手を離した。
「じゃあ、俺はもう用無しみたいだから帰るな。お前、なんて名前?」
「長谷川翔です」
「翔、家まで送ってやるよ。咲久の家の近所だろ?それとお前、ゲーム好きなんだって?」
「はい!玲音さんも好きなんすですか?」
「おう!てか、呼び捨てでいいよ。さん付けとかむず痒い。敬語も別にいい」
「おう!じゃあ咲久姉も真白兄もまたな」
そう言って翔は走っていった。
咲久は無言で俺を抱きしめた。
「咲久、どうしたの?」
「真白。私、真白と別れたいなんて思ってないからね」
「分かってるよ」
「真白は私と別れたいって思ったりしてない?」
「そんなこと思ったことないよ。」
「良かった。思ってるって言われたらどうしようかと思った。真白、また5年記念日ここに来ようよ。」
「そうだね」
そう言うと咲久は顔をあげた。そして背伸びをして俺にキスをした。
「真白、大好きだよ。それに私、ウソつくの下手だから2人と同時に付き合うなんて無理って真白も分かってるでしょ?」
「そうだね。何を心配してたんだろうね」
俺はつい10分前の不安は完全になくなっていた。目の前の咲久以外の情報が全く入ってこないぐらいには。
俺は咲久を抱き上げた。
「咲久が大好きだよ」
「ありがとう」
咲久がそう言って微笑んだ。咲久が笑いかけるだけで嫌な気持ちが全部なくなるなんて本当に重症だな。
「じゃあ帰ろうか。夜ご飯は俺が作るね。何がいい?」
俺は咲久を下ろしてそう訊いた。
「炒飯と中華スープ」
「任せて。あ、そういえば咲久に初めて作った料理も炒飯と中華スープだね」
「そうだよ。それ以来大好物になっちゃった」
「そんなに美味しかったの?」
「うん」
「じゃあ今日も腕によりをかけて作るね」
「ありがとう」
家に着いたのはまだ5時前だった。ご飯を作るにはまだ早い時間だったので2人で買い物がてら散歩に出掛けた。
「ねえ、咲久。そろそろ同じ部屋にしない?」
そう。実は一緒に暮らし始めてはいるものの部屋はそれぞれだ。一緒に寝ることはあるけど咲久は俺が勉強に集中できるようにと毎日は同じ部屋で寝ない。
「ダメだよ。私と同じ部屋だと真白、私を起こさないように夜は勉強しないじゃん」
「じゃあ片方を勉強部屋にしたら」
「それでもいいけど真白、1人になりたいときとかないの?ストレス溜まって勉強するのがしんどくなったりしない?」
正直、咲久と一緒にいる方がストレスは緩和されるんだけど咲久は1人になりたいときとかあるのかな?
「そんなことはないけど」
「それに仕事でストレス溜まってたら当たっちゃうかもしれないからそういうときは1人で寝たい」
「そっか。でも俺の部屋のベッドは大きめで買ってるからいつでも大歓迎だよ」
「ありがとう。真白の試験前以外で考えておく」
咲久はそう言って目線を逸らした。照れてる。可愛い。つい意地悪したくなっちゃうけど嫌われたくないから我慢しないと。
それからスーパーに入って食材を買って家に帰った。
「私、先にお風呂入ってくるね。」
「うん」
それから炒飯と中華スープを作って咲久がお風呂からあがってきて一緒に食べた。
「洗い物手伝うよ」
「いいのいいの。真白が作ってくれたんだから私が洗うよ。朝もそうだったでしょ?」
「そうだね。ありがとう。じゃあ俺は風呂入ってくるね」
「うん」
* * *
アイス食べようかなと冷凍庫を開けると入っていなかったのでカーディガンを着てコンビニまでアイスを買いに行くことにした。
真白、お風呂入ってるしメモか何か残してから出た方がいいよね?
『真白、コンビニまでアイス買ってくるね』
「これでよし」
私はスマホを持ってサンダルを履いて外に出た。
やっぱり夜道ってちょっと怖いな。さっさとアイス買って帰ろう。
* * *
一方その頃、マンションにて。
「咲久~、一緒にビール飲もう。って、なにこれ。まさか1人で買い物に行ったの!?」
俺は急いでパーカーを羽織ってサンダルを履いてコンビニまで走って行った。
* * *
「お姉ちゃん、こんな時間に1人?家来る?すぐそこなんだけど」
お兄さんが話しかけてきた。
「すみません。私、コンビニに行くので」
「そんなの後でいいじゃん」
「よくないです。お風呂上がりのアイスの美味しさ知らないんですか?」
「知ってる。美味いよな。一緒に食べようぜ」
「彼氏と食べます」
そう言ってその場を離れて早歩きをすると追いかけてきた。
「ちょっとホント無理です!着いてこないでください」
そう言うのと同時に足音が止まった。
* * *
「俺の彼女に手出すんじゃねえ!」
俺はナンパ男の肩を掴んだ。すると、その男は走ってどこかに言った。
「真白、ありがとう。アイス買いに来ただけなのに絡まれるとは思わなかったよ」
俺は咲久の言葉に構わず咲久を抱きしめた。
「心配した。こんな夜遅くに1人で買い物に行くなんて」
「ごめん、でも仕事の帰りも同じぐらいだし」
「薄着じゃないでしょ。俺のパーカー着て」
「ありがと」
「うん。じゃあ一緒にコンビニまで行こうか」
俺はそう言って咲久の手をとった。
それから、コンビニでアイスを買って家で食べた。ビールはまた今度にしよう。
「真白。明日、日曜日だし一緒に寝てもいい?」
「うん、いいよ」
そう言うと咲久は少し恥ずかしそうに笑った。
「咲久、ちょっとごめんね」
俺は咲久の顔から髪の毛をよけてキスをした。
「咲久、キスでそんなに照れないでよ」
「真白がかっこよすぎて」
「ありがとう。じゃあベッド行こうか」
「うん」
翌日、朝起きたときは咲久はまだ寝ていた。ホント寝顔まで美人だな。
咲久に布団をかけなおして額にキスをしてシャツを着てリビングにいった行った。
「朝ごはんどうしよう。」
冷蔵庫の中を確認すると牛乳の期限が近づいていた。
「パンケーキにしよう」
俺はパンケーキと目玉焼き、ウインナー、サラダを準備して咲久を起こしに行った。
「咲久、朝ごはん出来たよ」
「う~ん、おはよう。って、真白、後ろ向いて」
「はいはい」
「後、落ちてる服拾って。で、振り向かないように渡して」
ちょっと注文が多いな。
「一緒に風呂入ったりするのに後ろ向く必要ある?」
「恥ずかしいの。もういいから取って」
「は~い」
俺はベッドの側に落ちていた服を取って渡した。
「ありがと。ねえ、私のブラ知らない?」
「布団の下にない?」
「あった。着替えたらリビング行くから先に戻ってて」
「分かった」
俺は部屋のドアを開けてリビングに戻った。
5分後、咲久がリビングに来た。
「あ!パンケーキだ!真白、好き!」
咲久はそう言って抱きついた。咲久は食べ物で機嫌がすぐによくなるため喧嘩をしても咲久の好きそうなケーキやスイーツを買って帰ればすぐに仲直りをできる。
「俺も咲久のそういうところ好きだよ」
「そういうところ?」
「可愛いところ。じゃあ一緒に食べようか」
「うん」
パンケーキを食べて咲久が食器を洗ってくれた。
「そういえば昨日渡したプレゼント、まだ開けてないでしょ?」
「そうだよ」
「もう開けていいよ」
「来週だよ」
「そうだけど渡したからには早く開けて感想ほしいなって思って」
「そっか。じゃあ開けてもいい?」
「うん」
俺は紙袋からラッピングされ袋を取り出した。袋のリボンをほどいて中身を取り出した。
「IDケース?」
「うん。雑貨屋さんとか色々見てたんだけど玲音に実用性のあるものにしたらって言われて。おしゃれなのがあったからそれにしてみたんだけど、どうかな?」
「咲久、ありがとう。ずっと大切にする」
そう言って俺は咲久を抱きしめた。
「どういたしまして」
次の週の土曜日、今日が咲久と付き合って5年目の記念日だ。
「咲久、いつもありがとう。これからもよろしく」
俺は咲久にプレゼントを渡した。
「名刺入れだ!ちょうどほしかったの!ありがとう、真白。」
咲久はそう言って俺に抱きついた。ヤバい、幸せ。
それからこの前の本屋に行って映画のツーを観てカフェに寄って帰ってきた。
夕方からはライブ配信をした。去年は3時間だったけど今年は2時間にした。
「実は色々あって真白にはすでにプレゼントを渡してるんだけどもう1つサプライズを準備してるの」
咲久がそう言うとコメントでクエスチョンマークがたくさんきた。
「サプライズって?」
そう訊くと咲久は自分の部屋に行ってリビングに戻ってきた。
「手紙、書いてみた。2人きりで読むと恥ずかしいから今、皆の前で読むね」
『真白へ、
いつも気遣ってくれてありがとう。
私は少し抜けてるってよく言われるけど昔からいつもフォローしてくれてありがとう。
ちょっと意地悪で面倒くさいところもあるけど優しいところとか大好き。
変な人に絡まれても守ってくれるし、私が怖いって思ったときはタイミングよく現れてくれるし、いつも心配して駆けつけてくれてありがとう。
私は大丈夫じゃないときに大丈夫って自分に言い聞かせたりしてても私の気持ちに気付いてくれてありがとう。
真白は私が一番言ってほしい言葉をいつも言ってくれる。
私のしてほしいことをいつもしてくれる。
わがままな私にいつも付き合ってくれてありがとう。
私は真白が傍にいてくれるだけですごく落ち着くの。
だからこれからもずっと一緒にいたい。
真白の彼女になれて幸せです。
世界一大好きなんて言葉じゃ表せないぐらい真白のことが大好きです。
真白、これからもよろしく』
読み終わると咲久は顔をあげた。その頬にはたくさんの雫がこぼれ落ちていた。
俺は咲久を抱きしめた。それと同時に俺の目からも涙が溢れた。
「咲久、ありがとう。愛してる」
そう言ってキスをしようとすると咲久がスマホに目線を送った。
俺はスマホのカメラを片手で隠してキスをした。
それからスマホを見ると多数のコメントが着ていた。
「『咲久ちゃん、さっきキスしたの?』だって」
「え!まあ、したよ」
「『照れてる咲久ちゃん可愛い』って?よく知ってる。未だに手が触れたら照れたりするからね」
俺がそう言うといいねがたくさんきた。咲久は慌てて俺の口を押さえてたけど。
「すっぴんで良かった。メイクしてたら顔がすごいことになってた」
「そうだね」
「でも、まさか真白が泣くとは思わなかった」
咲久が笑って言った。
「俺も。自分で思ってた以上に咲久が好きなんだなって実感した。これだけ付き合い長くて家族愛にならないってもう運命感じない?」
俺がそう訊くと同意のコメントがたくさんきた。
やっぱり皆そう思うよね。
それから質問コーナーに入った。
「1つ目。2人の身長差は何cmですか?俺が185cmで咲久が165cmだから20cm差だよ」
「2つ目は真白くん、咲久ちゃん(私)の好きなところはどこですか?」
「甘いものを食べるのが好きだから体型維持のためにたくさん運動してエネルギーを消費しているところ」
「まあ、できるだけ綺麗でいたいからね」
「3つ目の質問。ファーストキスはいつですか?だって」
「真白から答えてよ」
「同時に言おう。せーの」
「「5年前の今日」」
「付き合った日だね」
「付き合えたのが嬉しすぎて」
それから質問に答えて残り10分になって最後の質問に答えた。
「最後は質問っていうかリクエストだね。キスをしてみてくださいだって。俺は大丈夫だけど咲久は、大丈夫?」
「大丈夫だけど1回しかしないから見逃してももう1回とかないからね」
咲久はそう言うと俺の方に向いた。
咲久の頬に手を当ててゆっくり顔を近づけて唇を重ねた。
咲久は目を開いたとたんに顔が真っ赤になっていった。
「ヤバい。恥ずい」
咲久はそう言って両手で顔を覆った。
「『映画観てるみたい』『憧れる』だって」
「前にも言われたことがある気がする」
「確かに。あ、咲久。顔見せてだって」
「今絶対めっちゃ顔赤いんだけど」
そう言って咲久が手をよけた。
「ホントだ」
咲久の頬に手を当てると少し熱かった。
「頬っぺた熱い」
「真白の手が冷たいからだよ。もうそんなに赤くないし」
「そうかな?」
「そうだよ。そろそろ8時だね。」
「うん。じゃあ最後に挨拶しようか」
「皆、配信見てくれてありがとう」
「今度のライブ配信の予定が決まったらすぐにアップするね」
「「これからもよろしくね」」
そう言って俺は配信を切った。
「真白、こっちみて」
「どうし、」
咲久は背筋を伸ばしてキスをした。
驚きすぎて瞬きをしてると咲久は真っ赤な顔で見上げた。
「リクエストに私からもしてみてってあったから」
「可愛すぎ。しかも不意打ちとかズルい」
そう言って俺は顔を背けた。
「真白?もしかして照れてる?」
「そーだよ。あんまり可愛い顔してると押し倒されても文句言えないよ」
『文句なんて言わないのに』
咲久は小さく呟いた。
「あ、でも夜ご飯食べないと」
咲久はそう言うと立ち上がってキッチンで料理を作り始めた。
そんな事言われたら抑えが効かなくなるんだけど。