初デート?
今日は7月の第2土曜日。デート当日。私はあまり履かないショートパンツとそれに合うTシャツを林間学校の振替休日に買いに行った。
「じゃあ私、そろそろ出掛けてくるね」
とリビングに顔を出した。
「咲久姉が短パンって珍しいね」
と莉久が言った。
「え、変かな?」
「ううん!超似合ってる!」
「ありがとう。じゃあ行ってくるね」
と言って家を出た。
私と真白兄の家は近所ではあるけど隣や裏ではないので待ち合わせ場所は近くの公園にした。
「咲久!おはよう」
と真白兄が手を振った。
「おはよう!真白兄」
「映画、誘ってくれてありがとう。俺一人じゃ行きにくいと思ってたところだったから」
と言って歩きだした。服には何もナシか。
「よかった。なんか、真白兄と2人で出掛けるの久々だね」
「そうだね。いつも蒼空がいたからね」
「うん。」
それから、最寄りのデパートに向かった。ここのデパートは中に映画館があるだけでなく、広く、お店の数も多いので少し他県からも来る人がいる。
映画のチケットはすでに予約済みで上映開始時間まではまだ時間がある。
「映画まで結構時間あるけど先にご飯食べる?」
「そうだね。いつものカフェでいい?」
「うん!」
このデパートにはたくさんお店があるけど私達学生はあるカフェに行くことが多い。なぜなら、そのカフェは学割を使えばワンコインで食べることが出来るからだ。
カフェで、食事を済ませると時間は映画が始まる15分前になっていた。
「ちょっと早いかもしれないけどそろそろシアターにいく?」
「そうだね。」
シアターは人気作家の映画化ということもあり人で溢れていた。
シアターに入って席に座った。すると、隣に男性2人組が座った。気のせいかもしれないけどその男性2人から少し、視線を感じた。すると真白兄が
「咲久、よかったら俺と席代わってくれない?俺の後ろ、人がいるから。段差があるけど俺の頭と少し被って見ずらいと思うんだ。」
といった。後ろを見ると2列後ろぐらいに背の高い男性が座っていた。
全然見えそうじゃん。気を遣ってくれたのかな?
「うん、いいよ!」
「ありがとう」
お礼をいうのは私の方なのに。
「ここ、ちょっと冷えるし、嫌じゃなかったらこれひざに掛けて」
と言って羽織っていたシャツを渡してくれた。
「ありがとう、真白兄」
「どういたしまして」
しばらくして映画が始まった。映画は高校生の主人公が余命3ヶ月の幼馴染みの『死ぬまでにしたいこと100選』に付き合うという内容だ。
映画が終わってもまだ号泣している私に真白兄がハンカチを貸してくれた。
しばらくして落ち着いた私は目が腫れないように濡らしたタオルで目を冷やした。
「映画も終わったしそろそろ帰る?」
と真白兄が訊いた。
「俊がそろそろ誕生日だからちょっとプレゼント探したい。」
「そういえばそうだったね。終業式の日だっけ?」
「うん。伊織は『プレゼント選びのセンスがないから咲久に任せる。後で半分出す』って言ってた」
「そうなんだ。じゃあ俺も出すよ。ちょっと待って悠陽にも訊いてみるから」
と言って真白兄はスマホを取り出した。
「悠陽も出すって。」
「あ、そついえばシャツありがとう。」
と言ってさっき映画館で借りたシャツを返した。
「どういたしまして」
それから、近くのショップに入った。
「何あげたらいいかな~?」
と訊くと
「参考書とか?」
と真白兄がニヤッと笑って言った。
「もっと真面目に考えてよ」
「ごめんごめん。じゃあキャップとかは?お気に入りのキャップを犬にボロボロにされたって言ってたし」
「確かに。じゃあ服屋さんにいこ」
「そうだね」
このデパートの中でも人気なショップに向かった。
「すごい。めちゃくちゃ種類あるね」
「そうだね。やっぱり七海はグレー系?」
「う~ん。もっとスポーティーな感じのイメージ」
と言って少し後ろに下がった。すると、たまたま後ろに人がいてぶつかってしまった。
「すみません!大丈夫ですか?」
「大丈夫です。…って咲久!」
「伊吹!?」
「今、司に勉強教えるために泊まりに来てるんだよ。」
と伊吹が言うのを遮るように元気な声が聞こえた。
「お~い!伊吹!めっちゃいい服見つけたんだけど!絶対に玲音に似合う!」
と言ってガーリーなワンピースを持って走ってきたのは司だ。
「咲久じゃん!久しぶり~」
「久しぶり、司」
と言うと真白兄がTシャツの裾をちょんと引っ張って
「あの人達誰?」
と言った。てか、真白兄、高身長のくせに裾を引っ張るとか可愛すぎだよ~。
「あ、あの人達は…」
と言い掛けたところでまた司が遮って
「隣の人って咲久の彼氏?」
言った。
「彼氏?」
と伊吹まで言い出した。
「ち、違うよ!真白兄は幼馴染みだよ。それで、この2人は私の従兄弟の伊吹と司」
それから、4人で休憩スペースに行って改めて自己紹介をした。
「咲久の従兄弟の有馬司です!中3っす」
「同じく従兄弟の小鳥遊伊吹です。高校3年です。」
「俺は仁科真白です。高2です」
「俺の顔と咲久の顔見比べて何か気付きませんか?」
「言われてみれば。なんか有馬くんとは少し顔が似てるね」
「そう?まあ、司はお母さんのお兄さんとお父さんのお姉さんの息子だから血の繋がりが濃いの」
「そうなんだ。そういえば有馬くんがさっき言ってた“玲音”って子も従兄弟?」
「そうだよ。玲音は伊吹の弟で、私とは同い年。だけどめちゃくちゃ可愛いから司がよく女子の服を着せようとしてるんだ。まあ、全く着ないけど」
「それでワンピースを持ってたんだ。」
と真白兄が納得したように言った。すると、司のスマホの通知音が鳴った。
「伊吹、やべえ!蓮のこと置いてきちゃった。キレてる」
「本屋行くって言ってなかったか?」
「俺、本屋の前で待ってるって言ってたんだけど遅かったから少しだけまわろうと思ってたら忘れてた!」
「アホか。いや、アホだな。じゃあまたな!咲久!仁科くん」
と言って司と伊吹は走って行った。
「ちなみにきくけど蓮って子も従兄弟?」
「うん。莉久と同い年の司の妹。司達は県内に住んでるからよく会うんだ。」
「そうなんだ。じゃあ、俺達もそろそろプレゼント選び再開しようか」
「そうだね」
と言ってさっきのショップに戻った。
「やっぱり俊にはこれだね」
と言ってスポーツブランドとコラボのキャップを選んだ。
それから、バスに乗り家に向かった。
バス停から歩いている途中、私はずっと気になっていたことを訊いた。
「あの、さ。今さらかもしれないけど今日の服、やっぱり変だった?」
「え!どうして?」
「だって、いつもだったら真っ先に服とか褒めてくれるけど今日はスルーだったし」
「…に、似合ってると思うよ。けど…」
「けど?」
「新鮮っていうか。あんまりショート丈のを履いてるイメージがなかったからびっくりしたというか反応に困った。」
「困る?」
「その、足が露出してるし、似合ってるって言っても『キモい』って思われたら嫌だなって思ったらなんて言ったらいいかわからなくて。」
「そっか。でも、真白兄に似合ってるって言われるのは嬉しいよ。これまであんまり履いてなかったけどこれからはたまには着てみようかな。」
「着るのは俺がいるときだけにしてくれない?」
「なんで?」
「ほら、今日の映画館の奴らみたいなのもいるし、俺がいたら守れるからどんな格好しててもいいけど」
「真白兄。ありがとう」
「よかったらさ、今度はプール行かない?県内最大のところの。なんかイベントがあるらしい」
「うん!もちろん行く!」
「じゃあ再来週の水曜日でもいい?」
「うん!」
「あと、もう一つ夏休みに行きたいところあるんだけど…」
「どこ?」
「うちの別荘で生徒会の親睦会しない?」
「親睦会?」