世界で一番大切な人へメリークリスマス
文化祭が終わって学期末テストも終わって今日はクリスマスイブ。皆でデートをする。
湊と莉久も文化祭で付き合ってクリスマスデートをするけどイルミネーションにはバスや電車で向かうと歩く距離が多くなるので真白の車で一緒に向かうことにした。
午前中は一緒に勉強して午後からショッピングモールでプレゼントを買って交換することになった。
「疲れた~!8時から勉強初めてもう4時間半ぐらい経ってるよ」
「ホントだ。そろそろお昼にする?」
「うん」
「じゃあパスタでいい?」
「うん」
「ノートとか片付けたら降りてきてね」
「分かった」
* * *
パスタを茹でてソースを簡単に作って和えてお皿に盛り付けた。それにしても咲久、降りてくるの遅いな。
部屋に戻ってみると咲久はベッドにもたれかかって寝ていた。勉強して疲れたんだろうな。
咲久のまぶたにキスをした。すると、咲久はうっすら目を開けた。と思ったら俺の服を引っ張った。
俺はバランスを崩して床ドン状態になった。
そのまま咲久にキスをすると咲久もキスをしてくれた。
「真白、手冷たいんだけど」
「ごめん、無意識で。ご飯出来たから呼びに来たよ」
「それを先に言ってよ」
そう言うと咲久は起き上がって降りていった。
あっぶな!無意識で咲久の服の中に手をいれてた。咲久が黙ってたら本当にヤバかった。もう受験もすぐだしなるべく2人きりは避けないとホントにダメだ。
* * *
『ビックリした~!真白が服の中に手をいれたりするから何事かと思ったよ。もし、私が何もいわなかったらどうなってたんだろう?』
私はリビングに降りて席に座った。顔が熱い。なんか変な気分。
しばらくすると真白が降りてきた。
「咲久。あのさ、ごめん!」
「謝らないで。なんか謝られたくはないんだけど……」
「でも、」
「言っておくけど嫌だなんて思ってないからね。いつかはって思ってたし。」
「そっか。」
「うん」
沈黙が訪れた。真白にキスをした。
「お腹空いたしご飯食べてもいい?」
「そうだね。食べようか」
真白はそう言ってイスに座った。
お昼ごはんを食べ終えてもう少し勉強をしてから真白の車でショッピングモールに向かった。
「映画何観る?」
「玲音くんが出てるやつ」
「空いてるかな?」
真白がチケットの売れ残りを確認した。
「空いてる。じゃあ15分後のやつがあるけどそれでもいい?」
「うん」
チケットを購入してシアターに入った。
映画はコメディ系ですごくおもしろかった。
「あ~、面白かった~!」
「そうだね。それにコメディだから咲久も泣かないで済んだからね」
「それだといつも泣いてるみたいじゃん」
「違うの?」
「ちが、わなくもない」
私がそう言うと真白は頷いた。
「じゃあプレゼント選びに行こうか。」
「私から選ぶからお店まわるのついてきて」
真白の腕を引いて人気の雑貨屋さんに入った。
「どういうのがいい?」
「咲久が俺に似合うって思ってくれたもの」
「真白は何でも似合うから困るよ」
「ありがとう。じゃあ香水とか。咲久が俺に付けてほしいって思ったやつ」
「分かった」
そう言って香水を売っているコーナーに向かった。
「これは?」
「いい香りだけど真白っぽくない。というかずっと思ってたんだけど、真白っていつもいい匂いするよね。すでに香水使ってるならそれを買った方がいいんじゃない?」
「香水なんて使ったことないよ。咲久からもらったアロマランプは使ったことがあるけど。」
「真白は今の匂いが一番落ち着くから香水はやめてもいい?」
「うん」
「じゃあ他に何かほしいものは?」
「特にないかな。見ながら考えてたら思い浮かぶかも」
「じゃあいっぱいお店まわろう」
私は真白の手を引いて違うお店に入った。
その次に入ったお店で私はすごくいいものを見つけた。
「真白、この腕時計どう?」
「いいね。使いやすそう。それに、」
「別に、私がもらった腕時計と似てるからってわけじゃないよ。ただ真白に似合いそうだなって、」
って何言い訳してるんだろ。
私がそう言うと真白はフフッと笑って
「そんなに必死にいわれると逆に怪しいんだけど」
と言った。確かに、自分から言ったみたい。
「咲久とお揃いがいいからこの腕時計で」
「分かっ、た」
レジで会計を済ませて腕時計の入った紙袋を真白に渡した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「咲久のプレゼントは服にしようかなって思ってたけど他にほしいものある?」
「ううん。服がいい」
そう言うと真白は手を引いて洋服屋さんに連れてきた。
真剣に服を見ながら考えてると耳元で真白が訊いてきた。
「咲久、男が好きな女性に服をプレゼントする意味知ってる?」
「知らない。意味とかあるの?」
「まあね。知らなくて良かったよ」
「え、なんで?」
「あ、声に出てた?」
「うん。てか、意味が気になりすぎるんだけど」
「咲久がもう少し大人になったら身をもって教えてあげる」
「何それ。余計に気になるんだけど。」
私が調べようとすると真白がかがんで服に隠れてキスをしてきた。
「調べたらダメだよ。もし今、咲久が知ったらどうなるか分からないよ」
そう言われて少しゾクッときた。女の勘ってやつかな?今、真白に逆らったらダメだ。
「分かった。でもホントに気になるからいつか教えてよね」
「うん。実際に同じことをして教えるよ」
また訳の分からないことを言ってる。
「じゃあとりあえずこの服とこの服を試着してきて」
そう言って真白はモコモコのセーターと細身のパンツを渡した。
「着替えたけど……」
「可愛い!あ、でもこっちも似合いそう。こっちもお願い」
今度は大人っぽいワンピースを渡された。着替え終わって試着室のカーテンを開けた。
「どう?」
「めっちゃ似合ってる!」
その他にも色々試着を終えた。
「咲久ってホントになんでも似合うね。めちゃくちゃ迷う」
数分後、莉久達がお店に来た。
「なんでそんなに試着してんだ?」
湊が不思議そうに訊いた。
「咲久へのクリスマスプレゼント、洋服にしたから一番似合うやつを、買おうと思って」
真白がそう言うと莉久はキョトンとした。
「咲久姉ならなんでも似合うよ」
「だから悩んでるんだよ。莉久ちゃん達も選ぶの手伝ってくれない?」
「そんなの簡単だよ。真白兄とペアルックにすればいいんだよ」
莉久がそう言うと真白は莉久を天才とでも言うような顔で莉久に向いた。
「莉久ちゃん!ありがとう!」
そう言うと真白はメンズサイズの服も探しに行った。
結局、真白がチェックのカーディガン、私が同じ柄のベスト。あと、同じ色のズボンとショートパンツ。私は黒のレギンスも。
その場で着られるようにしてもらって試着室で着替えた。
「真白、ありがとう。」
「どういたしまして」
真白はニコッと嬉しそうに笑って手を繋いだ。
それから、真白の車に乗ってイルミネーションに向かった。
着いて、駐車場に停めて莉久達とは分かれた。その瞬間、真白がキスをした。
「莉久ちゃんや湊くんの前では流石にできないからね」
「不意打ちとかずる」
「咲久はいつも不意打ちじゃん」
真白が少しムスッとして言った。
「じゃあキスしてもいい?って言ってからすればいいの?」
「毎日大歓迎だよ」
「毎日って。今日と明日以外はせめて受験が終わるまではやめない?」
「俺も思ったんだけど俺の部屋で2人で勉強してるとダメじゃん?咲久の家なら蒼空か莉久ちゃんが夕方には帰ってくるからそっちで勉強しない?それか図書館か藤森さんがいるとき」
「図書館かうちのリビングだったら大丈夫だと思うよ。うちのリビング、昔お父さんが見守りカメラ付けて以来ずっとあるから多分たまに見てるし」
「それは確かに。」
「決まりね」
そう言うと真白は小さく頷いた。
それからイルミネーションを堪能して莉久と湊のところに行って車に戻った。
家まで送ってもらってお礼をして手を振った。帰り際に真白が、お礼は“ありがとう”よりも咲久の笑顔かキスがいいとかなんとか言っていた。
翌日、クリスマス当日。
朝から飾り付けとクリスマス料理を作っていた。私と蒼空と颯はお母さんと七菜波ちゃんの手伝い。他の4人は飾りつけを担当だ。
長谷川家で料理を作っているとインターホンが鳴った。
渉くんが手を止めて玄関に迎えに行った。誰が来たんだろうと思っていると渉くんと一緒にリビングに歩いてくる足音が聞こえた。
「真白兄!久しぶり」
翔が叫んだ。
「久しぶり、翔。会わない間に背が伸びたな」
真白はそう言って微笑んだ。私は驚きのあまり固まってしまった。真白は毎年クリスマス当日は家族でレストランに行っているからだ。
「え、真白?なんで……?」
「私が呼んだんだよ。真白くんだけ呼ばなかったら失礼じゃない」
お母さんがそれに咲久や皆が喜ぶかなって思ってと付け足して微笑んだ。
「まあ、確かに」
準備も終わってクリスマスパーティーが始まった。メインディッシュは蒼空作ミートローフ。七菜波ちゃん作サーモンとクリームチーズのテリーヌとポテトと颯作スモーク生ハムのサラダ、そしてデザートにはお母さんの作ったイチゴタルト。
料理はみんなに大好評だった。特に蒼空の作ったミートローフはあっという間に食べ終えてしまった。
夜、お父さんのおすすめのバーにお母さんと渉くんと七菜波ちゃんも一緒に行って少し遠いのでその近くのホテルに泊まるらしい。
それで4人とも、子供だけにするのは心配だからと言って私達は長谷川家に泊まることになった。
夜ご飯はお母さんと七菜波ちゃんが準備してくれていたので皆でチーズフォンデュをした。
私、葵、莉久は先にお風呂に入らせてもらった。
* * *
「なあ、真白兄。咲久姉の好きなところ5個言ってみて」
颯くんがそういった。
「5個か。皆の前では結構お姉さんしてるけど実は負けず嫌いなところ」
「2個目は?」
「急に素直になるところ」
「3個目!」
「好きとか可愛いって言うだけで照れるところ」
「4個目」
「感動系の映画を観たらすぐに泣いちゃうところ」
「最後」
「困ってる人はどんな人、どんな状況であろうと見過ごせなくて助けちゃうところ」
そう言うと4人は驚いた顔で俺の顔を同時に見た。
「なに?」
俺が訊くと翔が答えた。
「てっきり咲久姉の外見を好きになったのかと思ってた。ほら、咲久姉って美人だし」
「外見も好きだよ。髪の毛ふわふわで可愛いしまつげ長いし肌きれいだし。というか正直全部好き」
「咲久姉、愛されてんな。俺も彼女ほしい」
翔が大きくため息をついた。
「翔、好きなやついんのか!?」
湊くんが驚いたように訊いた。
「まあな」
翔はそういった後にボソッと『もう叶わねえけどな』と呟いた。翔の好きな人って。
「それより大富豪しようぜ!」
そう言って翔はトランプを配った。
* * *
「ねえ、咲久姉も莉久姉もヘアアレンジしよ。それで真白兄とお兄ちゃんをドキッとさせよう」
「葵も蒼空をドキッとさせよう」
「蒼空くん、可愛いって思ってくれるかな?」
「蒼空兄はいつも葵のこと可愛いって思ってるよ」
莉久がそう言うと葵は嬉しそうに笑った。
ヘアアレンジをしてリビングに向かうとなにやら盛り上がっていた。
「5人で何してたの?」
「大富豪だよ。葵達もやるか?」
「うん!大富豪になった人は大貧民になんでも1つ質問をするってしよ!」
それから大富豪が私、大貧民が葵になった。
葵に告白された人数を訊くと多すぎて驚いた。
その後、葵の部屋で恋バナをした。
8時半頃、真白は泊まらないので皆で見送りをするために1階降りた。
「次の対戦は負けねえ」
翔がそう言うと真白にグータッチをした。
「次も負けない」
真白はそう言うとニヤッと笑った。
「咲久、寒いかもだけどちょっと外まで出てきてくれない?」
「?いいけど……」
私は靴を履いて玄関を出た。
「どうしたの?」
「昨日と今日でしばらくキスはやめるって言ってたから最後にって思って」
「あ、そう言うことね。えっとじゃあ下向いて」
そう言うと真白は顔を下に向けた。
「あのさ、できれば目を閉じてほしいんだけど」
私がそう言って目線を逸らすと真白がキスをした。
私からももう一度キスをした。すると真白は愛おしそうに微笑んでもう一度唇を重ねた。私は目を閉じた。すると、後ろから声が聞こえた。
「ちょっ、押すなって」
颯の声が聞こえて目を開けて振り返ると蒼空以外5人がドアの近くにかたまっていた。
皆、ドアを閉めて家に入ろうとしたので引き留めた。
「待って、なんで見てるの!?」
「いや、なんとなく?」
颯が目線を逸らして答えた。
「咲久姉と真白兄見てると映画観てるみたい」
葵が目を輝かせて言った。
「ありがとう……?っていうか湊と翔はなんでそんなに顔真っ赤なの?」
「いや、だって……キスしてたし」
翔は目を逸らして言った。
「逆になんで咲久姉と真白兄はそんなに平然としてるんだ?」
湊が不思議そうに訊いた。
「普段は照れるけど今日は驚きが勝ってるから」
「ねえ、もう一回ぐらいしたかったんだけど」
真白が少し拗ねたように言った。拗ねて頬を膨らますとか可愛すぎ!
私は少し考え込んで顔をあげた。真白の頬に手をおいて背伸びをして私の唇を唇に重ねた。
「じゃあ、まt」
またね言うのに重ねて真白がキスをした。同時に玄関のドアが開いた。
「あと、1回って言ってた」
「なに、してんだ?」
私と蒼空がなんとか発した言葉だ。
「可愛すぎてつい。あと、蒼空。キスぐらいは許してよ。受験が終わるまではもう出来ないんだから」
「なかなか戻って来ねえから様子見に来たけど皆して何見てんだよ」
「なんかドラマ観てるみたいで見惚れてたの。蒼空くんは羨ましいなって思わない?」
葵が蒼空に訊いた。
「いや、別に、思わなくも、」
「蒼空って案外素直だよね。じゃあね、咲久。皆も」
そう言うと真白は額にキスをして手を振って帰っていった。
「咲久姉、真白兄にめっちゃ愛されてるね」
莉久が私の肩にもたれ掛かって言った。
「みたいだね。でも私も負けないぐらい真白を大好きなんだよ」
そう言ってニッと笑って見せると莉久は少し驚いた顔をした。
* * *
それから1週間後。元旦。紅白を観ていると真白から電話がかかってきた。
「もしもし」
『起きてた?』
「うん。どうしたの?」
『そろそろ年越しだから好きな子に1番に新年の挨拶したくて』
「!」
「咲久姉、どうしたの?」
「なんでもない。真白と話してるだけ」
『リビング?』
「うん。今、紅白見てたの」
『俺も。姉貴と紫輝は帰ってこれないからパソコンで通話繋いでるんだけど姉貴と紫輝がずっと暗記しりとりしてる』
「暗記しりとり?」
『うん。英単語を繋げて』
「難しそう。でも、2人とも負けず嫌いだから唸りながら考えてそう」
『うん。今その状況』
「そうなんだ。なんか想像できる」
『あ、あと1分だね』
「ホントだ。1年ってあっという間だね」
『ホントに』
テレビから年越しのカウントダウンが聞こえてきた。
「真白」
『咲久』
「『明けましておめでとう。今年もよろしく(ね)』」
『咲久。受験一緒に頑張ろう』
「うん。じゃあまたね」
『うん。おやすみ』
* * *
朝からお祖母ちゃんが着物の着付けをしにきてくれた。
今年は大きな寺院にお参りに行く。真白も一緒に。
「咲久、似合ってる」
「ありがとう。」
それから車に乗って40分程で寺院に着いた。
私達は先にお参りをしてお守りを買った。
「健康守り?合格守りじゃなくていいの?」
「うん。それは前にもらったお守りがあるから」
「もう効果ないんじゃない?」
「そんなことないよ。前もあのお守りのお陰で頑張れたから」
「そうなんだ。だったら良かった」
お守りを買っておみくじをひきに行った。
「大吉だ!」
「俺も。お揃いだね。嬉しい」
「喜ぶところが違うと思うんだけどな」
新年早々ついてるな。
莉久は少し後ろで大凶を引いてショックを受けていた。
湊が高い位置に結んであげてたから莉久の運があるといいな。
だから、このなんだか嫌な感じは気のせいだよね。