夏といったらお祭りだよね
もう夏休みに入って1週間が経った。今日は夏祭りに行く。私と真白はデートだけど会場までは皆で行く。
お母さんに浴衣を着せてもらって七菜波ちゃんにヘアアレンジをしてもらった。男子は颯の部屋で着付けとヘアアレンジをしてもらうそうだ。(着付けと言っても私達みたいに丈を合わせる必要はないから帯を巻いてもらうだけだけど。)
私達は葵の部屋で喋っていて時計を見るとまだ少し早かった。でもリビングに向かった。男子も全員着付けが終わったようでリビングに降りてきていた。それにしてもモデルみたいなルックスだな。真白も珍しくセンター分けだし。
「お!咲久も着付け終わったんだ。すごい似合ってるよ」
真白が微笑みながら言った。すると葵は私達もでしょと言って怒っていた。
真白が葵と莉久も褒めると葵はうんうんと頷いた。
「真白も似合ってるね。カッコいい」
「そう?ありがとう」
「うん。なんか、5人ともモデルみたい。ちょっと並んでみて」
私がそう言うと5人は横に並んだ。
「私の買ってる雑誌の表紙に出てきそう。写真撮ってもいい?」
私がそう訊ねると皆頷いてくれた。
「せっかくだしポーズとってみたら?」
「葵、名案!」
すると湊と翔はノリノリでポーズを撮ってくれた。
「あ、そうだ。うちわ持ってみて」
七菜波ちゃんも楽しそうに言って蒼空と翔にうちわを渡した。
「颯くん、もうちょっと寄って」
お母さんがジェスチャーをしながら言った。それにしても皆すごい楽しそう。莉久は湊に見惚れてるみたいだけど。
「じゃあ撮るよ~。はいチーズ」
私は合図と同時にシャッターボタンを押した。写真の中に映る彼らは本当にモデルのようにキラキラと輝いていた。この写真をみてると皆がモテる理由が分かるわ。
私は全員に写真を送って待ち受けもこの写真にした。
「葵ちゃんと莉久と咲久は帰ってから写真撮らせてね」
「私は撮らなくていいよ。莉久と葵の2人で撮った方が絶対いいよ」
「あら、そんなことないわよ。咲久は可愛いじゃない。自信持ちなさい。私の娘なんだから。それに浴衣は3割増しなのよ。さらに美人になれる魔法の服なんだから」
「そうだね。皆、いつもよりもカッコいいし可愛いもんね」
「そうでしょ?じゃあお祭り楽しんでおいで」
「うん」
それから私達は会場に向かった。葵達が大会でいい成績を残したのでそのお祝いにお小遣いを渡して私達は別れた。
「なに食べる?」
「去年、近くにカフェがオープンしたでしょ?」
「そうだね」
「そのカフェがお祭りで1口サイズの唐揚げを可愛い入れ物に詰めて売ってたんだけどすごく美味しかったの。それ以来、千花と遊ぶときはだいたいそのお店に行ってるの。だから今年は真白にも食べてみてほしい」
「うん。じゃあまずはその屋台に向かおうか」
「うん」
そのカフェを経営しているのは若い4人兄妹で、千花と五十嵐の3人で結構行ったことがあるけど毎回女性客が多かった。ファンクラブもあるとか、ないとか。とにかく見た目がおしゃれだけどお手頃価格でしかも料理が美味しい。
その屋台は案の定女性のお客さんが並んでいた。でも、まだ早い時間なせいかまだそんなにたくさんではなかった。しばらく並んでいると私達の順番になった。
「いらっしゃいませ。あ!小鳥遊さん!お久しぶりです。」
「お久しぶりです。こっちは私の彼氏の真白です。それでこちらが店長のキリさん」
「初めまして。カフェ・スリールの店長の桐谷朔です。常連さんにはキリさんって呼ばれてるのでぜひそう呼んでください。」
「え、朔?」
真白が聞き返すとキリさんは頷いた。私は真白が喋ってる間に注文した。
「はい。小鳥遊さんと同じ名前で僕も驚きました」
「そうなんですか。俺は仁科真白です。」
「お話はたくさんお伺いしております。」
キリさんがそう言うと隣で接客を終えた弟のタツさんが大きく頷いた。
「小鳥遊さん、いつも葉山さんと一緒に惚気話をして帰ってますからね。仁科さん、愛されてますね」
「そうなんですか?」
「はい。良ければ今度店にも来てくださいよ。2つで800円です」
そう言って妹のヒナさんが唐揚げを私に渡した。
「じゃあ来週あたりでも」
「お待ちしております。ありがとうございました」
それから近くの空いているスペースで唐揚げを食べた。サクッとジューシーでお店独自のスパイスを使っていてすごく美味しい。
「この唐揚げ美味しいね」
「でしょ!唐揚げに使ってるスパイスは料理に使ったりしてるらしいんだけどお祭りのとき以外は唐揚げは作らないんだって」
「そうなんだ。それにしても店員さん達と仲良いね」
「まあね。あの女性の店員さんいるでしょ?ヒナさんっていうんだけど私と1つしか変わらないの。ヒナさんは調理師免許持ってないから接客がメインだけど人が少ない時間帯って私と千花と常連さんだけになるからよくお喋りしてて仲良くなったの。」
「そうなんだ。」
「水曜日、一緒に行こうよ。4時頃だと人が少ないからお話できるかも」
「いいよ、行こう」
それから射的、輪投げ、まと当て、千本引きをして河川敷に向かった。途中でぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「こちらこそ、すみま……咲久!会長!」
「千花!」
「あの、葉山さん。俺はもう会長じゃないよ」
「ホントだ。すみません。それにしても咲久と仁科先輩も来てたんだね。」
「うん」
「今回はちゃんとデートなんですか?去年、先輩が入院したときに言ってましたよね?1年のとき小鳥遊がデートを皆で行こうって言ってたって」
「確かに言ってた!どうなんですか?」
「今回はちゃんとデートだよ。行き帰りは皆と一緒だけど来てすぐに別れたから」
「そういえばあの後、俊って立花をデートに誘ったのか?」
「誘ってはいたけど侑李が2人は気まづいからって伊織と副会長誘ってた」
そう言うと五十嵐は驚いた顔をした。
「マジで!?まあ、2人きりだとあいつ空回りそうだけどな」
「確かに。七海ならありえるね。悠陽がいたらあんまりデートっぽい雰囲気出せるか分からないけど」
「まあ、でも今2人、いい感じだから大丈夫だよ」
「そうだな。またな、小鳥遊、仁科先輩」
「またね~」
それから2人は歩いて見えなくなった。
「ねえ、咲久……」
ちょうどその時、花火が始まった。
「ごめん、花火の音で聞こえなかった。」
そう言うと真白は私の耳元に顔を近付けた。
「大好きだよ」
「私も。真白のことが大好き」
そう言うと真白はキスをした。なんでだろう。キスが少し久しぶりなせいかなんだかいつもより緊張する。
花火が終わって皆で家に帰った。
家に帰ると皆で記念撮影をした後に私達は外で撮影会をした。
「莉久ちゃんもうちょっとこっち。咲久ちゃんはクールな感じで。葵は笑って」
渉は一眼レフカメラでパシャパシャと写真を撮っていく。
「モデルさんになった気分」
「莉久は本物のモデルさんみたいに可愛いよ」
「咲久姉からみたらでしょ?それに咲久姉の方がスタイルいいし、美人」
「ありがとう」
「咲久姉、なんか、最近素直になったよね」
「なに言うの葵。私は元々素直だよ」
「そうじゃなくて褒められても謙遜ばっかりだったけど最近はちょっと認めるでしょ?」
「誰かさんのお陰でね」
「それって真白兄のこと?」
「さあ、どうでしょう」
と笑うと葵はぷくっと頬を膨らませた。
「咲久ちゃん、葵、カメラ目線」
「渉くん、プロのカメラマンみたいだね」
「こう見えても元写真部だからな」
それから渉くんは写真を撮り終えて確認をしていた。
「咲久、2人で撮らない?」
真白がスマホを出して言った。
「いいよ」
「じゃあもう少し寄って」
と真白が私の肩を抱いた。スマホを横向きにすれば余裕で入るんじゃ……。ま、いっか。
「じゃあ撮るね。はいチーズ」
真白は撮った写真を送ってくれた。
「自撮りってなんか久しぶりだね。だいたい撮ってもらうか私か真白のどっちかの写真を撮るかだったから」
「そうだね。そもそも咲久と付き合う前はあんまり写真撮らなかったし」
「確かに。真白のフォルダ見せて」
「いいよ」
真白はそう言ってスマホを私の手に置いた。
「わあお。私か私との写真ばっかりだね。たま~にノートの写真があるけど」
「真人にノート送ってって言われて送ることがあるからね」
「へ~、相変わらず花村さんと仲良しだね。ってこの写真、」
私が写真を大きくする前に真白が慌ててスマホを取り上げた。
「消すの忘れてた!今見たの忘れて」
「え~、やだよ。てか、あの写真なに?」
「友達とコスプレ喫茶ってところに行って罰ゲームで着させられた」
「チャイナドレスを?しかもバッチリメイクでウィッグ着けて?」
「言わないで」
「え~。じゃあさ、変わりにその写真送ってよ。隣にあった執事の写真と一緒に」
「執事はいいけど。」
「仕方ないな~。蒼空!真白が面白い写真見せてくれるって!」
「分かったよ。両方送るから呼ばないで」
そう言うと真白は写真を送ってくれた。
「ありがとう。真白の執事カッコいいね。しかも真白って結構美人だよね」
「それは、喜んでいいの?」
「当たり前じゃん。」
「そっか。じゃあ、ありがとう……?」
「なんで疑問系?」
と笑うと真白も笑った。
「あ、そうだ。私ね今度、臨時でバイトするの」
「へ~、飲食店?」
「まあ、そんな感じ……」
私がモゴモゴと口ごもらせていると真白は訊くのをやめた。
バイトと言っても友達のお姉さんのお店なんだけどね。